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【歴代担当記者が見た巨人・阿部】マスク越しに表情豊かな捕手

8/14(月) 10:10配信

スポニチアネックス

 ◇セ・リーグ 巨人1―4広島(2017年8月13日 マツダ)

 記事を初めて書いたのは00年だった。中大4年だった阿部をアマチュア野球担当として取材。4月28日の東都大学野球リーグ戦の青学大戦で、2部時代も含めて通算16本目の本塁打を放った試合だった。その後、巨人担当として通算7年、取材した。今季は担当を離れたが、2000安打達成、本当におめでとうございます。

 たぐいまれな打撃技術や、巨人で長年、正捕手を務めての2000安打到達の偉業のすごさは、多くの記事で触れられるだろう。初めて取材してから18年がたったが、特にプロ野球担当になってからは、記事にならないような、いろいろな野球の話を、面倒がらずに答えてくれる選手だという思いがある。

 捕手だったころ、阿部は実にマスク越しに表情豊かな選手だった。投手へや、味方ベンチへの視線、表情で何を考えてどうしたか、というのを試合後や、翌日に質問するのが楽しみだった。ある試合で、ピンチの場面で投手にサインを出していた阿部が、急に吹き出したことがあった。コンビを組んだ若い投手が一度、プレートを外して阿部に対してすまなそうに軽く頭を下げて、苦笑いしていた。バッテリー間には「首を振れ」のサインがある。打者に配球を読まれないようにするためのサインだが、その若い投手は阿部の「首を振れ」にうなずいたのだ。翌日、その真偽を聞くと「そうなんですよ。笑っちゃいけないけど、ありえないでしょ」と笑う。ある試合では味方ベンチからの守備のサインをみながらニヤニヤ。聞けば「コーチの指がサインの途中でダフっちゃって、二度見しちゃったんですよ」と大笑いしながら、顔のパーツを指さして出すサインで、コーチの指の動きがおかしかったことを教えてくれたりした。

 喜怒哀楽のはっきりしている阿部だが、2000安打を放った直後、塁上で笑顔を浮かべたのはほんの一瞬だった。リードを許していた9回の最後の攻撃。記念の一打だったが、きっと「勝ち試合で」という思いが強かったのだろう。

 初めて取材してから18年目と書いたが、つい先日、阿部と話していて、もう少し前にすれ違っていたと言われた。96年。阿部が安田学園の3年生の夏に、早大野球部の練習会に参加したのだという。「春川さん、その時いたはずですよ」。当時、記者は大学3年で、学生コーチとしてその会場に確かにいた。

 もし、阿部が早大に入学していたら4年生と1年生。今ごろ、偉そうに“おめでとう”とか言っていたのだろうか。でも、もしそうだったら気を遣って、面白い話はしてくれなかったのかなと思っている。(04~06、11~13、16年巨人担当・春川 英樹)

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