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なぜ、テレビはネットのデマに踊らされるのか 番組制作者らが語る5つの危機

2017/8/20(日) 11:01配信

BuzzFeed Japan

5. 売れっ子ディレクターの争奪戦

人手不足はADだけではない。フリーのディレクターにも起こっている。優秀な作家や演出家、ディレクターは人手不足の業界で重宝されている。

それが最近のミスの要因にもなっているのではないか、という指摘もある。どういうことか。

テレビ局の番組制作は、制作会社から派遣されるディレクターやフリーのディレクターなど外部スタッフに依存している。

人手不足だから外部スタッフに頼る。でも、予算が不足しているし、相手は売れっ子だから、常駐というわけにもいかない。

結果、テレビ局は、外部スタッフのディレクターに番組放送前日と当日の週2日の出勤で、月30万円などと提示する。

いくつか番組を掛け持ちすれば月100万ほどの収入になる。効率よく仕事をこなす優秀なディレクターは一つの番組に常駐するよりも、掛け持ちをした方が多くの収入を得られるのだ。

フリーのディレクターはこう証言する。

「それでなにが起こるかというと、一つひとつの仕事に責任を持たず、淡白にやる。かけていられる時間が少ないからね。だから、ワイドナショーみたいなことは十分起こり得ます。ADに『それやっといて』『確認しといて』『おもしろいの見つけておいて。見つかったら連絡ちょうだい』みたいな丸投げ仕事です」

この過程でネットリテラシーが低く、危機管理ができないスタッフが関わると、曖昧で危険な情報が混じり、そのまま世に出てしまう。ディレクターは番組を掛け持ちしているため、限られた時間でチェックするしかない。

「朝も昼も情報番組をやっているご時世で、どこからディレクターをかき集めてくるのかな、と。そこまで世の中にディレクターはいないですからね」

「改善しないんじゃないですか」

ミスをした番組は謝罪し、再発防止を誓う。だが、ことはそう簡単ではない。ここまで見てきたように、テレビ局、制作会社全体の構造的な問題だからだ。

今から急いで人材を増やし、育てていこうにも時間がかかる。しかも、そういった人材育成を強化しようという動きは見えない。

前出のフリーのディレクターはBuzzFeed Newsの取材にこう言い切った。

「改善しないんじゃないですか。最近起こっているような事例は今後も出続けると思いますよ」

過去にテレビ制作会社に勤務していた女性はこう言う。

「テレビ番組制作の現場は働きやすい職場環境とは程遠いものでした。優秀な女性スタッフも、将来の出産や子育てを考えた時に現場を退く人がほとんどです。業界の改善には、制作会社やフリーランスのスタッフも含め、長時間労働を強いられる職場環境の改善が必須だと思います」

しかし、こうも述べる。

「ただ、私は制作の現場を離れた今でもテレビが好きです。インターネットがこれだけ発達しても、やはりテレビでしかできないことがあります。テレビ番組の制作は大変ではありましたが、大勢のチームで一つの番組を作り上げる達成感は、ほかでは経験できないものでした。劣悪な職場環境というイメージばかりが先行していますが、再びテレビ業界が若い世代にとっても憧れの職業になる日が来ることを願っています」

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最終更新:2017/8/20(日) 15:49
BuzzFeed Japan

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