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ハイボール人気、次の一手 「国産」ではなく「輸入ウイスキー」が急拡大するワケ

8/12(土) 7:15配信

SankeiBiz

 気軽に飲めるアルコールの一つとしてすっかり定着した「ハイボール」のビジネスに“異変”が起きている。サントリーやキリンなど業界大手の間で、「輸入ウイスキー」や「樽(たる)詰め」のハイボールへの注力が加速しているのだ。コンビニエンスストアにも並ぶ「ジムビーム ハイボール缶」(サントリースピリッツ、2016年4月発売)は、その一例だ。変化の裏には、ビールや焼酎といった他の酒とは異なるウイスキー独特の事情に加え、昨今の雇用情勢も作用している。

 ◆飲食店から要望

 東京都新宿区の明治神宮外苑で毎年夏にオープンする「森のビアガーデン」。今年はビールに加え、新たな主役が登場した。キリンが輸入するウイスキー「ホワイトホース」をソーダで割った、飲食店向けの樽詰めハイボールだ。

 「スコッチ(スコットランド産ウイスキー)を使った樽ハイボールは業界初」と、キリン・ディアジオの小泉達也ウイスキーカテゴリーディレクターは胸を張る。銘柄にちなんで「うまソーダ」の愛称も付けた。年内に2000店舗、来年中に5000店舗での取り扱いを目指す。

 同商品は、キリンとしても初の樽ハイボール。ウイスキーやビールなどを納める取引先の飲食店から「樽製品化」の要望が強まり、発売に踏み切ったという。

 その背景にハイボール人気の定着があるのはもちろんだが、もう一つ、外食業界でも深刻化している「人手不足」の問題も見逃せない。3大都市圏の6月のアルバイト・パート平均時給は、過去11年間で最高の1012円(求人大手リクルートジョブズ調べ)。外食系に絞っても、昨年6月より24円上がって978円だった。

 時給上昇と採用難が進む中、ハイボールをめぐっても「注文のたびにウイスキーをソーダで割るより、樽詰めを注ぐ方が少ない人手で早く提供できる上に、味のバラツキもない」(小泉氏)というメリットから、樽製品を出すよう要望が強まっていたという。

 実際、最大手のサントリー酒類はすでに樽ハイボールを約2万店に展開。「ブラックニッカ」を使うアサヒビールも前年比50%増と急拡大している。

 ◆「国産」は原酒不足

 では、なぜ「輸入ウイスキー」なのか。一言でいえば、国産のウイスキー原酒が不足しているからだ。

 「ハイボールブーム到来前の2008年に、国内のウイスキー飲用者は推計800万人だった。その後、約10年の間に2000万人まで広がった」と説明するのは、サントリースピリッツの尾崎大輔ウイスキー・輸入酒部部長。ここ5年間の業務用ウイスキーに限っても、市場規模が倍増に近い勢いを示している。

 しかし、よく知られているように、ウイスキーは醸造後の熟成に3年から10年前後かかるため、人気が高まっても出荷量をすぐには増やすことはできない。

 その対策として、サントリー酒類は14年に白州蒸留所(山梨県北杜市)の生産設備を30%増強した。アサヒビール傘下のニッカウヰスキーも今年、宮城峡蒸留所(仙台市青葉区)で原酒を40%増産する。

 ただ、実際の出荷量が増えるまでは数年かかる。加えて近年、国際コンテストなどでジャパニーズウイスキーが高評価を得るようになり、輸出用のプレミアム商品としても人気が上昇しているため、「質の高い国産原酒は、なるべく高価格帯の品に仕上げたい」(大手関係者)のが正直なところ。そこで、輸入ウイスキーのハイボールを広げていくというわけだ。

 ◆新しい飲み方提唱

 ハイボール人気を先導するサントリースピリッツは今年、傘下の米蒸留酒大手ビームサントリーのバーボンウイスキー「メーカーズマーク」のキャンペーンを仕掛ける。東京・銀座に7月、新しい飲み方を広めるコンセプトバーを開いた。

 同店では、シナモン、ジンジャーなどを漬けたバーボンで作る「漬込みハイボール」や、かんきつ類や香草で爽やかさを演出する「シェイクハイボール」などを提供する。テーマは、「こだわりのクラフト感と、おしゃれでプレミアムな感覚」(本山峰之ウイスキー・輸入酒部課長)。従来のソーダ割りよりもプレミアムな「クラフトハイボール」と名付け、20~30代のファン獲得を目指す。

 また同店では洋風飲食店向けのセミナーも開き、昨年末500店だったメーカーズマーク取扱店を年内に2000店へ広げたいという。3年後には同商品の年間販売量を2.5倍、120万本(750ミリリットル瓶換算)に伸ばすのが目標だ。

 長期的な“ビール離れ”のトレンドも手伝い、各社にとってハイボールは収益の重要な柱に育ちつつある。販売合戦がさらに熱を帯びていくのは確実だ。(山沢義徳)

最終更新:8/12(土) 7:15
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