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サッポロビール、ワイン用ブドウにAI栽培適用 デジタル技術で“天敵”克服

8/13(日) 8:30配信

日刊工業新聞電子版

■きっかけは東京ビッグサイトの見本市

 サッポロビールは、自社ブドウ栽培会社のブドウ農園「サッポロ安曇野池田ヴィンヤード」に、人工知能(AI)を利用した栽培手法を導入した。ブドウ農園内に設置したセンサーで気象や土壌関係の環境データをリアルタイムで収集、これをAIに分析させることで栽培技術の体系化と伝承、ブドウ品質の向上を目指す。

 欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)交渉でワイン関税撤廃が決まり、日本ワインの競争環境は厳しくなることが予想される。高齢農家の後継者問題解決にも“AI効果”が期待される。

 「AI導入は、東京ビッグサイトの見本市で展示を見たのがきっかけだった」。経営戦略部情報企画グループの山口晋也マネージャーは明かす。

 ワインブドウ栽培には気象対応や土壌管理はもちろん、病虫害対策や実をつける枝の剪定など、細かい作業が不可欠。ブドウ農園の面積は12ヘクタールあり、専門家がじっくり見て回るだけでも大変な作業だ。AI導入で効率化や低コスト化を図ろうと考えるのは自然な成り行きだった。

 センサーで測定するのは気温や日照時間の変化、湿度、降水量、土壌水分など。データを収集してAIで分析、生育状況やブドウ品質と合わせて最適な作業指示を現場にリアルタイムでフィードバックする。科学的な農業技術による栽培を実現する考えだ。

■AIで海外品種の栽培法を探る

 センサーの設置は5カ所。「栽培ブドウの品種と、畑内の場所による標高の違いを考慮して、この数に決めた」(山口マネージャー)という。設置した場所付近で栽培するブドウ品種はシャルドネやメルロー、シラー、ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・ノワールなど。

 日本固有品種の甲州などは含まれていない。「日本品種は国内気候に合わせて開発された品種だから、我々にも栽培ノウハウがある。海外の品種の栽培法を探るのが目的」(同)とする。

 温暖で乾燥気候が続くフランス南部やイタリア、チリなどに比べ、日本は“ワインブドウの天敵”である雨が多く、栽培は不向きとされてきた。しかし、さまざまな工夫でそれらを克服してきた。

 雨がかかるのを防ぐシートなどもあるが、雨雲が近づいて湿度が上がるだけでもワインブドウは品質に影響を受ける。枝の剪定や、たくさんある実の中で良い実だけを残す摘心作業も同様だ。これらを行う方法や実行タイミングが少しでもずれると、丹精込めて育てたブドウが台無しになってしまう。

 専門作業であり、畑を回るスタッフは5人程度。「10日で全部回るのを15日で回れるようにすれば、省人化効果はかなり大きくなる」(同)。省人化だけでなく、ブドウ生育状態に合わせた最適の施肥や水やり、農薬散布などの判断ができるため「農薬使用量も減らせる。コストダウンに加え、食の安心・安全や有機ワインの栽培にもプラスになる」(同)と見通す。

 ゆくゆくは他の自社畑や契約農家の畑、さらにはビール原料のホップや大麦の栽培にもAIを取り入れる考えだ。