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<楊貴妃ライチ>「1粒1000円」ブランド化へ宮崎の挑戦

8/12(土) 9:30配信

毎日新聞

 宮崎県中部の町に、1粒1000円の新果実ブランド「楊貴妃ライチ」が誕生しました。ゴルフボールほどの大きさの透き通った果肉と、弾力ある食感。酸味に続く苦みと芳醇(ほうじゅん)な香りは複雑で、忘れられない深い味わいです。ライターの小高朋子さんが、県中部の児湯郡新富町(人口約1万7000人)を訪ね、楊貴妃ライチブランド化と地域活性化の取り組みを取材しました。【毎日新聞経済プレミア】

 ◇1粒50グラム以上、糖度15度以上の特別なライチ

 「楊貴妃ライチ」を売り出したのは、宮崎市の北方に位置する児湯郡新富町の「一般財団法人こゆ地域づくり推進機構」(通称・こゆ財団)。新富町の観光協会を解体し、職員と事業を引き継いで法人化した「地域商社」だ。今年4月に設立された。

 もともと、新富町はライチの産地だった。「楊貴妃ライチ」は新富町産ライチのうち、1粒50グラム以上、糖度15度以上のものに名づけられる新ブランドで、今年売り出し始めた。最大65グラムほどに育つ果肉は、輸入ライチの平均30グラム(1粒約150円)と比べるとかなり大きい。

 国内市場の国産ライチの割合はわずか1%ほど。ライチのほとんどは中国や台湾から輸入される。輸入ライチは凍結処理をされていることが多いため、未処理の国産生ライチはそれだけで希少価値がある。

 中でも楊貴妃ライチは、日当たりのよい木から1割ほどしかとれないため、さらに価値が高い。一つずつ包装し、箱詰めされる。専用ページからネット通販で購入できる。価格は1箱8個入りで1万円(送料込み)、1粒あたり1000円にもなるが、売れ行きを伸ばしている。

 ◇旧観光協会を引き継いだ地域商社がブランド化推進

 宮崎県のライチ生産量は鹿児島県の10トンに次ぐ年間4トン。新富町の6人の農家で宮崎県内の約7割を生産する。

 その一人、新富町の森哲也さん(46)は10年ほど前、宮崎産完熟マンゴー栽培のノウハウを取り入れ、ライチの栽培研究を始めた。元々は町特産の洋ランを生産していたが、国産ライチの可能性にかけて、洋ランのハウスのほとんどをライチの木に切り替えたという。

 生ライチの収穫期間は毎年5月下旬~7月上旬の約2カ月間。味も風味も格別なのだが、おいしさや価値の高さを長く消費者に伝えられずにいた。

 そこで、地域商社のこゆ財団が、新富町の生ライチを市場に広め、ブランド化を進めることになった。地域商社は「地域の優れた産品・サービスの販路を開拓し、従来以上の収益を引き出し、そこで得られた知見や収益を還元する」(内閣府ホームページより)のが事業目的だ。ライチはその目的にかなう、価値の高い産品だった。

 東京の飲食店で試食イベントを開催したり、こゆ財団のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で情報を発信したりした結果、口コミで認知度が高まり、東京の高級料理店で取り扱ってもらえるようになった。

 今年7月には、東京・銀座の「カフェコムサ銀座店」で、新富町産生ライチを盛りつけたケーキ(1カット1600円)を期間限定で販売した。流通の難しさから、関東地方以北で生ライチが出回る機会は少なかったが、高い品質とおいしさを首都圏の消費者に宣伝することができた。地道な活動の結果、2017年度の楊貴妃ライチの売り上げは前年度比で2倍以上になったという。

 こゆ財団は、楊貴妃ライチを生産者から全量買い取る方針を示している。買い取りを保証することで、生産者は生産量や品質向上に努力し、人を雇うこともできるようになる。

 財団は今後、楊貴妃ライチのブランド力を維持するため、品質管理を徹底して、各地の一流店に絞って出荷していく計画だ。大事に丁寧に「楊貴妃ライチ」ブランドを育てる方針という。

 ◇ふるさと納税促進と起業家育成のミッションも

 楊貴妃ライチを地域の一大ブランド果実に育てようとするこゆ財団には、もう一つ大切な事業がある。新富町へのふるさと納税を増やすことだ。ふるさと納税の返礼品を提供する事業者に品物の作り方を教えたり、返礼品となる農産物の加工品開発を手伝っている。

 返礼品の改善などで、17年7月時点の新富町へのふるさと納税額は前年度比8倍、1億5000万円に増えた。今年度は10億円の達成を目指している。さらに、こうして集まったふるさと納税のお金を、起業家育成支援などで地域に還元する社会事業も進めている。

 今年5月に開講した人財育成塾「児湯シータートル大学」には、定員20人を超えて30人以上の申し込みがあった。全6回の講座で、地域のヒトやモノなどの資源を生かしたビジネスを学ぶ。そして、8月開催の最終プレゼンで受講生がそれぞれのビジネスプランを発表する。ビジネス化の際はこゆ財団が支援するという。

 宮崎県はこれまで、マンゴー「太陽のタマゴ」や「みやざき地頭鶏(じとっこ)」など、数多くのブランド化に成功してきた。新富町とこゆ財団の挑戦から目が離せない。

最終更新:8/12(土) 9:30
毎日新聞