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定時制ナインの夏【上】多忙な日々乗り越え 市立川崎高校、全国へ

8/10(木) 6:30配信

カナロコ by 神奈川新聞

 ナイター照明に照らされた人工芝グラウンドの端に、ユニホーム姿の選手が5人。16日の全国大会まで2週間を切っていても、まだ全員はそろわない。川崎市立川崎高校(川崎区)定時制の軟式野球部顧問、高橋正太郎教諭(31)が一人でノックバットを振り続け、時に打撃投手にもなる。「はい、もういっちょ!」。明るい声で励ましながら、夏休み中は午後6時から8時ごろまで約2時間練習する。

 同部には1~4年生の選手12人、女子マネジャー2人が所属する。サッカー部などと掛け持ちしている選手もいるため、試合が重なると出られない。高橋教諭は「どこの定時制高校も、野球ができる人数を集めるのが大変。県予選でも試合ができるかどうかひやひやした」と振り返る。

 定時制高校では、生徒の多くが授業の前後にアルバイトをしている。部員も平日は朝から働き、夕方から授業を受け、放課後は午後10時まで練習といったハードな一日を送ることが少なくない。「試合までは毎日練習日にしているが、バイトのシフトがあるので参加できる曜日もバラバラ。全員がそろうのは難しい」と高橋教諭。それでも生活が懸かっていたり、土日も働いていたりする生徒もいる。「体力的にも相当大変なのに、続けられていることがすごい。野球が大好きなんだと思う」

 3年生の名渡山(などやま)涼太選手(18)も、働きながら通える定時制を選んだ。幼稚園から小学6年生まで軟式野球を続け、中学では柔道部に入ったが、1年生の冬にやめた。「中学時代は夜遊びが楽しくて。ゲームセンターに行ったり、野球が好きだからバッティングセンターに行ったり。だから学校も遅刻が多かった」

 高校では軟式野球部の存在も知らず、入るつもりはなかった。2年生のころから高橋教諭に誘われるようになり、「日本史の漫画を貸してもらったので、入ってみた」。3年生の春に入部すると、想像よりもレベルが高かった。「全日制の野球部に比べると自由な雰囲気で、学年関係なく仲がいい。楽しくて、スポーツがまた好きになった」。夜遊びも自然と減った。

 部にはやんちゃな生徒もいれば、内気だった生徒もいる。学生時代はサッカー一筋だった高橋教諭は言う。「野球部に入らなければ関わらなかった子たちが一緒に頑張っている。野球は未経験だったが、負けても勝ってもこんなに泣くとは思わなかった」。全国大会への初出場が決まり、地域や他校など多方面から応援の言葉をもらった。「定時制の生徒たちも頑張っているんだと、多くの人に知ってもらえる機会になる」

 全国高校定時制通信制軟式野球大会が16日、開幕する。川崎市立川崎高校定時制の軟式野球部は同日、稲城中央公園野球場(東京都)で熊本県立湧心館高校との初戦を迎える。初の大舞台に挑む夏を追った。