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長島愛生園入所者の証言を後世に 職員が聞き取り、記録集公開計画

9/2(土) 23:37配信

山陽新聞デジタル

 岡山県瀬戸内市・長島の国立ハンセン病療養所長島愛生園は、入所者の証言の保存プロジェクトを進めている。看護師や介護士ら普段入所者と接している職員が、これまでの人生や今の思いを聞き取って録音・保存するとともに、文字に起こして記録集として公開する計画で、語り部は約70人に上る。一つの療養所でこれだけの数の証言をまとめるのは珍しく、隔離の島で生き抜いた人々の思いを将来に伝える。

 「ずっと頭の中が『死と』いうものばかりやった時もある。でも、なかなか死ねんのや」

 8月下旬、愛生園で入所者の男性(83)が語るのを、副介護長の大住健夫さん(52)がうなずきながら聞く。

 男性は1954年、20歳の時に三重県から入所。病気が判明した時の苦しさを打ち明けるとともに、家族や古里の親しかった人の話、30代の時に関西地方で社会復帰し会社の同僚らとバドミントンのクラブ活動を楽しんだ思い出などを1時間余り振り返り、「できるなら、もう一度社会復帰したい」と語った。

 聞き手の大住さんは勤続30年余のベテランだが、それでも「若い時に結婚していたことなど知らなかった話も聞けた」と言う。

 愛生園の証言保存プロジェクトは「近い将来、入所者から話が聞けなくなる」との危機感から始まった。現在、入所者は183人で平均年齢85・4歳。愛生園を訪れる人たちに体験談を語れる入所者も年々少なくなっている。

 今回、園が協力を求めたところ、72人から手が上がった。その後、取りやめた人もいるが、「10年前、映像の証言を依頼した時はほとんど応じてくれなかっただけに驚いた」と田村朋久学芸員。「高齢となり、自分の足跡や思いを残したいという人が増えているのでは」とみる。

 高松市の国立ハンセン病療養所・大島青松園で入所者17人の証言集の監修をした岡山大大学院保健学研究科の近藤真紀子准教授から、質問の仕方や内容について助言を受けながら実施。6月から看護師、介護士、ソーシャルワーカーが担当の入所者らに聞き取りをしている。時間や回数は入所者の希望次第で、4回聞いた人もいる。

 証言の内容は家族や古里、療養所入所に至る経緯と入所後の暮らしや趣味、差別体験など。邑久長島大橋の架橋(1988年)、患者隔離を定めた「らい予防法」の廃止(96年)といった療養所を巡る大きな出来事についても聞く。入所者にとっては自らの人生を見つめ直すことになり、職員にとっても、入所者の背景を詳しく聞くことで、より深い理解につながるという。

 愛生園はこの証言集とは別に5人の映像記録も撮影し、園内の歴史館で公開する予定。岡本悦子看護部長は「入所者の方が思いを語り尽くせるよう、何回でも話を聞くなど丁寧に聞き取りを進めたい」としている。

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