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04年聖光学院・本間裕之 背負った福島92校の思い…歴代甲子園キャップ“心のエース”

8/14(月) 11:04配信

スポーツ報知

◆加藤弘士(03、04年アマ野球担当。05、07、08、10年同キャップ)

 あの夏、あの剛腕を忘れない―。夏の甲子園では連日、熱闘が展開されています。炎天下、力投で大観衆を沸かせるピッチャーの姿は、いつまでも人々の記憶から離れないものです。今週の「週刊報知高校野球」はこれまでスポーツ報知の甲子園キャップを務め、現在も野球報道に携わるデスクが“心のエース”をそれぞれつづってみました。あなたにとって忘れられない背番号1は、誰ですか。

 「ふるさとの訛(なま)りなつかし停車場の人ごみの中にそを聴きにいく」。ご存じ石川啄木の歌である。私は茨城出身。18歳で上京するまでは相当なまっていた。だから「ひよっこ」のみね子ちゃんのセリフを耳にするたび胸が熱くなり、我が故郷を思うのである。

 茨城は関東だが、水郡線や常磐線で結ばれ、福島との結びつきが強い。だから聖地でこのエースの福島なまりを聞くたび、青春時代を回想したものだ。04年夏の甲子園で聖光学院を16強に導いた、本間裕之である。

 魂の剛腕だった。

 福島大会では計35回を投げ、49奪三振。直球は140キロ前後なのだが、リーチが長く、キレがあった。何より闘争心をムキ出しに打者に向かう姿が素敵だった。

 1回戦の鳥取商戦では11三振を奪い、4安打完封。同校に甲子園初白星をもたらした。2回戦の市和歌山商戦でも164球で4失点完投。試合後、私は本間の帽子のツバに油性ペンで文字が書かれていることに気づいた。よく見ると「他の92校の分も 命を決めて覚悟を決める」と書かれていた。真意を尋ねると、こう答えた。「福島大会で負けた92校の思いも背負って、投げようと思いまして」

 私は10代のころ、他人のために何かをしようと思ったことは、なかった。その一言にグッときた。福島勢の夏2勝は21年ぶり。熱き思いで重い扉をこじ開けた。

 3回戦の東海大甲府戦では9回、逆転サヨナラ3ランを被弾し、散った。実は腰痛とも闘った夏だった。「命を懸けて、魂を込めて投げられた」と泣いた。

 巨人や阪神が注目していたが、ドラフト指名はなく、卒業後はシダックスや全足利クラブでプレーした。聖光学院はその後、夏の甲子園で8強入り4度と全国区の強豪になった。好きな曲は「男の勲章」と語ってくれた背番号1。強打者相手にもツッパって、礎を築いた男の熱投を、忘れない。

最終更新:8/14(月) 11:04
スポーツ報知

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