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Windows 10のデスクトップ環境をDaaSのVDIで利用可能に――ライセンスの明確化

8/11(金) 9:55配信

@IT

●「Windows 10マルチホスティング」の権利とは?

 Microsoft製品およびサービスの「製品条項(PT)」ドキュメントの最新版は、Webサイトから入手できます。

Microsoft AzureのIaaS環境で実行中のWindows 10 Creators Update

 また、今回の変更については、公式ブログで説明されています。

 2017年8月1日の改訂で追加された「Windows 10マルチホスティング」の権利については、製品条項ドキュメントの「本書の説明および変更事項の概要 > ソフトウェア」(9ページ)、および「Windows > Windowsデスクトップオペレーティングシステム > 3. 使用権 > 3.5 Windows 10マルチテナントホスティング」(45ページ)に記載されています。

 「本書の説明および変更事項の概要 > ソフトウェア」には、次のように記載されています。

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Azure ADベースのライセンス認証を使用する、Windows 10 Enterprise E3/E5またはVDA E3/E5 Per User SLをお持ちのお客様が、Windows 10 Creators Update以降のCurrent Branchソフトウェアを、Microsoft Azure上で実行されている仮想マシン、または対象となるマルチテナントホスティングパートナーとの共有サーバーにインストールできるようにする、新しい使用権を導入しました。
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 これまで、WindowsデスクトップOSをMicrosoft Azureや他社クラウドのマルチテナントホスティング環境にインストールして実行することは、ライセンス上、許可されていませんでした。WindowsデスクトップOSを導入できるのは、オンプレミスの物理コンピュータやオンプレミスの仮想化環境(サービスプロバイダーの顧客専用サーバ環境を含む)に限られていました。

 例外は、Visual Studio MSDN(Microsoft Developer Network)サブスクリプション契約者に許可された、Microsoft Azure上でWindows Enterpriseを、開発やテスト目的で展開、実行することだけでした。

 この制約が一部緩和され、Microsoft AzureのIaaS(Infrastructure as a Service)環境、またはMicrosoftの「Qualified Multitenant Hoster(QMTH)Program」の認定を受けたホスティングプロバイダー上のマルチテナント環境に、Windows 10 Enterprise(Creators Update バージョン1703以降)の仮想マシンを展開し、実行するライセンス面での許諾が正式に提供されることになりました。

 今回、「Windows 10マルチテナントホスティング」の権利が許諾され、オンプレミス向けに購入したライセンスをクラウドに持ち込むこと(Bring Your Own License)が可能になったのは、ボリュームライセンスチャネルで提供される以下のサブスクリプションのWindows 10 Creators Update以降のバージョンに限定されます。

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・Windows 10 Enterprise E3 per User
・Windows 10 Enterprise E5 per User
・Windows Virtual Desktop Access(VDA)E3 per User
・Windows Virtual Desktop Access(VDA)E5 per User
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 「Windows 10 Enterprise E3」サブスクリプションは、以前は「Windowsデスクトップオペレーティングシステム用ソフトウェアアシュアランス(SA)」「Windows Enterprise with SA」と呼ばれていたソフトウェアアシュアランス(SA)契約であり、E5にはE3の全ての機能に加え、「Windows Defender Advanced Threat Protection」が提供されます。これらのライセンスは、先日発表されたMicrosoft 365 Enterpriseで取得することもできます。

 「Windows Virtual Desktop Access(VDA)」は、主にシンクライアントを対象とした、仮想デスクトップインフラストラクチャ用のWindows 10 Enterpriseライセンスです。

 「Windows 10 Creators Update以降のCurrent Branchソフトウェア」とは、「Windows Enterprise LTSB」(今後、LTSCに改称予定)ではないソフトウェアという意味であり、Current BranchとCurrent Branch for Businessの2つのサービシングモデルのCurrent Branchの方という意味ではありません。

 なお、クラウドサービスプロバイダー(CSP)が月額提供する「Windows 10 Enterprise in CSP(E3/E5)」についても、2017年9月6日から「Windows 10マルチテナントホスティング」の権利が利用可能になる予定です。

 Microsoft Azureにおけるセッションホストベースの仮想デスクトップ環境である「Azure RemoteApp」のサービスが廃止(2016年8月に新規受付終了、2017年8月31日に導入済み利用者への猶予期間終了)され、後継のサービスとして「Citrix XenApp Essentials」の提供が開始されたことは既報の通りですが、今回の製品条項(PT)に明記されたことで、ようやく運用環境向けに導入可能になりました。

