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モジュールで拡張できるコンパクトでスタイリッシュなPC「HP Elite Slice」を試す

8/11(金) 6:10配信

ITmedia PC USER

 日本HPの「HP Elite Slice」は、モジュールを使って機能拡張ができるビジネス向けコンパクトデスクトップPCだ。「ラグジュアリーでスタイリッシュな質感」のボディーデザインを採用し、性能面やセキュリティ面でも妥協をしていないことが大きな特徴だ。

【重ねて拡張できる】

 この記事では、Elite Sliceの最上位モデル「HP Elite Slice オーディオモジュール付コラボレーションモデル」(直販標準価格17万8000円)をレビューする。

(記事中の価格は全て税別)

●スタイリッシュ路線のコンパクトPC

 Elite Sliceのデザインは、プレミアムノートPC「HP Spectre」のラグジュアリーデザイン路線を踏襲している。上品なブラックのボディーに光る銅色のHPロゴを見るとそれが良く分かる。本体上部にあるスリットも銅色となっている。

 ただし、使われている銅色は光沢を抑えた上品な色で、使われている面積も少なめだ。これぐらいであれば、オフィスにも十分なじむ。

 デザインにこだわっていると聞くと「個人向け」というイメージを持つかもしれないが、Elite Sliceはあくまでも「ビジネス(法人)」向けだ。

 「デザインがビジネスにとって重要なのか?」と疑問に思う人もいるかもしれないが、BYODの流れにも見られるように、昨今はビジネスにも「個性」を持ち込む時代でもある。デスク上のPCがスタイリッシュであれば、自然とデスク上を整理することになるし、そうなれば業務も円滑になるという考え方もできる。

 本体サイズは165(幅)×165(高さ)×57(奥行き)mm。「Intel NUC」と比べると一回り大きいが、スリムタワータイプのデスクトップPCと比べると一回りも二回りもコンパクトだ。平置き設計であるため、スリムタワーよりも幅はとるが、後述のモジュールを使えば余計な幅を増やさずに機能を拡張できることがメリットだ。

●「カバー」と「モジュール」で機能拡張

 Elite Sliceの最大の特徴は「カバー」と「モジュール」であると言っても過言でもない。

 カバーは本体天板に搭載するもので、日本ではモデルによって「コラボレーションカバー」か「ワイヤレスチャージングカバー」を選択できる。

 コラボレーションカバーは、Skypeを始めとするチャットアプリケーションでよく用いる「通話」「ミュート(消音)」「音量ダウン」「音量アップ」「終話」の操作を行えるタッチキーを備えている。会社でPCを使ったビデオ会議を頻繁にする場合に最適なカバーといえる。

 ワイヤレスチャージングカバーは、「Qi(チー)」規格と「PMA(Power Matters Alliance)」規格の無接点充電機能を備えている。Elite Sliceの上にこれらの規格に対応したスマートフォンやモバイルバッテリーを置くと充電できるというわけだ。

 なお、カバーは出荷状態から換装(交換)することはできない。米国のように購入時にカバーをカスタマイズできるようになると良いのだが……。

 モジュールは本体下部に搭載する拡張キットで、ネジ不要で取り付け・取り外しができる。8月10日現在、以下のモジュールが用意されている。

・オーディオモジュール(直販標準価格1万5000円)
・オプティカルディスクドライブモジュール(同上)
・VESAマウントマウントモジュール(直販標準価格5000円)

 オーディオモジュールはBang & Olufsen(B&O)の360度スピーカーを搭載し高品質オーディオが楽しめる。また、デュアルマイクも搭載しており、ハンズフリー通話時の音質が改善できる。オプティカルディスクドライブモジュールにはDVDスーパーマルチドライブを搭載しており、ファイルのバックアップやDVDやCDの再生などに便利だ。VESAマウントマウントモジュールを使うと、本体とその他のモジュールを一緒にVESAマウント対応ディスプレイに装着できる。

