ここから本文です

<医療>放置すると連鎖も「いつの間にか骨折」

8/13(日) 10:00配信

毎日新聞

 高齢化に伴い「いつの間にか骨折」の患者が増えているそうです。痛みを感じないため、患者の3分の2が未受診といわれています。放置すると怖い、じわじわと進むいつの間にか骨折について、鳥取大学医学部の萩野浩教授に聞きました。【医療プレミア編集部・吉永磨美】

 ◇「身長が縮む」「背中が曲がる」がサイン

 高齢化が進み、骨粗しょう症が原因で背骨が折れる「脊椎(せきつい)椎体骨折」の患者さんが増えています。骨がもろくなったことによりじわじわとつぶれるように症状が進行するため、骨折が進んでいる間も痛みを感じないことがあります。「いつの間にか骨折」と呼ばれており、注意が必要です。骨折は一度起きると連鎖しやすく、周囲の骨も折れやすくなります。骨折はじわじわと進むと痛みを感じないでいられます。痛みがないため骨折していることに気付かず、治療をせず放置してさらに骨折が進行していきます。

 では、痛みを感じない無自覚な患者さんは、どうやっていつの間にか骨折に気付くことができるのでしょうか。身長が縮んだ、背中が曲がった、わずかに腰が痛い--などの小さな兆候をきっかけに受診し、検査してみたところ、思いもかけず「骨折です」と診断されて驚いた、というケースもあります。身長が2cm以上縮んでいる場合、背骨が折れている可能性が高いです。一方、そんなサインも見受けられず、骨が折れてから数年たっても全く気付かないままでいる患者さんもいます。

 いつの間にか骨折は、骨がどのような状態になるのでしょうか。つぶれるのは、背骨、つまり脊椎を作る椎骨の椎体部分です。クシャッと、上下から圧迫されたようにつぶれます。椎体は、円柱のような形をしていて、椎骨の前側にあります。この円柱部分がつぶれますが、脊髄が通っている椎骨の中でも後ろ側の、背中側にでっぱっている部分は頑丈で、骨粗しょう症であってもつぶれるケースは珍しいです。脊椎椎体骨折は脊椎の中でも胸椎と腰椎に起きやすくなっています。

 ◇甲状腺異常、妊娠、胃切除でも骨粗しょう症に

 骨粗しょう症による脊椎椎体骨折の患者さんは、必ずしも高齢者だけに限りません。若くても、脳下垂体に腫瘍ができる「クッシング病」になり、ステロイドホルモンの過剰分泌の影響で骨粗しょう症になり、脊椎椎体骨折になることもあります。このほか、副甲状腺異常やバセドウ病、妊娠をきっかけにいずれも骨粗しょう症を引き起こし、脊椎椎体骨折につながることもあります。一見関係なさそうな胃がんの患者さんも要注意です。胃を切除すると胃酸の分泌がなくなり、腸内でのカルシウムの吸収が悪くなって骨粗しょう症になり、骨折しやすくなります。

 患者さんを男女別で見てみると、女性の患者数が圧倒的に多くなっています。特に女性は、閉経後の55歳あたりから増加傾向にあります。一方、男性患者で特徴的なのは、過剰な喫煙などが原因で肺機能が低下し、呼吸困難になる「慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)」の患者さんの存在です。ステロイド剤の使用、低体重、ビタミンDの欠乏や不足などの要因から、COPDになると骨粗しょう症のリスクが高まって脊椎椎体骨折を招きます。

 ◇20歳になるまでの食事や運動が大事

 いつの間にか骨折を招く骨粗しょう症は加齢によって進行しますが、予防することができます。そのためには、普段から食事に気をつけ、運動を行うことを心がけましょう。特に女性については、20歳になるまでの成長期にカルシウムをしっかり取って運動し、無理なダイエットはしないでください。そうした生活を続けることで、年齢を重ねても高い骨密度が維持できます。閉経後もカルシウムや、カルシウムの吸収を助けるビタミンDを十分に摂取し、適度に体を動かすようにしてください。骨粗しょう症予防のためになぜ、運動が有効なのかというと、運動をすることで骨に刺激が加わり、骨を作ろうとする働きを促進することができるからです。運動で骨が育ちやすくなり、減りにくい状態にすることが可能です。

最終更新:8/13(日) 10:00
毎日新聞