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タイの難病少年 奇跡呼ぶ歌声「自分が死ぬ前に」寄付2500万円

8/12(土) 11:40配信

西日本新聞

 借金を抱えた人が賞金をかけて歌を競うタイのテレビ番組に、13歳の少年が出演した。自らの脳腫瘍の治療費で、多額の債務を背負っている家族を「死ぬ前に助けたい」と意を決して応募した。結果は敗れたが、思わぬ展開が待っていた。

 少年はジェサダー・イェンアノンさん(13)。愛称「ビッグ君」。6月19日の放送でスポットライトを浴びて登場すると、ゆっくりした口調で切り出した。「僕は脳腫瘍を患っています」。会場が息をのんだ。

「一緒に死のう」

 脳に3センチの腫瘍が見つかったのは小学6年の時。悪性だった。以来、ビッグ君と家族は苦難の日々を送ってきた。父と離婚した母のブアパンさん(36)は、東北部チャイヤプーム県で家政婦として働きながら、1人で家計を支えた。

 手術や化学療法を受けたが、症状は改善しなかった。貧しい生活の中、治療費のために母と姉(15)が抱えた借金は9万5千バーツ(約31万3千円)。首都バンコクにある病院を訪れた際、将来を悲観した母から「一緒に死のう」と言われたこともあったという。

 「自分が死ぬ前に、家族の借金を返してあげたい」。ビッグ君が思い立ったのはテレビ番組への出演。2人の応募者が歌で競い、勝ち抜いた方がゲームで当たりを選ぶと借金と同額の賞金を獲得できる番組だ。

『1人で残るお姉ちゃんはどうなるの』

 ビッグ君は車いすで登場し、東北部で人気の歌謡曲を熱唱した。会場の多くの人は涙したが、結果は惜しくも敗退。しかし放送は反響を呼び、番組がビッグ君と家族を応援しようとフェイスブックで寄付を募ると、放送翌日には約755万バーツ(約2500万円)ものお金が集まった。

 「タイの人々に心から感謝します」と語ったビッグ君。今は故郷の病院で病魔と闘っている。24時間、病室で付き添う母はこう言った。「疲れ果てて『一緒に死のう』と言った時、息子から『1人で残るお姉ちゃんはどうなるの』と諭され、私は目が覚めました。ビッグは家族に生きる力と勇気を与えてくれた。本当に親孝行な息子です」【バンコク浜田耕治】

=2017/08/12付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞社

最終更新:8/12(土) 11:40
西日本新聞