 本体とこれらのモジュールは1本のセキュリティロックケーブルでまとめてロックできるように工夫されている。本体と個々のモジュールでそれぞれケーブルを用意せずに済むことは大きなメリットといえる。

 なお、モジュールは本体購入と同時にBTOカスタマイズで追加すると、直販標準価格から若干の割引がある。また、今回レビューに利用したオーディオモジュール付コラボレーションモデルではその名の通りオーディオモジュールが標準で付属するのでおトクだ。

 本体とモジュールの接続には特殊形状のUSB Type-C端子を用いている。重ねた際に本体側のオス端子と拡張モジュール側のメス端子が接続されるスマートな設計だ。ラッチで固定される仕組みとなっているため、スタックした(重ねた)状態で本体を持ち上げても拡張モジュール部が脱落するようなことはない。とてもスマートだ。

●日本では3モデル展開

 8月10日現在、Elite Sliceの日本モデルは3種類ある。今回レビューしているオーディオモジュール付きコラボレーションモデルの場合は以下のような構成となる。

・CPU:Core i7-6700T(4コア8スレッド、2.8~3.6GHz)
・メインメモリ:8GB×1(DDR4 SO-DIMM、最大16GB×2)
・ストレージ:128GB SSD(Serial ATA)
・カバー:コラボレーションカバー
・モジュール:オーディオモジュール付属

 その他、Core i5-6500T(4コア4スレッド、2.5~3.1GHz)を搭載する「コラボレーションモデル」(直販標準価格14万8000円)と「ワイヤレスチャージングモデル」(直販標準価格15万3000円)が用意されている。両者はカバーと付属するACアダプターの出力以外は同一仕様となる。

 Elite Sliceの日本モデルで悩ましいことは、「Core i7」と「チャージングカバー」という組み合わせが選べないことだ。 「Core i7モデルでも非接触充電を使いたい!」という場合は、非接触充電機能付き液晶ディスプレイ「HP EliteDisplay S240uj」を購入すると幸せになれるかもしれない。

 S240ujはWQHD(2560×1440ピクセル)の23.8型IPS液晶(非光沢)を搭載し、Qi規格と「AirFuel」規格の非接触充電に対応している。また、USB Power Delivery(USB PD)の給電に対応したUSB 3.1 Type-C端子も備えているので、USB PD対応ノートPC用のディスプレイを兼用させることもできる。直販標準価格は5万9800円だが、Elite Sliceとの同時購入なら2万円引きの3万9800円で購入できる。

●ミニPCでもデスクトップ用CPUを採用 メモリは最大32GBまで増設OK

 ノートPCが主流となる中、あえてデスクトップPCを選択する理由の1つは“パフォーマンス”だろう。しかし、スペースの制約や熱設計の観点から、ミニPCではノートPC向けの「Uプロセッサ」を採用することも少なくない。

 それに対して、Elite SliceではデスクトップPC向けの「Tプロセッサ」を採用している。TプロセッサはデスクトップPC向け省電力プロセッサという位置付けだが、Uプロセッサよりもコア数やキャッシュメモリ容量が大きく、最大動作周波数も高めであるため、より高速に各種処理をこなせるようになっている。普通のミニPCよりも高いパフォーマンスを期待できるのだ。

 ただし、プロセッサの世代が1つ前の第6世代(Skylake)となっている。現行の第7世代(Kaby Lake)との機能差やパフォーマンス差はそれほどないが、購入時には注意しよう。

 メインメモリは8GBのDDR4 SODIMMを1枚搭載している。スロットは2つあり、最大で32GB(16GB×2)までメモリを増設できる。一般的なオフィスでの利用なら標準のままでも十分使えるが、よりパフォーマンスを求めるならメモリを増設すると良い。特にメモリを2枚構成にすれば「デュアルチャネル」動作となり、ビデオ機能を中心により大きなパフォーマンスアップが見込める。

 ストレージはコラボレーションモデルとワイヤレスチャージングモデルが500GBのHDD、オーディオモジュール付きコラボレーションモデルは128GBのSSDを搭載している。いずれもSerial ATA接続で、2.5インチベイにドライブを搭載している。

