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敵は社内にあり! 抵抗勢力との向き合い方 「頑固な抵抗に対処する」

8/11(金) 13:32配信

ITmedia エンタープライズ

 これまで「隠れた抵抗」と「表に出た抵抗」への対処の仕方を解説してきた。

 2回めで解説した「抵抗の強さの4段階」でいうと、主にレベル1~2にあたるものへの対処が中心だった。基本的なことだが、これらをしっかりやるだけで相当、抵抗を解消できる。

【画像】抵抗の強さの4段階。段階ごとに対応は異なる

 実は、抵抗レベル2までに抑えるのが、抵抗と向き合うコツだ。レベル3以上になると、途端に対応が難しくなるからだ。隠れた抵抗を拾い上げ、表に出た抵抗に丁寧に対応すれば、多くはレベル2までに抑えられるだろう。

 とはいえ、やはりレベル3~4の抵抗に直面することもある。そこで、「抵抗勢力との向き合い方」を解説する連載の5回目では、レベル3~4の「頑固な抵抗」への対応策を見ていこう。


●レベル3の「何が何でも反対」に対応する

 レベル3の「何が何でも反対」というレベルになると、合理性を欠いた反応が見られるようになる。

 例えば、会社全体で効果が高い施策について、「大変になる部署があるから、やりたくない」と全体感を欠いた主張をする人がいる。めったに起こらないリスクを挙げて、「リスクが大きいから、実行すべきでない」と強硬に主張する人もいる。もっと強い拒絶反応から、屁理屈としかいいようのない理由で変革に反対する人ももいるだろう。

 私の経験では、施策の是非を検討する場面で、「理由は説明できないが、とにかく嫌なんだ」と面と向かって言われたこともあるし、「全体としてはいい変革だと思いますが、この部分はやるべきではないと思います」と、その方の部署が担当するところだけ、変革を拒否されたこともある。

 「今の業務に思い入れがある」「現在のシステムを全部設計してきたプライドがある」「改革を推進する人が嫌い」など、いろいろな事情によって、「とにかく反対」という状態になっているのだ。

 これらに丁寧に反論していくのは非常に骨が折れるが、変革プロジェクトを進める側としては、我慢のしどころだ。理性的な判断力を取り戻し、さまざまなしがらみを超えた客観的な判断をしてもらうために、私がよく使う7つの工夫を紹介しよう。

1. 自分のことではなく、「人ごと」としても考えてもらう

 人はとにかく、変化や不確実なことを嫌う。心理学や行動経済学の実験では、「将来手に入ると期待されるものよりも、現在持っているものを大事にし過ぎてしまう」という人間の不合理な性質は、よく確認されるという。

 人間は、そもそも合理的に判断できない生き物なのだ。だから、現在の業務やシステムに問題があったとしても、実際以上に価値があるように感じてしまう。そして変化への一歩が踏み出せなくなる。

 そこで、今の立場から離れて考えてもらうために、こんな問いかけをしてみると良い。

 「今、この業界に新規参入する会社が、ゼロからこの仕事を設計するとして、やっぱり同じようなやり方をしますかね?」

 これはなかなか効く。自社のしがらみをいったん取っ払って考えることができるので、現状維持から抜け出すきっかけが作れる。実際、「いやー、だったらこんな業務にはしないよ」と返ってくることも多い。

 そうなればすかさず、「なるほど、どうしてでしょうか?」と掘り下げていけばいい。その後、たいていは「でも、ウチの現状では無理だな」といわれるが、話のきっかけとしては良い。

 他にも「ライバルのA社さんだったら、同じようにやりますかね?」「仮に組織の制約がなかったとしたら………」「仮にあなたが社長だったら……」など、多少強引にでも仮定して、考えてもらうよう促すことが有効だ。

2. 「現状の悪さ加減」ではなく、「将来どうするべきか」に話を向ける

 「現状に課題がある」といわれると、すごく拒否反応を示す人がいる。長年、第一線で頑張ってきた人ほど、その傾向があるように思う。今までやってきた努力が否定されるような気がするのだから、当然といえば当然である。

 私は、現状調査や課題分析のとき、とても気をつかう。「今の状況が問題であるか否か」で時間を使うより、「将来に向けて改善の余地があるのかどうか」を語る。相手が現状にこだわりを持っている人なら特に、だ。

 これまで積み上げてきたものが問題か、そうでないのかの押し問答をするのは、時間の無駄で意味がない。現状がどんな経緯で作られたのか、いかに妥当な判断だったのかをひたすらに説明されるのがオチだ。

 過去の話は極力少なめに。「今、発生している問題は、このプロジェクトをキッカケに解決しなくて良いのか?」「このまま放っておいていいのか? 改善に向けた検討をすべきなのか?」を問うのだ。

 一方で、強烈な自己反省がプロジェクトの原動力になるケースもある。本来はこちらの方が健全だが、生え抜きの社員だったり、現場業務への思い入れが強い人ほど、受け入れるのが難しいのも事実である。状況を見ながら使い分けたい。

3. 数字で語る

 感情論から脱出し、客観性を取り戻すには、実は「数字で語る」のが一番手っ取り早い。なぜなら、数字には感情が乗らないからだ。

 説明に使えそうなものについて、とにかく徹底的に数値化しておくと、後でも何かと使えて便利だ。

4. 不満を“見える化”する

 以前、かたくなな批判をする人が多かったプロジェクトで、「不満や懸念点を洗い出す」ことだけを目的に、2時間も会議を開いたことがあった。不満や不安は洗い出して、誰の目にも見えるようにしておかないと、どんどん膨張していく。

