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九州自治体の87%が調査未了「盛土造成地」 阪神・中越地震でも大きな被害歴

8/14(月) 9:23配信

西日本新聞

九州の遅れが特に目立つ

 地震などにより過去に地滑り被害も出ている「大規模盛土(もりど)造成地」について、国が求めている造成地の有無を把握する調査を九州7県の233市町村のうち87%の202市町村が終えていないことが分かった。全国では62%が終えており、九州の遅れが特に目立つ。昨年4月の熊本地震で被害が出ており、余震も続く。専門家は「台風や豪雨でも盛土が流れ出る可能性がある」として早急な実態把握を促している。

 熊本地震では、熊本市など6市町村の45地区で、大規模盛土造成地にある家屋が傾いたり、盛土が擁壁を破って流れ出し、民家を直撃したりする被害が確認された。

高度経済成長期の宅地開発 都市周辺部に多く分布

 大規模盛土造成地は、高度経済成長期以降に急速に宅地開発が進んだ結果、都市周辺部に多く分布するとみられる。九州大工学研究院の笠間清伸准教授(地盤学)によると、盛土は適切に締め固めると十分な強度があるが、不十分な宅地などでは地震や豪雨で被害が出る可能性がある。

 大規模盛土造成地の有無調査は4月現在、静岡県や兵庫県など10都府県が全自治体で完了して結果を公表済み。調査の実施や進捗(しんちょく)具合には、大規模地震に対する防災意識の違いなどが影響しているとみられ、九州は36%の83市町村で調査自体に未着手。調査が完了したのは宮崎と長崎両県の各15自治体と大分市にとどまる。長崎県などによると、判明分だけでも計440カ所を確認し「現時点で特に危険と思われる状況はない」という。

 全20市町で調査に着手していない佐賀県は「平地が多い地形でもあり進んでいなかったが、熊本地震を受けて前向きに検討している」。福岡県は本年度から本格調査を開始。「2020年度までに調査を終えたい」とする。

阪神大震災、中越地震で大きな被害歴

 国土交通省によると、大規模盛土造成地の被害は過去の大きな地震でたびたび発生。1995年の阪神大震災では、兵庫県西宮市仁川百合野町で幅100メートル、長さ100メートルにわたり地滑りが起こり、34人が死亡。同様に被害を出した2004年の新潟県中越地震を機に、国は06年から大規模盛土造成地の把握やマップでの公表、対策工事の推進などを自治体に求めてきた。

 笠間准教授は「適切に造成された盛土は強い一方で緩い状態だと被害が懸念される。危険性のある場所を認識し、対策を進めるためにも、自治体は早急に調査を進めてほしい」と話している。

【ワード解説】大規模盛土造成地とは

 大規模盛土造成地とは、谷や沢のくぼ地や傾斜地に土砂を盛り固めた大規模な造成宅地で「谷埋め型」と「腹付け型」がある。谷埋め型は盛土面積が3千平方メートル以上、腹付け型は元々の地盤の傾斜が20度以上などの要件がある。1995年の阪神大震災などでは盛土内部や、盛土と元々の地盤の境界面で地滑りが起きた。2006年、国は被害防止に向け、宅地造成等規制法を改正。盛土の締め固めや盛土内の地下水排水を十分に実施するよう技術的基準を強化している。

=2017/08/14付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞社

最終更新:8/14(月) 10:05
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