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(朝鮮日報日本語版) 【萬物相】朴槿恵前大統領裁判のテレビ中継

8/12(土) 6:03配信

朝鮮日報日本語版

 もう10年以上前のことだが、ある裁判を取材していた時のことだ。裁判官は少し退屈だったのだろう、たまに肩が揺れていかにも眠そうだった。しかし本人は何度か首を振って「居眠りが見られる」という危機的状況は乗り越えた。裁判官も裁判が長引けば眠くなるようだ。昔ある裁判官が真夏の法廷で眠気を振り払うため、椅子の下に氷を入れた洗面器を置き、足を漬けて裁判を行ったという逸話もある。その当時であれば裁判の様子がテレビで中継されることなど想像もつかなかったはずだ。

 先日、大法院(最高裁に相当)はある重要な裁判の一審と二審において、裁判長の裁量で宣告の様子をテレビ中継することを認めた。国民の知る権利を保障し、裁判に対する国民の理解を深めることが目的だ。裁判をテレビ中継することは以前から検討はされてきた。それが今年3月に憲法裁判所で大統領弾劾審判判決のテレビ中継が好評だったため、大法院もテレビ中継を認めたのだろう。中継が認められるのは宣告の時だけだが、それでも裁判所としては大きな変化だ。裁判における緊張も高まらざるを得ないだろう。

 大統領弾劾審判の判決が下される際、李貞美(イ・ジョンミ)裁判官は判決理由を正確に21分間かけて読み上げた。内容を正確に伝えると同時に、見る側の集中力を下げないため事前に決められた時間だった。李裁判官は判決を読み上げる際、時間を正確に合わせるため3回時計に目をやった。事前に練習したという話も伝えられている。国民から大きな注目が集まっていたこともあり、その緊張とストレスは非常に大きかっただろう。判決の日が近づくと、ある裁判官は周囲に「悪夢にうなされている」と打ち明けていたそうだ。

 次に判決がテレビ中継されるのはサムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長、その次が朴槿恵(パク・クンヘ)前大統領の裁判となりそうだ。今のところ李副会長への判決は8月、朴前大統領は10月となる可能性が高い。どちらの裁判も裁判長が感じるプレッシャーは弾劾裁判の時以上に大きいかもしれない。なぜなら朴前大統領の弾劾によって成立した現政権が裁判の様子に大きく注目しているからだ。そのため一時「決定的な証拠がない」との見方が広まると、大統領府は違法との批判を覚悟して大統領府に残っていたとされる文書を公表し、裁判に圧力を加えた。世論の目も先日の弾劾裁判の時とさほど大きく変わっていない。

 判決が気に入らなければ、判決を下した裁判官に対して個人攻撃が行われるのが今の世の中だ。ある市民は自分が応援する議員が選挙法違反で有罪判決を受けた際、ネットで大法官を「ねずみ野郎」と侮辱した。重要な裁判の宣告を前にした裁判官が冷静さを保つのは非常に難しいだろう。しかもテレビカメラの前に立つとなれば、そのプレッシャーは相当大きくなるはずだ。何人かの裁判官に「テレビ中継は判決内容に影響するか」と尋ねたところ、ある裁判官は「影響するかもしれない」と答え、別の裁判官は「判決の内容まで変わることはないだろう」と答えた。いずれにしても李副会長と朴前大統領の裁判において、裁判長はテレビカメラではなく法律と証拠のみに基づいて判決を下してほしい。