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予算確保にも奔走 “歌手で社長”西川貴教が語るビジネス論

8/22(火) 9:26配信

日刊ゲンダイDIGITAL

 ミュージシャン西川貴教(46)が発起人となった「イナズマロック フェス」は今年で9回目。来場者数は10万人にも上り、西日本最大のロックフェスに育て上げた彼の仕事の進め方、そこに至る苦悩を記した話題の新著「おしゃべりな筋肉」(新潮社)は、単なるタレント本ではなく、もはや“ビジネス書”である。

■20代からアーティストと社長を兼務

 26歳のソロデビュー時に所属した会社は独立採算制で、アーティスト活動と並行して音楽ビジネスにも関わることに。さらに28歳で個人事務所を設立、会社経営も20年のキャリアだ。

「BUCK―TICKさんの傘下から20歳でメジャーデビューしましたが、3年足らずでバンドを脱退しました。その後、縁あってソロで活動することになった次のレコード会社は、海外エージェントのように業務契約を結ぶ、独立採算制の会社でした。レコード会社全体から活動費を与えられるのではなく、何をするにも自分で稼いで資金調達するところから始まります。1ステージのギャラ、分配などその都度聞きながら交渉し、契約する。コンサートのセットをド派手にしたいと思ったら、制作費がいくらかかって、どうやってバジェット(予算)を確保するかを考えるところから始めなくてはいけなかったんです。

 最近ニュースで話題になっている文科省や経産省の問題なんかを見ていると、すごく楽しそうだなって思いますよね。僕たちが動いたら、領収書があって、損益分岐点があって、結果が求められる。僕たちはその予算をとるために悪戦苦闘しているわけですが、あちらはフワッとお金が湧いてくるでしょ? 盛ってつけた予算で『予算使った? まだ使ってないの?』なんて言っていられるなんて、ホント楽しそうに見えて仕方がないです(笑い)。

 予算で発想を制限されることもありますが、お金は情熱を大きなものに変える起爆剤のひとつですし、結果的により多くの人の気持ちを動かすこともできる。そこに目を向けないというのも良くないなと思います」

■社長業と音楽活動のはざまで悩んだことも

 20代の若さでアーティストと社長を兼務することは予想以上のエネルギーを要した。

「それはアーティストの意向(わがまま)なのか、所属事務所の社長としての命令なのかと聞かれることが多かったですね。当時は、何を届けたいかというシンプルなことを理解してもらうことだけでも、若造が大人に戦いを挑むようなものでした。会議は忖度みたいなもので、いろんな方向に受け取れる言い方で当事者が責任を取らないように、気が付いたら他人事になっていく。それを僕は自分の責任をクリアにして、『そちらも覚悟してくれる人を連れてきてください』と話すところから始めました。

 僕が主催する『イナズマロック フェス』は行政側の担当者が毎年代わられるので、毎回趣旨から説明するのは骨が折れる、と滋賀県の嘉田由紀子元知事に話すと、『その分、フェスを理解するあなたの分身が増えているということ。結果、いつかいろんなところで花を咲かせてくれるから』と教えてくださいました。トップに立つ人はそこまで先のビジョンを描いているのかと驚くと同時に、僕もそうありたいと思っています」

▽1970年、滋賀県生まれ。96年にT.M.Revolutionとして「WHITE BREATH」など数々のヒット曲をリリース。滋賀ふるさと観光大使を務め、「イナズマロック フェス」を毎年主催。今年は9月16、17日に開催し、9回目を迎える。新著に「おしゃべりな筋肉」(新潮社)がある。