 今回レビューしているオーディオモジュール付きコラボレーションモデルでは、SanDisk製SSD「Z400」を搭載していた。正直、128GBという容量は必要最小限で、アプリケーションを導入して本格的に運用すればあっという間に半分かそれ以上の容量を使ってしまうだろう。

 ただ、Elite Sliceの本体仕様をよく見ると、使われていないM.2 2280スロットが1つ用意されていることが分かる。内蔵ストレージの容量が足りない場合は、ここにM.2 SSDを装着して容量不足を補える。

 有線LANは1000BASE-T/100BASE-TX/10BASE-Tに対応している。また、無線LAN(Wi-Fi)はIEEE802.11ac(最大867Mbps)/a/b/g/n(5GHz帯・2.4GHz帯)に対応している。Bluetooth 4.2にも対応している。ネットワークやBluetooth回りもしっかり使えて安心だ。

●デスクトップPCでは珍しい“内蔵”指紋認証センサー搭載

 Elite Sliceの本体インタフェース回りを見ていこう。

 特筆すべきは、本体右側面にあるWindows Hello対応の指紋認証センサーだ。セキュリティの観点から、ビジネス向けノートPCでは搭載率が高まっている指紋認証センサーだが、デスクトップPCではそこまで普及していない。本体にセンサーを搭載している点でも、Elite Sliceは貴重な存在だ。

 左側面にはUSB 3.1 Type-C端子とヘッドホン端子を備える。背面には、右から順にセキュリテイロックスロット、HDMI端子、DisplayPort端子、USB 3.1 Type-A端子×2、USB 3.1 Type-C端子、有線LAN(Ethernet)、電源ジャック、電源ボタンが用意されている。右端に近いHDMI端子は、ケーブルを接続するとやや斜めに外を向く感じになる。本体の丸みに合わせた基板設計であり、芸が細かい。HDMI端子の反対側にある電源ボタンもやや外側を向いているため、簡単に探し当てて押せる。

 本体内部の話にはなるが、Elite SliceはTPM 2.0対応のセキュリティチップを搭載している。また、BIOSの状態を起動中も定期的に監視する「HP Sure Start with Dynamic Protection」にも対応している。

●パフォーマンスをチェック

 ここからはレビュー機のパフォーマンスをベンチマークテストを使ってチェックしていく。

 まず、「CINEBENCH R15」でCPUの処理性能をチェックした。結果はマルチコア・マルチスレッドのパフォーマンスを示す「CPU」が695cb、シングルコアの結果を示す「CPU(Single Core)」が143cbだった。

 デスクトップPC向けのCore i7の最上位モデルと比べると、CPUの結果は一段抑えられてはいるが、それでもモバイル向けの「Core i7-7600U」あたりと比べると約1.5倍のスコアを記録している。

 一方、CPU(Single Core)のスコアはCore i7-7600Uよりも若干劣っている。これはターボブースト時の最大周波数がCore i7-7600Uの方が高いことが影響している。

 シングルコア時のスコアが少々惜しいことになってしまったが、これだけの結果なら普段使いは間違いなく快適だ。

 次に、「PCMark 10」で総合的な処理性能をチェックした。トータルスコアは2333と、統合GPUを利用している製品としては一般的な結果となった。

 個別のスコアを見ていくと、PCの底力を示す「Essentials」テストでは各項目ともにバランスよい点数を出しており、トータルで7273ポイントを記録した。また、オフィスアプリケーションのパフォーマンスを試す「Productivity」テストでもバランス良く高いスコアを獲得し、トータルで6109ポイントとなった。基礎体力面とオフィスアプリの利用においては十分すぎるパフォーマンスを持っているといえる。

