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患者と向き合い半世紀 沖縄の90歳の現役医師、頑張る背景に戦争体験あり

8/30(水) 6:35配信

沖縄タイムス

 沖縄県の沖縄市安慶田に90歳の現役医師がいる。新垣病院(精神科・心療内科)の名誉院長、新垣元武さんは約半世紀余り、医師として精神障がいの患者と向き合い続けてきた。新垣さんは「早く社会になじんで生活できるようにするのが私の務め。複雑化する精神医療の現場だが社会復帰を目指す医療体制は今も昔も変わらない」と話す。(中部報道部・比嘉太一)

 新垣さんは1927(昭和2)年に生まれ、那覇でタンス屋を営む両親の家庭で育った。太平洋戦争真っただ中の日本。国民学校での教育で軍に憧れる愛国少年だった。県立第二中学校卒業後の1944年4月、埼玉県の陸軍予科士官学校に入学し、1年間教養を学んだ。

 軍用機に乗って日本のために戦いたいと翌年4月に同県の陸軍航空士官学校に入った。天文学や航空学、航空機の操縦方法などについて学んでいたが4カ月後に日本が敗戦。「まさかの敗戦だった。信じられないとの気持ちとこれからどうしたらいいのかという将来への不安だけが募った」と振り返り、「今思うと大正時代に生まれていたら自分も軍用機に乗って敵の艦隊に突っ込んで命を落としていたかもしれない」と表情をこわばらせた。

 敗戦で学校もおのずと中退になった。しばらくの間、大阪の叔父が営む町工場で働いていた。46年に帰沖。国費学生として広島大学教養学部進学中に、「人の役に立てる仕事に就きたい」と医師になることを決意した。55年、九州大学医学部に入り、医師になるため勉強に励んだ。37歳で医師になった。精神科に進んだのはあまり研究が進んでおらず、沖縄でも病院が少なかったことや先輩医師からの助言だった。

 70年には精神科専門の新垣病院を開業。県内でもいち早く社会に疎遠となった患者の復帰を目指したリハビリテーションや復帰した後のデイケアを取り入れるなど患者に寄り添った最先端の治療を取り入れた。

 現在では週2回、約5時間の外来受診を担当する新垣さん。「患者の話に真剣に耳を傾けてあげることが最も大切。体力も必要なので毎朝のウオーキングは欠かせませんよ。食事は朝と夜の2回しか取らない」と健康の秘訣ひけつを語る。「あと5年くらいは現役医師として頑張りたい。多くの人たちを社会復帰させたい」と意欲を見せた。

最終更新:8/30(水) 11:10
沖縄タイムス