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ミサイル避難訓練に困惑の声 米軍基地抱える神奈川の自治体

8/25(金) 15:04配信

カナロコ by 神奈川新聞

【時代の正体取材班】北朝鮮の弾道ミサイルの飛来を想定し、全国で行われている住民避難訓練に対し、米軍基地を抱える神奈川県内の自治体から困惑の声が上がっている。国は自治体に実施を求めるが、「市民の不安をあおりたくない」「被害想定がない中で、やみくもに実施するのはどうなのか」と躊躇(ちゅうちょ)している。

時代の正体〈511〉ミサイル避難訓練(上)もう「戦前」ではないか

 県内では19日に、平塚市で初めて住民向け避難訓練が行われた。「落下の可能性があります。頭部を守ってください」と放送されると、体育館に集まった市民約200人は頭を抱えてうずくまった。担当者は「Jアラート(全国瞬時警報システム)の音を知るだけでも訓練の意味はあった」と強調する。

 神奈川には米海軍横須賀基地、厚木基地(大和、綾瀬市)など多くの米軍施設があるが、現在、訓練の開催を決めている自治体はない。

 綾瀬市の担当者は「市民の不安をあおりたくないというのが正直なところ」と明かす。訓練自体に一定の意味があるとしつつも、いったん棚上げにしているという。「単独での訓練は今のところ予定していない。県主導で市町村に声を掛けてやってもらいたい」

 2013年に北朝鮮から「射程圏内だ」と名指しされたことのある米海軍横須賀基地がある横須賀市は、具体的な開催予定を立てていない。「国から言われているので当然やらなくてはいけない。急いでいる」と担当者。一方で「実際にどのような被害になり得るのか。訓練に意味があるのか。国は想定をもう少し詳細に示すべきだ。被害想定がない中で、やみくもに実施するのはどうなのか」と話した。

 識者はどう見るか。政治学者で京都精華大専任講師の白井聡さん(39)は訓練について「全くの無意味」と切り捨てる。「意味があるとしたら、それは不合理に屈する市民を生産するという効果だ」とした上で、「訓練を繰り返すことで、なぜ北朝鮮からミサイルが日本に飛んでくるのかという本質的な問題が問われなくなる」と、思考停止の危うさを訴えている。