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絶滅危機脱したネパールのトラ、人襲撃も増える

2017/8/13(日) 10:00配信

The Telegraph

【記者:Sarah Knapton】
 今から約10年前、絶滅の危機にあったトラを救おうと自然保護活動家らがネパールでの活動に乗り出した。この時、彼らの念頭にあったのはトラを人の手から守るということだった。

 しかし運命の皮肉か、トラの個体数は急増し、今では人がトラの脅威にさらされている。チトワン(Chitwan)とバルディア(Bardia)の国立公園近くでは近年、トラに襲われる人の数が増え、年に4~8人の死者が出ている。

 この状況を問題視し、英国のチェスター動物園(Chester Zoo)とオックスフォード大学(University of Oxford)の専門家らが、急増するトラと住民たちの「衝突」解消に向けて動き出した。

 大半の事故は、住民らが薪を集める目的で森の奥に入っていったり、農家が家畜を守るためにトラを追い払おうとしたりするときに起きている。中には、夜間の就寝中を襲われて命を落とした男性もいた。

 オックスフォード大学で種の保存を専門とするアレクサンドラ・ジマーマン(Alexandra Zimmerman)博士は、「トラの個体数増は大きな成功だが、新たなジレンマも生んだ」「トラと人とが遭遇するリスクが高まった。トラは家畜を殺すが、時に人も攻撃する」ことを指摘した。

 ジマーマン氏はまた「私たちのプロジェクトは、トラの生息地の近くに暮らすコミュニティーの安全確保を第一としている。彼らを助けることによって、森林に依存しない、持続可能な生活のための選択肢を増やすことができる」とも語った。

 プロジェクト「Living with Tigers(トラと共に生きる)」は、バルディア/チトワン国立公園の8つのコミュニティーに暮らす住民約1200人を対象に3年をかけて行われている。

 ある調査によると、地域住民の10人に8人が、調理用の薪や住宅用の建材、さらには家畜のえさを求めてトラの生息地に定期的に足を踏み入れているのが現状だという。また、村人のほとんどが家畜としてヤギやニワトリを飼育しており、これがトラの襲撃を受ける危険性をさらに高めている。

 専門家チームはこの状況への対処として、害獣防止柵やバイオガスプラントの設置を行い、住民らの安全確保に取り組んでいる。

 プロジェクト責任者のティラク・チャウダリ(%%Tilak Chaudhary%%)氏はAFPの取材に応じ、「バイオガスプラントの設置で、人々は危険を冒してまで森に立ち入る必要がなくなった。薪集めをしなくても、調理に必要なガスが全世帯に行き渡るようになった」と説明した。

 また「住民らはこれまで、家畜がトラやヒョウに襲われないよう、朝早くから対応に追われていた。しかし、新たに設置された害獣防止柵により、今では家畜の心配をせず、十分な睡眠時間を確保できるようになった」とも述べた。

 プロジェクトでは、これまでに58の害獣防止柵と36基のバイオガスプラントを設置・提供している。今後数年間で、さらにその数を増やす予定だ。【翻訳編集】AFPBB News


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最終更新:2017/8/13(日) 10:00
The Telegraph