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旧ポル・ポト時代の史実、アプリでつなぐ NPOが開発

8/14(月) 12:16配信

朝日新聞デジタル

 170万人が虐殺されたとされるカンボジアの旧ポル・ポト政権時代(1975~79年)の史実を伝えるアプリを現地NGOが開発した。体験者の証言映像やイラストをもりこみ、当時を知らない若者に歴史をつなぐ試みで、日本人も挑戦を支えている。

【写真】強制移住させられた人たちがどんな身なりでどんな仕事をしたのかを年齢別に説明するアプリの画面=ボパナ視聴覚リソースセンター提供

 手がけたのはプノンペンのNGO「ボパナ視聴覚リソースセンター」。2006年から、旧ポル・ポト政権時代以前のカンボジアの人々の日常生活や、舞踊、祭りなどの文化を伝える映像・写真を国内外で発掘し、無料公開してきた。同政権は都市部の知識層らを農村に移住させて強制労働をさせ、文化活動に携わる人たちを殺害したり、映像資料を埋めたりして破壊。こうした文化を後世に伝えようという思いがあった。

 だがカンボジアでは今でも、当時の話題をタブー視する人が多い。また人口の7割を30歳以下が占めるが、同センターによると、当時の史実が十分書かれていない教科書もあり、教え方がわからない教師も多いなど、若い世代に史実が伝わっていない現状がある。2千人の高校生に「クメール・ルージュ(ポル・ポト派)を知っているか」と尋ねた最近の調査では、大半が知らないとの回答だった。同センターは、より実用的な教育ツールとして、若者に普及する携帯機器に無料でダウンロードできるアプリを思いついた。

 アプリは8章からなり、「いかに思想は広まったか」「家族の解体」など39のテーマで歴史家や政府関係者らが監修した史実を、英語とクメール語で紹介。体験者の証言映像のほか、人形を使った証言の再現映像も公開している。

 人形は強制移住からの生還者で同センター共同創設者の映画監督リティ・パンさんが国際的な評価を得た映画「消えた画 クメール・ルージュの真実」で用いた手法で、カンボジアの土で作られている。亡くなった人は土にかえると信じられているためだ。俳優が演じるよりも、不特定多数の経験が伝わりやすいという。

 同センターでは日本人職員の荒井和美さん(39)が広報や資金協力の要請に奔走してきた。「何が起きたかを若者が知らないまま国が再建されることのないよう、勇気を持って歴史を直視しようという問いかけになれば。日本の人にも利用してほしい」という。日本語訳も検討中だ。アプリは「Khmer Rouge History」で検索。アンドロイド版はすでにダウンロード可能、iOS版も近く公開される。(プノンペン=鈴木暁子)

朝日新聞社