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「愛した音楽で見送りたい」スナック店主しのび精霊船 追悼ライブも

8/14(月) 10:00配信

長崎新聞

 マスターが愛した音楽で見送ろう-。洋楽好きが集う長崎市船大工町の「スナックぴえろ」店主の植木正敏さんが5月、膵臓(すいぞう)がんのため68歳で亡くなった。FM長崎の深夜番組のDJ「スマッシュ・ウエキ」の名でも知られた。常連客や音楽仲間たちが同市で13日から2日間の追悼ライブを開き、15日に精霊船を流す。

 同市出身の植木さんは高校卒業後、市内の造船所や仲間と立ち上げた設計会社で、20年ほど設計の仕事に従事。1986年、38歳で会社を辞めスナックの経営を始めた。

 「最初は普通の店だったのに、いつの間にか...」。妻史子さん(64)は当時の記憶をたどる。学生時代から洋楽にのめり込んでいた植木さんは、店を始めてしばらくすると、洋楽カラオケのレーザーディスクやCDを集め始めた。

 ロックやブルース、フォーク、ヘビメタ-。ジャンルや年代を問わない品ぞろえで、希少な音源は海外から取り寄せた。コレクションは数万曲に上り、それらに引き寄せられるように常連客が付いた。「あの曲はさすがにないやろ?」。そんなリクエストに、植木さんはどこか得意げな顔で曲を引っ張り出してきた。

 洋楽への愛は、電波にも乗せた。今年20周年を迎えたFM長崎の番組「夜はメキメキ!」(毎週月曜午前1時~2時)では、「ピエール・ヤンカー」こと山川晃さん(61)とのコンビでさまざまな洋楽を紹介。これまで流した曲は1万5千を超えた。

 番組開始当初からの担当ディレクター、水町泰三さん(61)は「圧倒的な知識量で、楽しい勉強のような番組だった」と話す。番組は今後も存続。「マスターと始めて、続けてきた。思いを引き継ぎ、どこかにマスターを感じられるような番組にしたい」

 植木さんは昨年11月末、膵臓にステージ4のがんが見つかり入院。それでも、なじみ客や協賛する飲食店を巻き込んで20年以上続けた年末のパーティーの準備のため、病床で電話をかけ続けた。

 「とにかく人の喜ぶことに一生懸命。いろいろな人をつなぎ、巻き込んで、人の輪をつくっていた」。長女の高橋史織さん(37)は、そう父をしのぶ。外泊許可を取って駆け付けたパーティー会場で、植木さんは楽しげな客を見て満足そうな笑顔を浮かべていた。その5カ月後、静かに息を引き取った。

 13日の追悼ライブ会場。全長10メートルの精霊船が置かれ、その場で最後の仕上げが施されていた。

 出演者は2日間で約30組。「本当にありがとう。あなたのような人は他にはいません」。司会を務めた山川さんはライブの合間、静かに感謝の念を語った。植木さんを慕い、人柄に引き寄せられた人たちの奏でる音楽が澄んだ空に響いた。

 追悼ライブは長崎市出島町の出島ワーフ横の三角広場で。14日は午後3時~同8時15分。雨天時は中止もある。

最終更新:8/14(月) 10:32
長崎新聞