 今回、Windows 10をクラウドで実行するためのライセンス条件が明確になったわけですが、「Microsoft Azure Active Directory(Azure AD)」ベースのライセンス認証が必要である点や、現状「Azureポータル」の準備が追い付いていない(Azure Marketplaceに用意されているイメージがWindows 10マルチホスティングの権利と関係のない「Azure EA」契約を要求される)部分があるなど、注意点が幾つかあります。不明な点は、導入する前に日本マイクロソフトのライセンス窓口やQMTH認定パートナーに問い合わせが必要でしょう。

●セッションホストベースのリモートデスクトップサービスの利点と限界は?

 これまで仮想デスクトップ環境をMicrosoft Azureや他社のクラウドで実現しようとする場合、Windows Serverのリモートデスクトップセッションホストベースの「リモートデスクトップサービス」を利用するのが唯一の方法でした(WindowsデスクトップOSをクラウドで提供するという、これまでのDaaS(Desktop as a Service:サービスとしてのデスクトップ)も同じ仕組みです)。

 サービスプロバイダーは「RDS SAL(サブスクライバーアクセスライセンス)」を取得することで、リモートデスクトップサービスへのアクセスをサービスとして提供することができました。また、2014年1月1日からはオンプレミス向けの「RDS CAL(クライアントアクセスライセンス)」に「拡張された権利」が追加され、クラウド環境に展開することが可能になりました(「製品条項(PT)」の「4.3 Remote Desktop Services(RDS)User CALおよびUser SL-拡張された権利」を参照)。

 Windows Serverのリモートデスクトップセッションホストベースのリモートデスクトップサービスは、少数のサーバで多数のユーザーにデスクトップ環境を提供することができるため、効率的なリソース使用、アプリケーションや設定の集中管理など、さまざまな利点があります。特に、必要に応じてリソースを追加できるクラウド環境での展開に適しているといえます。

 しかし、Windows 10とWindows Server 2016からのデスクトップエクスペリエンスの機能差が理由で、リモートデスクトップセッションホストベースのリモートデスクトップサービスを選択できない場合が出てきました。

 Windows Server 2008 R2のリモートデスクトップセッションホストはWindows 7相当のデスクトップ環境を、Windows Server 2012はWindows 8相当のデスクトップ環境を、Windows Server 2012 R2はWindows 8.1相当のデスクトップ環境を提供できました。違いは、Windows Serverであるため64ビット(x64)のデスクトップ環境であるということぐらいでした(64ビットOSでは16ビットアプリは動きませんが、それが問題になることはまれなはずです)。

 しかし、Windows 10とWindows Server 2016からは、両者のデスクトップ環境は明らかに異なります。Windows Server 2016はWindows 10 Anniversary Update(バージョン1607)と同じビルドをベースにしていますが、Windows 10標準の新しいWebブラウザである「Microsoft Edge」、音声アシスタントの「Cortana(コルタナ)」「ストア」アプリを搭載していません。また、Windows 10にはプリインストールされているさまざまなUWPアプリ(メール、カレンダー、マップ、電卓など)も提供されません。

 Windows Server 2016にこれらを後から追加する方法は提供されていません。そのため、Windows Server 2016のリモートデスクトップセッションホストのリモートデスクトップサービスは、Windows 10の特徴的なデスクトップエクスペリエンスの多くを提供できないのです。

 Windows Server 2016のリモートデスクトップサービスを使用して、完全なWindows 10の仮想デスクトップを提供する方法は、Windows 10 Enterpriseの仮想マシンベースの展開(Windows 10 Enterprise仮想マシンを仮想化基盤で集中的に実行し、Windows Server 2016のリモートデスクトップサービス(接続ブローカー)で管理する)が必要です。これまでは、そのようなVDI(仮想デスクトップインフラストラクチャ)環境はオンプレミスでなければ構築できませんでした。

 今回の「Windows 10マルチホスティング」の権利により、Windows 10 EnterpriseのVDI環境をクラウドに展開できるようになります。そして、そのVDI環境に必要なライセンスは共通です(Windows Server 2016のリモートデスクトップサービスで管理するのであれば、RDS CAL+SAまたはVDA)。

●筆者紹介

○山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。

最終更新:8/11(金) 9:55
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