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なぜ日本のIT産業は人材不足に悩まされ続けるのか

8/31(木) 17:30配信

ZUU online

帝国データバンクが発表した「人手不足に関する企業の動向調査結果」で、IT産業においては人材不足が引き続き顕著であるという結果内容を公表した。

これまで言われてきたIT業界の人材不足が証明された調査結果だが、なぜこのような事態になっているのか、また他の産業への影響や採り得る打開策などについて、IT戦略コンサルタントの立場から解説する。

■なぜIT業界は人手不足なのか

帝国データバンクの調査は2万4000社あまりを対象としているため、精度としてはまずまずと思われる。その中で45.4%の企業が「正社員不足」と回答しており、そのうちIT関連企業に限定すると、その69.7%が正社員不足と回答している。半数近くの企業が人手不足としている中で、IT企業の人手不足が際立っている調査結果となっている。

IT業界は、それこそ20世紀末からずっと慢性的な人手不足と言われ続けており、労働人口が減少していく中、全産業におけるIT分野の広がりとは反比例して人手不足は加速している。ITはハイテクというイメージがあるが、実際は「労働集約型」の産業であり、プログラマやSEが商品を生み出す以上、機械的に何かを生み出すことは不可能である。

またそれなりの技術が要求されるため、数カ月で即戦力を育てることも難しい。これが人手不足の一つの大きな原因の一つである。

■就活生や他の業種からはどのように見られているか

加えて、IT業界に深く根付いてしまった「ブラック企業(が多い)」という印象がある。

「サラリーマン川柳」は著名だが、これをSEに置き換えた「SE川柳」というものがある。詳細は割愛するが、SEがいかに長時間、理不尽な環境で働いているかを面白おかしく自虐的に謳ったものだったが、そのあまりの内容の悲惨さに読む誰もが危惧し、業界の人間は「そんなの当たり前」「うちの会社はもっとひどい」など反応した。

これを就活生が読んだ場合、彼らがどう思うかは言わずもがなである。また、他の業種からも「給与は良いが長時間労働が当たり前」という印象を持たれており、労働環境の悪さも指摘されている。一例を挙げると、筆者は、IT産業で派遣で労務関係に従事している人間が心療内科に行く割合は他の業種よりもはかなり高いと聞いたことがある。

また世界的に見ると、どの国のIT業界も長時間労働は変わらないが、好待遇、イメージの良さなどを持たれており、例えば労働人口がこれから増えると予測される新興諸国などでは、IT業界は花形であり、優秀な人材が競って目指す就職先となっている。

反面、日本では成果を得るために従業員に精神主義的な行動を強いるケースすら多々あり、この部分では海外と決定的に違う点とも言える。

■経済に与える影響はどうなのか

IT業界に従事する労働者が少なくなれば、クライアントからの開発案件や、新しい物を生み出すことが非常に難しくなるのは自明の理である。問題は、他の業種からIT業界に依頼しているインフラ構築など、重要な部分に携わる労働者も少なくなり、負の連鎖によって成果物にまで悪影響を及ぼしかねないという点である。

事実、そのような大掛かりな案件を抱える大企業では、自社内(もしくは関連企業)に大量の外国人SEやプログラマを雇用しており、人員不足によるリスク回避を行っている。また、新しいものを生み出す土壌が、仕事を始めようとする若者に敬遠されがちなものになれば、必然的に世界に通用するような新しいIT関連のビジネスを生み出すことも難しくなってくる。

規模的に中小企業を顧客とするようなIT産業の場合、事態はさらに深刻で「システム開発を頼みたいがどこも人手不足で(あるいはコスト面で折り合わず)やってくれない、だからIT化を進められない」というジレンマに陥っている部分も見て取れる。

■打開策はないのか?

日本のシステム開発は、それを依頼する企業が無理を言い過ぎるという一面があり、それが直接日本のIT業界にダメージを与えている部分もある。無茶な要求をお客だからと言って強要している、とも言える。

システムを発注する側にもある程度のITに関する知識(技術だけではなく予算的な常識に関しても)が必要であり、これを持つ企業はオフショア(システム開発の海外委託)などとうまく組み合わせて事態を打開している企業が多いように見受けられる。

しかしこれは、逆に即効性のある打開策がない…ということにもなる。先述のようにすぐにはIT技術者を育て上げる事は難しく、その教育には費用も時間もかかる。その部分を安易にオフショアや派遣で埋めるという事は、人材を育てるチャンスを捨てているという事と同じだからである。どの方法でIT技術者を雇用するとしても、人材を使い捨てず、余りに無理なことを強要せず、短期的に物事を考えずに計画を立てるといった「ブラック企業」の土壌から抜け出る努力と同様の手法が必要となるだろう。パラダイムシフトが要求される。(信濃兼好、メガリスITアライアンス ITコンサルタント)

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最終更新:9/1(金) 10:55
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