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増える高齢労働者と企業の苦悩 現役世代の意欲低下危ぐ

8/14(月) 8:34配信

福井新聞ONLINE

 年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられ、企業は社員を65歳まで雇用継続する義務を負った。70~80代の高齢者も、元気なうちは収入または生きがいを求めて働き続ける。高齢者は政府が推進する「1億総活躍社会」の一員として、少子化による労働力不足を補う戦力と期待されている。その半面、増え続ける高齢労働者の対応に頭を悩ませる企業もある。

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 清川メッキ工業(福井市)が3年前に始めたハーブ製造販売会社。その植物工場で働く8人のうち6人が60歳以上で、大半は再雇用。牧野キミ江さん(71)は「仕事が元気と健康の源」と週5日、1日4時間程度、同僚とハーブのパック詰め作業に励む。

 楽しそうに働く牧野さんに、清川卓二専務は「良い人生の見本」と目を細める。少子化が進む中で「高齢者の働く場を用意するのは企業の務め」と強調し、牧野さんの姿に「若い社員が『自分も年を取ってから、こうやって働ける』という希望を持つことができる」と話す。

 2015年国勢調査では、福井県の人口78万6740人のうち3割に迫る28・6%が65歳以上の高齢者となった。高齢化率は前回10年調査より3・4ポイント上昇した。高齢化率は全国的にも高まっている。年金や健康保険の支払い、税収確保といった国の財政を踏まえ、関係者の多くは「そう遠くない時期に企業は70歳まで継続雇用しなければならなくなるだろう」とみている。

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 日本老年学会は今年1月、医療の進歩や生活環境の改善により、高齢者の定義を今の65歳以上から「75歳以上」に見直す提言を発表。65~74歳は「社会の支え手」として仕事またはボランティアに参加しながら、病気予防に取り組む世代と位置づけた。

 県内で元気な高齢者は増えており、福井市シルバー人材センターの会員の中には庭木の剪定(せんてい)や着物の着付けを請け負う80代もいる。町井俊也事務局長によれば「60代会員は生きがいより報酬、70~80代は社会参加や生活の充実を仕事に求める傾向が強い」。

 企業の再雇用義務化で、同センター会員の64歳以下の比率は低下。07年度は17・8%だったのが、16年度は6・2%になった。町井事務局長は「70歳以降への対応の重要度が増す」と今後を見通す。

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 増え続ける再雇用者への対応も、企業にとっては大きな課題。ある県内企業の人事担当者は「若手に経験させたいと思う職務の空きが少なくなりがち」と、現役世代のモチベーション低下を危ぐする。坂井市の特定社会保険労務士宮前清美さんは「再雇用者が定年前と同じ業務をし、同じ責任を負うのであれば、同一労働同一賃金の問題も生じてくる」と指摘し、企業の人件費増加に対して国の支援の充実を訴える。

 高齢者と一口に言っても高い技術やノウハウを持つ人もいれば、体力の衰えなどから責任の軽い職務を希望する人もいる。宮前さんは「働き方は生き方」とし、企業には「多様なニーズを踏まえた誰もが居心地の良い職場づくり」、現役世代には「AI(人工知能)普及も見据えた将来の人生設計」を考えておく必要があるとしている。