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「ないないづくし」自虐的動画が大ウケ 和歌山のPR手法が話題に

8/11(金) 9:20配信

産経新聞

 和歌山県の魅力発信にソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を活用する動きが広がっている。中でも写真共有アプリ「インスタグラム」や動画投稿サイト「ユーチューブ」など視覚的に訴えるツールは、知られざる絶景などの魅力を口コミで“拡散”させる可能性を秘めており、期待されている。山間のある町は「電車も、ファミレスも何もない」が、「遮るものがない」豊かな自然に恵まれ、「最高の“ない”がここにある」と動画でPR。逆説的でユニークな“宣伝”が話題を集めている。(福井亜加梨)

 白い石灰岩に囲まれた岬と、青い海とのコントラストが美しい白崎海洋公園(同県由良町)。「日本のエーゲ海」とも称される白崎海岸沿いの道路や公園内で6月18日、一眼レフやスマートフォンを手にした老若男女17人が、景色を見ながら写真撮影を楽しんだ。由良町を含む日高地方の魅力を発信する「ヒダカサミット」として初めて行われたこのイベントは、同町在住のインスタグラマーで県職員の山口和起さん(26)が企画した。

 山口さんは平成27年10月から、インスタグラムで日高の魅力を発信。投稿写真に付けたハッシュタグ「#lovehidaka」は不特定多数の投稿者に使われるようになり、これまでに約1900枚がアップロードされている。ヒダカサミットの参加者も、これを付けてイベント当日の写真を投稿。フォロワー数は計約5千人に上り、山口さんは「人が集まれば、発信する力が一気に大きくなる。これからもどんどん発信していけたら」と話す。

 こうしたイベントや投稿は観光誘致に役立つことから、県も27年にインスタグラムの公式アカウントを開設した。若い女性を中心に人気が出ていたこのアプリにいち早く目を付けたのは当時の県情報政策課長で、都道府県としては全国初の試みだった。同課の担当者は「SNSにははやり廃りがあるものの、ターゲット層に効果的に発信できるのが魅力」と話す。

 公式アカウントにちなんだハッシュタグ「#insta_wakayama」を付けた写真の投稿は現在、1日平均約120枚に上るという。この中から厳選した写真を、名所や地域にまつわる情報とともに公式アカウントで紹介。担当者は「すばらしい写真ばかりで、選ぶのが大変」とうれしい悲鳴を上げている。

 県内の自治体も独自の取り組みをしている。移住推進や観光客誘致を重視する同県中部の紀美野町は動画でのPRに力を入れており、人が少ないことを逆手に取った自虐的でユニークな作品が話題を集めている。

 28年1月、ユーチューブに町の公式チャンネルを立ち上げ、最初のPR動画を公開。「電車もない」「スーパーもない」「ネイルサロンもない」が、「遮るものはない」し、「子供たちは屈託ない」と紹介。何もないことがかえって町の魅力になっていることをアピールした作品は、テレビやインターネット番組などさまざまな媒体で取り上げられた。

 今春には第2弾動画「訪日外国人観光客“0(ゼロ)”の町」を公開。各地に外国人観光客が訪れる中、「Kimino Townはゼロ」で、子供たちは英語の勉強に一生懸命だが「使う機会がない」などと紹介。英語の字幕つきのこの動画は外国人が日本語を学ぶ教育関連サイトでも紹介され、「行ってみたい」との声も挙がっているという。

 また、同県中部の海岸寄りに位置する印南町(いなみちょう)は、縄跳びのプロたちが町内の名所などでパフォーマンスを繰り広げ、町の魅力を紹介したPR動画「小さな町のショータイム」をユーチューブで公開した。

 パフォーマーとしてサーカス集団「シルク・ドゥ・ソレイユ」の公演に出演した経験もある縄跳びのプロ、粕尾将一さんと、2本の縄を使って跳ぶダブルダッチと呼ばれる技を披露する関西発のグループ「NEWTRAD」が出演。ナレーションなどはなく、海岸や夜の寺院で音楽に合わせてしなやかなパフォーマンスを繰り広げている。

 映像として価値がある作品をつくることで、移住先の候補として名乗りを上げたかったという。同町の担当者は「自治体のPR動画らしくはないが、町内の景色に自然と見入ってしまう作品。最後まで楽しく見てもらえたら」と長期的な効果に期待。ネット媒体を有効に使うことで、自治体もPRの仕方がどんどん変わってきている。

最終更新:8/11(金) 9:20
産経新聞