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[寄稿]同盟に自制を求める勇気

8/14(月) 11:53配信

ハンギョレ新聞

米国政府に対し、平和的解決を約束しておいて、なぜ軍事的手段を言及するのかと問いたださなければならない。いくら弱小国同盟といえども、私たちの生命がかかった問題に、そんなふうに食言をしてもいいのかと厳しく問いただし、また必要な行動も取らなければならない。なのに、政府は米国との「緊密な協力」という言葉だけを唱えている。

 北朝鮮核問題が「挑発と制裁」の悪循環を繰り返しながら、最悪に突き進む状況で、文在寅(ムン・ジェイン)政権が発足した。新政権が発足した直後、筆者は様々な場で政権交代の意味を問う質問に北朝鮮の核問題という“ゲーム”の様相が変わる可能性が生まれたと答えた。

 北朝鮮の核問題の展開を振り返ってみると、米朝対決の中で、韓国が問題の解決に向けて主導的にアイデアを出すと共に、是非を問いながら東奔西走し、中国が仲裁者の役割を果たした時に、状況に進展が見られた。一方、北朝鮮の核問題をめぐり状況が悪化の傾向を見せたのは、おおむね韓米が北朝鮮と一方的な対決の軸を形成し、中国が一人で仲裁者の役割を任された時だった。この場合は促進者としての韓国の役割が姿を消し、自動的に仲裁者としての中国の役割も機能不全に陥った。このような経験からして、政権交代が促進者としての韓国の役割を復活させ、北朝鮮の核問題を進展させるだろうと判断したのだ。ただし、政権交代そのものが状況を変化させるわけではなく、「チャンスをつかみ、情勢を変えるのは文在寅政権の能力にかかっている」と、万が一に備えて言い訳をする余地を残したが、そのようなことは想像もしたくなかった。

 事実、激しい理念攻勢が横行した大統領選挙過程でも固く守ってきた公約だったため、文在寅政権が北朝鮮の核問題の平和的解決に向けて創意的代案を持って積極的な役割を果たすことは、政権交代を熱望した人たちの共通した願いだった。そのような期待を知っていたからこそ、文大統領は韓米首脳会談後の帰国会見で、「韓米両首脳は北朝鮮の核問題を平和的に解決することで合意し、朝鮮半島の問題を私たち(韓国)が対話を通じて主導していくことに対する米国の支持を確保した」と明らかにしたのだ。しかし、挑戦と実践の時期が到来するにつれ、人々の信頼が揺らぎ、新政府の外交の動きについて憂慮する雰囲気が内外で広がっている。

 国連が対北朝鮮制裁決議第2371号を採択したてから、米朝間の言葉の攻防が相乗作用を起こし、危機が高まってきたのは周知の事実だ。これまで私たちは“言葉の爆弾”を弱者の虚勢や豪気だと理解してきたし、だからこそ、それは北朝鮮の専売特許だと思っていた。しかし、意外にも世界最強の米国大統領の耐えられないほどの軽い口から、絶えることなく飛び出す軍事力動員と北朝鮮の滅亡を取り上げるレトリックが北朝鮮のさらに激しいレトリックとぶつかり合い、最悪の状況に突き進んでいる。すでに双方は言葉で戦争を繰り広げている。そのため、このまま本当に戦争が起きた場合、その引き金は愚かにも幼稚な“言葉の爆弾”になるかもしれないという懸念が高まっている。

 今の危機はいつ爆発するか分からないまま膨らんでいくゴム風船のようだ。金正恩(キム・ジョンウン)とトランプが2つの空気入れのある一つの風船をめぐり、相手に止めることを強要しながら、“チキンゲーム”のように両方から空気を入れ続けている格好だ。ところが、破局的事態が発生すれば、最大の被害者になるはずの韓国政府からは、意味のある声が何も聞こえてこない。

 政府が膨らんでいく風船の空気を抜くことに積極的に取り組まねばならないのは、当たり前のことだ。戦争は朝鮮半島の人々に災害的な惨禍をもたらすため、その可能性に繋がるいかなる言行も容認してはならない。政府は北朝鮮の持続的な挑発に対し、厳しく警告する一方、米国に対しても強く自制を要求すべきだ。特に、米国政府に平和的解決を約束しておいて、なぜ軍事的手段を言及するのかと問いたださなければならない。いくら弱小国同盟といえども、私たちの生命がかかった問題に、そんなふうに食言をしてもいいのかと厳しく問いただし、また必要な行動も取らなければならない。なのに、政府は米国との「緊密な協力」という言葉だけを唱えている。本当に、韓米協力のほかに言うことがないと判断したならば、筆者もこれ以上何も言えない。

 正直に言って、私たちの北朝鮮に対する影響力は極めて限られたものたが、対米影響力は違う。米国は同盟である韓国の要求を不愉快に思うかもしれないが、そう簡単には無視できない。さらに、今は米国の政界でもトランプの発言に憂慮しており、国連や中国なども乗り出している。にもかかわらず、私たちの暮らしに致命的な影響を及ぼす同盟指導部の非理性的発言を制止するため、苦言を呈するのを躊躇するなら、あまりにも恥ずかしいことではなかろうか。大統領が直接言うのが困難なら、当局者が出てきて、明確に米国の自制を促し、状況の安定を図るべきだ。それが朝鮮半島の平和を主導はできなくても、朝鮮半島の主人である大韓民国政府が果たすべき最小限の義務だと思う。

イ・ジョンソク元統一部長官・世宗研究所首席研究委員(お問い合わせjapan@hani.co.kr)

最終更新:8/14(月) 11:53
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