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日本の文化財、戦火から守った? 米国人美術家の真実に迫る

8/11(金) 11:00配信

神戸新聞NEXT

 太平洋戦争中、日本の文化財をリスト化し戦火から救ったといわれてきた米国人美術家ラングドン・ウォーナー(1881~1955年)。そのリストの真実に迫ろうと、昨年制作されたドキュメンタリー映画「ウォーナーの謎のリスト」が今夏、神戸など関西各地で上映される。「目的は文化財保護ではない」などとの指摘もあるリスト。金高謙二監督(62)=東京都杉並区=が、30人以上から証言を集めてたどりついた深層とは-。(大盛周平)

【写真】「ウォーナーの謎のリスト」の一場面


 ウォーナー・リストは米政府の諮問委員会メンバーとなったウォーナーが1944年に作成、提出した。皇居や法隆寺、清水寺など151の日本の文化財などが掲載され、姫路城や泉岳寺の赤穂義士の墓(東京都港区)など兵庫ゆかりの遺物も含まれる。戦後、このリストとウォーナーの進言により、京都や奈良は大規模な爆撃に遭わなかったとされたり、文化財の一部が守られたりしたなどと語られてきた一方、リストには文化財保護の意図はなかったことや親米感情をつくりだすプロパガンダとして利用された側面があったことも指摘されている。

 映画は、膨大な文書に当たるとともに、世界各国の歴史学者やウォーナーの親族の証言で構成。文化財が戦火から意図的に守られたことへの肯定、否定ともに触れる。開戦前、ウォーナーが歴史学者の朝河貫一(1873~1948年)と取った戦争回避のための行動なども紹介し、ウォーナーの人間像を浮かび上がらせる。

 金高監督は「実際にリストを米軍がどれほど活用したか分からない」とした上で、「ウォーナーは戦争自体に反対したヒューマニストで日本を含む東洋美術を学んだ人。だからこそ文化財を残すべきだと思ったんだと思う。例えば、リストには日本人しかその価値が分からない赤穂義士の墓があることに驚いた」と話す。

 東京・神田神保町の古書街を戦火から守ったとの逸話があるロシア人、セルゲイ・エリセーエフとウォーナーとの知られざる関係にも切り込み、古書街が残った背景にも目を向ける。「2人をヒーローにするつもりはないが、もしかしたら何%かは保護に影響したかも。日本の文化を愛した人たちだから」と言う。

 神戸の海運会社勤務などを経て、反戦の作品などで知られる故新藤兼人監督の助監督として映画づくりの薫陶を受けた金高監督。「証言も全て正しいとは思わないでほしい。いろんな意見の中でどう受け取るべきか考えてほしい」。

 12~18日に元町映画館(神戸市中央区元町通4)で上映予定(いずれも午後0時10分~)。13日は金高監督が舞台あいさつを行う。第七芸術劇場(大阪市淀川区)は12~25日、京都みなみ会館(京都市南区)は9月9~15日に上映予定。


■ラングドン・ウォーナー(1881~1955年) 米・マサチューセッツ州生まれ。ハーバード大卒業後、岡倉天心に師事するなどして日本美術に触れる。ハーバード大などで講義も行う。46年には連合国軍総司令部の顧問として来日し、文化財の被害状況を調査。1955年には勲二等瑞宝章を受けている。

最終更新:8/11(金) 12:28
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