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紆余曲折の稲葉ジャパン誕生 今後の透明化に期待

8/11(金) 10:00配信

デイリースポーツ

 7月31日、野球日本代表「侍ジャパン」の新監督に元ヤクルト、日本ハムの稲葉篤紀氏(45)の就任が正式決定。3年後に迫る2020年東京五輪での金メダル獲得へ、その歩みが始まった。

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 侍ジャパン強化委員長を務める日本野球機構(NPB)の井原敦事務局長は「最も豊富な国際大会経験を積んでこられた。短期決戦のチームの作り方、戦い方を熟知している」と選考理由を説明。08年の北京五輪、選手とコーチで3度のWBCに出場している経験が買われた形だ。

 不測の事態が起こりうる国際大会では、その舞台を知っていることが重要な要素。その点で稲葉監督は適任者の1人といえる。ただファンにとって見れば、稲葉監督就任は唐突な印象を受けたのではないか。その要因は、決定までの経緯の不透明さにあると感じた。

 監督選定を行ったのはプロとアマで構成される日本野球協議会に属する侍ジャパン強化委員会。歴代代表監督へのヒアリングも実施されたが、その内容を含め、強化委員会で協議された具体的な監督像についても詳細までは明かされていない。

 6月の同委員会で最終的な人選、交渉が委員長の井原事務局長と副委員長の日本野球協会・山中正竹副会長の2人に委ねられ、その後に山中氏を本部長に据えた強化本部も侍ジャパン強化委員会の中に設置されたが、組織体の増加に伴い、監督任命などの責任の所在も曖昧になった。

 他のスポーツも同様に、代表監督の選定は簡単なものではない。当初は実績を重視し、09年WBCで侍を世界一に導いた原辰徳氏が有力候補であったが条件などで折り合わず。将来を見据えた世代交代、国際大会経験の重視にかじを切った。

 交渉ごとが難航するのはよくあること。組織内の意見の相違や方針転換もあっていい。プロ野球の熊崎コミッショナーが「4、5月の間に」としていた決定時期が7月の終わりになったことも想定の範囲内だ。紆余曲折を隠して波乱のない選考を装うことで、逆に「透明性のある選考」から遠ざかっている。

 未来への取り組みが見えないことも残念だ。関係者は異口同音に「まずは東京五輪での金メダルを」と話すが、予定通りならば翌21年にはWBCがある。

 井原事務局長は以前から「(21年3月に)WBCがあるかどうかはまだ決まっていないので(監督の任期も)決まっていないことにこだわる必要もない」との見解を示すが、大会間の期間が短いことが想定されるならば、五輪後に場当たり的な監督人選とならないよう、何らかの方向性は持っておくべきだ。

 また大リーガーの参加が絶望的で6カ国で行われる五輪は、球界を盛り上げるイベントとしては重要だが、真の野球世界一を名乗りたいならばWBCは軽視できない。代表が常設されている以上、その意志を明確にしておくことは必要だろう。

 稲葉監督にとって期待と重圧が掛かる五輪監督の受諾は、自身の今後の野球人生を賭ける決断にもなり得る。監督決定に至る過程を明確にし、強化委員会と強化本部が責任を共に負うことが、稲葉監督、そしてこの先の代表監督に対する一番のサポートにつながる。(デイリースポーツ・中田康博)