ここから本文です

<米国>新移民政策に反発 国家理念の転換懸念

8/12(土) 17:19配信

毎日新聞

 【ワシントン高本耕太】トランプ米大統領が打ち出した、永住権(グリーンカード)の年間発給数半減が柱の新移民政策に反発が出ている。この政策は、移民の低賃金労働者が自分たちの雇用や収入を奪っていると感じる支持層に訴えることを目指すが、「移民の活力」を成長の源泉としてきた国家理念の転換につながるとの懸念があるためだ。

 「この半世紀で最も重要な移民制度改革になる」。トランプ氏は2日、移民制度変更法案を提案した共和党議員らと共にホワイトハウスでそう強調した。

 法案は年間100万人超とされるグリーンカード発給数を今後10年以内に半数の50万人程度に削減するもの。発行にあたり、英語能力を含めた教育水準▽職業技能▽高収入を保障する勤務先があるか--など「能力」を基に考慮する選定基準「メリットベース」を採用する。また、難民受け入れ数も削減。移民数の少ない国からの抽選による受け入れ制度も中止する。

 トランプ政権は、移民の低賃金労働者が米労働者の雇用を奪ったり賃金水準を下げたりしたうえ、生活保護などに頼って納税者の負担にもなってきたと主張。トランプ氏は「この改革によって米国経済は競争力を取り戻す」と述べた。

 メリットベース導入はトランプ氏が大統領選で公約していた。医療保険制度改革(オバマケア)改廃や税制改革など主要公約政策が難航するなか、今回の移民規制強化は同氏にとり自らに投票した有権者をつなぎ留める意味合いもある。

 だが、移民受け入れ削減は「全体の労働人口縮小につながり経済成長は見込めない」(政治専門メディア・ポリティコ)と効果を疑問視する声がある。労働力として移民に頼る農業や観光が主要産業の州から選出された議員らは、与野党の別なく反対している。南部フロリダ州などでは新政策に反対するよう地元議員に呼びかける抗議行動も発生した。

 また、入国する人を「選別」する性格の強い今回の方針は、建国以来、広く移民を受け入れ、多様性や寛容の精神に価値を見いだしてきた米国社会の姿を変容させるものだとして、拒絶反応も出ている。保守系の中南米系米国人団体代表のアルフォンソ・アギラー氏はNBCテレビの取材に「非英語圏の貧しい中南米系移民を標的にした差別的な法案だ」と強く批判した。野党・民主党の全国委員会は声明で「政権は(努力により成功する)アメリカンドリームを否定しようとしている。多様性こそこの国力の源泉だ」と表明した。

 ◇トランプ政権による移民制度改革の骨子

 ・永住権(グリーンカード)発給を今後10年以内に半減

 ・永住権発給を英語能力などの教育水準や職業技能に応じて審査

 ・難民受け入れ数を削減

 ・移民数の少ない国からの抽選による受け入れ制度を中止

最終更新:8/12(土) 20:06
毎日新聞