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幻のリンゴ 「カルヴィル・ブラン」 菓子用に 青森に1本だけ 新たな用途開発栽培研究に着手 弘前大

8/12(土) 15:20配信

日本農業新聞

 青森県の弘前大学は、国内ではほとんど出回らない幻のリンゴ品種で、酸味や香りが菓子に向く「カルヴィル・ブラン」の栽培研究に乗り出した。フランス菓子の研究家が、同大農場に1本だけ残るこの品種に着目。独特の酸味や香りが菓子に最適で、パティシエ(菓子職人)からも高評価を得た。2017年度は加熱調理に向く収穫適期を見極め、将来は産地化を目指す。

パティシエ高評価

 「カルヴィル・ブラン」はフランスの品種。果皮が薄緑色で、果実の下部に凹凸が出て渋味や酸味、香りが強い。リンゴを主に生で食べる日本では、甘味がある品種が好まれてきた。青果用として好まれる性質を備えていなかったため、遺伝資源として1本だけ、かつて農林省試験場だった同大農学生命科学部付属藤崎農場に50年以上、残されていた。

 この品種に注目したのが、神戸市在住でフランス菓子文化研究家の三久保美加さんだ。19歳で渡仏して以来、約30年にわたってフランスの伝統菓子やその歴史、地方の伝統行事を研究。国内で手に入る調理用リンゴを探す中、16年に料理研究家やパティシエらが集まるリンゴ研究会に参加していた同農場の関係者から、この品種の存在を聞かされた。

 「菓子に使う品種として、昔の文献などで名前は知っていたが、フランスでも見掛けたことはなかった。国内にあるとは思わなかった」と三久保さんは振り返る。

 三久保さんは果実60キロを大学から提供してもらい、甘く煮た果肉にタルト生地をかぶせて焼き上げる、フランスの代表的な伝統菓子「タルトタタン」に調理。東京のパティシエや製菓学校講師ら10人にも分けると「日本で手に入るなら今後も欲しい」「もっと生産を増やしてほしい」と大反響だった。

 こうした評価を受け、同大は17年度、同品種の加熱調理に向く収穫適期の見極めの研究に着手。複数の時期に収穫し、最適な時期を探る。将来は、大学と連携協定を結ぶ同県板柳町などに産地化を呼び掛ける方針だ。

 同大の林田大志助教は「国内でこの品種を保有する研究機関や農家がいると聞いたことはない。料理用として、ここまで高く評価されていることを生かし、新しい用途のリンゴとして確立したい」と展望する。(鈴木琢真)

日本農業新聞

最終更新:8/12(土) 15:20
日本農業新聞