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スペイン人ライターのF1便り:タイトル争いの方針を決めたフェラーリと、その逆をいくメルセデス

8/21(月) 12:10配信

オートスポーツweb

 スペイン在住のフリーライター、アレックス・ガルシアのモータースポーツコラム。2017年F1シーズンのサマーブレイク前までを振り返りつつ、タイトル争いが佳境に入る後半戦を予想する。

F1第11戦ハンガリーGPでポイントを獲得したフェルナンド・アロンソとストフェル・バンドーン

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 新たなマシンのルックスは素晴らしく、これまでにない速さを見せている。そしてフェラーリ、メルセデスという2チーム間の対決もまた、以前の伝説的な戦いと同じく本物のバトルといった様相だ。 

 2017年はこれまでのところ、面白いシーズンとなっている。11戦が終わり、残るは9戦。多くの出来事があったが、きっとまだいろいろなことが起こるのだろう。今回はその両方に焦点を当ててみよう。

 2017年シーズンの筋書きのなかで最も重要なポイントは、メルセデスの圧倒的な優勢の時代が終わったことだ。まだ9戦が残っており、チームがコンストラクターズとドライバーズの両選手権を制覇する可能性はある。けれども彼らは、2014年から2016年シーズンにかけて見せたような、圧倒的な強さをもって勝利するわけではない。

 過去3年間、私たちは圧倒的に強いチームと、何台かのマシンが“メルセデスの代役”として優勝する場面を見てきた(たとえば2014年と2016年はレッドブル、2015年はフェラーリがそうだった)。2017年シーズン、私たちは大きな変化を目の当たりにしている。メルセデスは前半11戦中6戦と、これまでに戦ったレースの“半分しか”勝てていない。

 フェラーリはより価値ある4勝をあげており、一方でレッドブルは1勝にとどまっている。レッドブルはタイトル争いには絡んでいないとはいえ、3番目に強いチームが勝てるということは、F1がわずかながらも極端な状況ではなくなってきていることの証拠である。

 メルセデスはこれまでのところ最も競争力の高いマシンを有しており、シーズン後半も優勝候補であり続けるだろう。オーストラリア、バーレーンではフェラーリが優勝したが、サーキットの特性やチームの戦略、ドライバーによるレースの組み立てが物をいう状況だった。またモナコ、ハンガリーについては単純に、『SF70H』の性能に適したサーキットだった。

 フェラーリのマシンは気温が高く、曲がりくねったコースを好むため、シンガポールは3度目の急上昇をもたらしてくれるだろう。そして暑ければの話だが、マレーシアでもその勢いを維持できるはずだ。それ以外の残るレースはメルセデスにより適しているため、彼らが間違いなく優勝候補となるだろう。

 しかし今シーズンは、レースに対する考え方がマシンと同じくらい重要だ。メルセデスは両ドライバー同士の戦いを許している(互いにポイントを奪い合うこともある)。フェラーリの場合は、エースドライバーのチャンスを最大限に生かすことに、すべてを注ぎ込んでいる。

 どちらの考え方も理解できるし、公平なものだ。ではドライバーという、今季のもうひとつの重要な話題に移ろう。

 ルイス・ハミルトンとセバスチャン・ベッテルは、両者とも他のどのドライバーよりも優れている。バルテリ・ボッタスはチームメイトを打ち負かすこともあるが、状況があるべき方向へと進むかぎり、タイトル争いはふたりの複数回チャンピオン経験者の間で行われるはずだ。

 今季のこれまでを考えると、ベッテルが期待はずれなパフォーマンスをすることは想像し難い。自身のドライビングに失望させられるようなことにはならないし、チームメイトはしっかりと職務をまっとうしてくれる。彼はメルセデスを倒そうとすることよりも、メルセデスがどの位置にいるかに、より注意を払っているのだ。

 ただしバクーでの一件のように感情に振り回されていては、ベッテルはタイトルを失うことになりかねない。実際、あの行為がなければ、優勝回数は11戦中5回になっていたはずなのに……。

 同じようにハミルトンも、自分自身と戦わなくてはならなくなる。彼はアグレッシブで速く、自信にあふれている。けれどもそれはときに惨事を招く。プレッシャーがかかっていると、ずいぶんとミスを犯しやくすなるのだ。

 しかしF1はトップで戦う2名のためにあるのではない。ベッテルとハミルトンがシーズンの大半を互角に争っているとなれば、それぞれのチームメイトもまた同じように重要だ。すでに8月を迎え、フェラーリはチャンピオン獲得を見据えた場合にどちらのドライバーをサポートするかを決めているが、メルセデスはそうではない。

 ハンガリーGPではハミルトンがボッタスに順位を返した。その高潔な振る舞いは、どちらのドライバーがチームにとっての有力候補になるのかが決まっていないことを示している。これは驚くべき事態だ。シーズン開幕前、ボッタスがこれほどまでに拮抗すると誰が予想していただろうか?