 東日本大震災で中断していたプロジェクトが再度動き出したときのこと。施策は中断前にだいたい固めていたのだが、1年近く中断していたため、検討メンバーの大半が入れ替わってしまった。そのせいもあり、固まりかけていた施策プランに対して、懸念や不満の声が続出した。

 このままでは一丸となって施策を実行できない。そのため、不満や懸念を自由にぶちまけてもらう会議を開いた。それぞれの立場から40ほどのリスクが出され、整理して優先順位を付けた結果、「今後、対応していくべきリスク20」が会議の成果として残った。これが、この時点でのリスクの全てということになる。

 こうした“見える化”は、発想の転換を促す。「アレもコレも問題だ! 絶対成功しない」という後ろ向きなマインドから、「この20のリスクさえ解消できれば、いい施策になる」という前向きなマインドに変化する。しかも、どこか“お客さま”モードだった新メンバーも、加入前に検討していた施策について深く議論することで、腹に落ちたようだった。

 もちろんマインドの変化だけでなく、今後起きるであろう問題に先んじて手を打つこともできた。挙がったリスクに対して1つずつ真摯(しんし)に対策を講じ、リスクを最小化していった。

 この会議を開かずに、不安や懸念が新メンバーの頭の中だけにしまわれていたままだったら、どれだけ効果が期待できる施策であっても、絶対に支持されなかっただろう。

5. 将来を見据えて念を押す

 この課題を「5年放っておくとどうなるのか?」を示す方法だ。「5年後にはこんな状態になるが、それでも今改革せずに先延ばすのか?」と問いかける。何かを変えるリスクは語られても、何もしないリスクはなかなか語られないものだ。

6. 反対意見を撤回しやすくする

 一度「反対」と宣言してしまうと、多くの人が引くに引けない状況に追い込まれてしまう。自分の意見を正当化するために、反対につながる情報だけを集めたり、反対につながる情報を重要視したりしてしまう。宣言が強ければ強いほど、大勢の前で「反対である」と宣言すればするほど、その傾向は強くなり、かたくななな抵抗勢力になってしまう。

 これに対応するには、宣言を撤回しやすい雰囲気を作るしかない。

 例えば、「あのときと前提が変わりましたからね。今の状態だと賛成してもらえるんじゃないかと、ちょっと期待しているのですが」「あのときは、この情報をちゃんとお伝えできてなかったんですね。すみませんでした」などと、一言添える。

 議論に勝って相手をやり込めるのが目的ではないのだから、間違っても「おや? 反対って言われてましたよね? ご意見を変えるってことでいいですか?」なんて言わないようにしたい。

7. 代役を立てる

 それでも無理なら、代役を立てるのが有効だ。

 手を尽くしてもなかなか信頼されないこともある。時間がなくて信頼を勝ち取れないこともある。そんなときは、既に信頼を得ている別のメンバーに窓口になってもらう。同じ話でも、説明する人が違うと、受け取られ方が全然違う。

 あるプロジェクトでは、企画部門の方が業務改革のリーダーだったが、現場の方からは「自分たちより業務のことを知らないやつじゃ、話にならないだろう?」という目で見られているようだった。なぜか最初から“けんか腰”な感じだった。

 このときは、施策プランを説明したり質問に答えたりするのはプロジェクトリーダーが務めたが、施策のメリットを強調したり、現状から脱却することの大切さを説明したりするのは、別のプロジェクトメンバーが担当した。その方は以前にその部署にいたので、「現場を分かってくれている同志」と映るからだ。

 「誰が話そうが、良いプランは良いプラン」というのは、なかなか通じない。組織を動かすには「誰の口から話されるか」も中身と同じくらい重要なのだ。

●レベル4の「つぶしにかかる」に対応する

 レベル4の「つぶしにかかる」になると、露骨な反対運動が展開される。

 公式の場で何も言わなくても、裏で「アレはうまくいかない」「俺は最後まで反対する」と言って回る人もいるし、役員、経営陣にあることないこと吹き込むケースもあるだろう。

 ここまで来ると、できることは限られるのだが、数少ない対処方法から2つ、紹介しよう。

1. 個別に“撃破”する

 「おれの周囲はみんな反対している」とうれしそうに言う人がいる。自分の行動を他者の言動に合わせる、または近づけることを「同調効果」というが、反対意見でも“後ろ盾”があると、深く考えずに反対してしまうことがあるのだ。

 こういった場合は一人ひとりと膝を付き合わせて、しっかり話をしよう。

 会議のようなオフィシャルな場ではなく、席に行って個別に話してみると、「○○さんが大反対しているでしょう? 僕は彼ほど反対じゃないんだけどね。懸念は1つだけだから」といった流れになることも少なくない。

 ここまで話ができればしめたもの。きちんと懸念を払拭して、賛成側に付いてもらおう。

 反対派が大勢を占めているとつらいが、“個別訪問”が進んで賛成派が大勢を占めてくれば、賛成側の同調効果を期待することもできる。これは、本当の抵抗者を切り分ける作業、ともいえるだろう。

2. 最終手段としてのトップダウン

 最後は、トップの力を全面的に借りるしかない。

 トップからガツンと言ってもらうのはもちろんのこと、場合によっては人事権を発動してもらうことも必要かもしれない。数人の抵抗勢力のために、全社として重要な取り組みをつぶさせるわけにはいかない。

 ただし、このカードを使うなら、日頃からトップにプロジェクトの意義や効果をきちんと伝えて味方になってもらう必要がある。

●まとめ

 以上が、「頑固な抵抗」への対処方法だ。対応方法の少なさを見ても分かる通り、レベル4になってしまうと、手遅れと考えてよい。ここまで来ると全面対決を避けるのは難しくなってしまう。何としてでも、この手間で食い止めよう。

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