 一方、写真・動画の編集パフォーマンスを試す「Digital Contents Creation」とゲームプレイ時のパフォーマンスを試す「Gaming」のトータルポイントはそれぞれ2764、653と振わなかった。これらのテストは外部GPUを搭載するPCに有利なテストで、それがないElite Sliceで厳しい結果になるのは仕方ない面もある。ただし、物理計算のパフォーマンスを測る「Physics」が8768と高スコアだったことからも分かる通り、CPUそのものの性能は間違いなく高い。

 次に、「3DMark」でGPUの性能を測ってみた。先ほどのPCMarkの結果からも明らかなように、Elite SliceはGPUを駆使するテストにおいて圧倒的に不利な立場にある。果たしてどこまで健闘できるのだろうか。

 結果はDirectX 11を使う「Fire Strike」が764、同じくDirectX 11を使う「Sky Driver」が3832、DirectX 10を使う「Cloud Gate」が6997、Direct X9を使う「Ice Storm」が55530となった。

 これらを踏まえると、DirectX 11を使うゲームには力不足で、DirectX 10を使うゲームはそこまで快適ではなさそうだ。一方、DirectX 9を使うある軽量なゲームなら十分に楽しめそうだ。

 実際のゲームに基づいたベンチマークも合わせて実行した。利用したのは、スクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」と「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト」の2本。前者は処理が重めで、後者は処理が比較的軽めであることが特徴だ。

 まず、前者のテストを実施した。画面解像度を1920×1080ピクセル(フルHD)にした場合、画質設定をもっとも低い「標準品質」にしても「設定変更が必要」と出てしまった。1280×720ドット(HD)の「標準品質」でようやく「やや快適」と出たが、“やや”というだけあって平均フレームレートは16.969フレーム/秒と、見ていてカクカクさを感じるレベルだった。

 次に後者のテストをやってみた。こちらもフルHDでは厳しい所があるが、「標準品質」にすると「普通」判定が出た。HDなら「最高品質」でも「快適」判定となった。3Dパフォーマンス的には「HDが最適」といった状況だ。

 最後にストレージのパフォーマンスを見てみよう。「CrystalDiskMark 5.2.1 x64」の結果は、シーケンシャルリードが520.6MB/秒、同ライトが186.2MB/秒、4K Q32T1は147.2MB/秒、同ライトは161.3MB/秒だった。搭載しているのがメインストリーム向けSSDであり、さらに容量の小さい128GBだった(※)ので、シーケンシャルリードはともかくシーケンシャルライトはSSDとして見れば遅い見える。ただし、HDDと比べれば間違いなく高速だ。

 テスト機の場合、速度よりもむしろ容量のほうが問題になりうる。性質上、Elite Sliceは事務用途が主な使い方になると思われるが、そこまで大きなファイルを扱わないにせよ、128GBでは常時残り容量を気に留める必要がありそうだ。

※一般的に、SSDは容量が大きければ大きいほど(厳密には搭載するフラッシュメモリの数が多ければ多いほど)転送速度が上がる

●まとめ:コスパではない「機能美」こそが業務効率をUPする

 Elite Sliceの一押しポイントは、何といってもデザインだ。スタイリッシュかつコンパクトで、そのデザインのなかに、スタッカブル(重ねて拡張できる)という「機能美」を推したい。加えて、デスクトップ向けCPUを採用したことによる処理能力の高さも機能美に加えて良いだろう。事務作業においてCPU性能不足から来るモタつきをほとんど感じずに済む。

 ビジネス向けに一括導入されるPCでは、コストを重視した結果、性能の明らかに乏しいCPUを搭載したPCが採用されることもあると聞く。一方で、作業効率を上げるために「求められる処理能力」を十分に満たしたPCを導入する動きも最近では多いようだ。ストレスが軽減されるだけでも十分に業務改善になるはずだ。業務面ではセキュリティロックスロットの使い勝手の良さや本体内部のセキュリティ機能の充実ぶりも見逃せない。

 この製品はコストパフォーマンスに優れた製品とは言いきれない。しかし、視点を変えればビジネスにとって有益なPCと言えるのではないだろうか。

最終更新:8/11(金) 6:10
ITmedia PC USER