 しかし両方のドライバーにチャンスを与え続けると、フェラーリと違ってチャンスは2倍になるが、ふたりは互いにポイントを奪い合う。フェラーリは明らかに、ライコネンにナンバー2ドライバーというステータスを与えている。このためにライコネンは今シーズン、モナコGPとハンガリーGPの2戦で勝利を落としたのだ。

 しかしベッテルのサポート役をこなしてきたことで、彼は2018年の新たな契約も手に入れることができそうだ。“アイスマン”は、F1では状況が変わることを知っている。彼は2007年のタイトルを獲得したが、2008年はカーナンバー1のマシンに乗りながらも、フェリペ・マッサのタイトル獲得の手助けをするという結果になった。

 同じことが来季にも起こり得るということを、彼はわかっている。フェラーリはおそらくメルセデスよりも無駄なくポイントを獲得してくるだろうし、きっと面白い展開になるだろう。結局のところ、どちらのチームもそれぞれにとって最良のアプローチをとることになるのだ。

 では、それ以外のチームはどうだろう。レッドブルはいまもコンストラクターズ選手権3位をキープしており、ハンガリーGPではいざこざがあったものの、両ドライバーは良い関係を築いている。ダニエル・リカルドはタイトル争いには絡んでいないものの、バクーで一勝をあげた。一方でマックス・フェルスタッペンはルノーエンジンの信頼性不足に、より悩まされている。

 しかしレッドブルはマシン開発がうまいことで有名だし、シーズン後半は大いに競争力を発揮する傾向にある。ただし、メルセデスやフェラーリとの差を詰めてはくるかもしれないが、それでもトップ2チームよりは下位になるだろうというのが私個人の予想だ。

 フォース・インディアは現在コンストラクターズ選手権4位で、トップ3チーム以下のなかでは首位だ。この成績はドライバーに助けられてのものだが、レッドブルはフォース・インディアよりも上位となる。

 セルジオ・ペレスは資金と成績をもたらすドライバーとして評判が良く、エステバン・オコンも、そのスピードで多くの人々を驚かせている。けれどもオコンはF3時代にマックス・フェルスタッペンのライバルであり、実のところ打ち負かしてもいるのだから、別段驚くようなことではない。ドライバー同士の緊張感という点でも、彼らはシーズン後半もサプライズを見せてくれるはずだ。

 今季、F1の“中間層”はこれまでになく幅広い。ウイリアムズはルーキードライバーに手を焼き、ベテランドライバーはパフォーマンスがふるわない。しかしカルロス・サインツJr.がトロロッソに何をもたらしているのかを観察するほうが、もっと興味深い。

 彼はほとんど単独で、チーム史上最高のシーズンを築き上げている。もしもウイリアムズをも上回ることができたとしたら、まるでおとぎ話だ。ルノーやハースのドライバーとは逆だと言える。彼らはときに光り輝くパフォーマンスを発揮することがあるものの、精彩を欠いたシーズンを過ごしている。

 ルノーがワークスチームとしての立場を有効活用したいと考えるならば、改善が必要だ。ハースはその未熟さを、自分たち自身で乗り越えなければならない。ニコ・ヒュルケンベルグとロマン・グロージャンには、多くのこなすべき仕事が待ち構えている。彼らのチームメイトは、仕事をシェアできる相手ではないのだから。

 さて、グリッドのもっと後方はどうなっているだろうか? 予想されていたとはいえ、ハンガリーGPではランキングに重要な変化があった。マクラーレンの2台がともにポイントを獲得したことで、ザウバーが選手権最下位となった。これはホンダの努力とマクラーレンのハードワークを証明する結果であるが、マクラーレンとホンダの同盟にとって難しい状況は続くだろう。

 フェルナンド・アロンソとストフェル・バンドーンの両名は、ただ単純に良いバトルをして良い結果を出すに足るマシンを手にしていない。そして毎年のことながら、先のことに焦点が当たる。注目されるのは常に将来であり、現在ではない。2017年に変化が起きるのは難しいだろうが、2018年なら……?

 残るレースに関してもうひとつ。それほど遠くはない昔、モンツァでのイタリアGPには少し気持ちに訴えかけるものがあった。フェラーリのホームレースを終えるとF1は最後の数戦にさしかかり、シーズンの最後のひと押しという時期になる。レースの残りは2戦か3戦、もしくはもっと少なかった。

 最近ではモンツァの後にもまだ、シーズンの3分の1(7戦)が残っている。しかしチームもファンも、この後の数戦は長く続くレースの連続というよりも、いまだにタイトルを決定づける最終盤の戦いと見ているようだ。私はこれを“モンツァ効果”と呼んでいる。あなたも、そんな気分になったことがないだろうか?

[オートスポーツweb ]

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