ここから本文です

<自民>改憲推進本部が議論再開 9条議論で溝埋まらず

9/12(火) 23:14配信

毎日新聞

 12日に開かれた自民党憲法改正推進本部の全体会合は、自衛隊の存在を明記する憲法改正の条文を巡って、意見の隔たりの大きさを改めて印象づけた。執行部は今月下旬に召集される臨時国会で自民党案を示したい考えだが、安倍政権が重視する衆院3補選(10月22日投開票予定)への影響を考慮し、慎重にならざるを得ないのが実情だ。公明党や民進党との折衝を含め、内にも外にもハードルは多い。

 ◇首相案ありき 石破氏の説得難航

 推進本部の保岡興治本部長が約1時間半に及んだ全体会合を締めくくった後、石破茂元幹事長はこの日2回目の発言を求めた。「草案がどういうものだったか説明する場を設けるべきだ。そのうえで新しい考え方を議論し、それに決まったら従う。これはきちんとやってほしい」

 安倍首相は5月、憲法9条第1項(戦争放棄)と第2項(戦力不保持)を維持しつつ自衛隊の存在を明記する改憲を提起した。しかし、2012年の自民党憲法改正草案策定を主導した石破氏は、第2項の削除が持論。会合後、「『軍隊』にネガティブな響きがあるなら、『日本国の独立ならびに国際社会の平和を維持するため、陸海空自衛隊を保持する』と書けば、反対する人はいるか」と記者団に問いかけ、第2項を削除しても国民の理解は得られると自信を見せた。

 石破氏に対し、保岡氏は「草案をしっかり勉強し、お互いの議論を進めていく」とその場を収めたが、首相提案の線でまとめたいのが推進本部幹部の本音だ。

 保岡氏らは、衆参各院の3分の2の賛成で改憲案を発議し、国民投票で過半数の賛成を得るため、できるだけ穏当な案を作ろうとしている。この日の会合では「自衛官が胸を張って活動できる環境が大事だ」(佐藤正久副外相)、「自衛隊明記を優先し、石破氏の指摘は次の課題にすべきだ」(柴山昌彦筆頭副幹事長)など首相を後押しする意見が目立った。

 一方、衛藤征士郎元防衛庁長官は「2項を削除しなければ保守層が反対する」と石破氏に同調。非公開だった会合の様子を、党幹部は「首相の提案に賛成6、反対4ぐらいの割合だった」と明かした。保岡氏には、12年草案と新たな条文案を並べて議論しなければ、石破氏らの説得は難しいという思いがあるようだ。

 推進本部は、来年1月召集の通常国会で改憲案の発議を目指す方針を変えていない。12日の会合では「自民党案を両論併記で衆参両院の憲法審査会に提出し、議論を加速させるべきではないか」という意見も出たが、保岡氏は併記に否定的だ。とはいえ、衆院補選中は議論を中断せざるを得ず、その後の日程は補選の結果にも左右される。推進本部が現時点で明確な戦略を描けているわけではない。

 一方、公明党の斉藤鉄夫幹事長代行は12日夜、BSフジの番組で「少なくとも野党第1党とも一緒に発議する態勢ができるまでじっくり議論をしなければ、失敗するのではないか」と述べ、民進党を引き合いに出して自民党をけん制した。

 ◇中心抜け、高村氏主導

 8月の内閣改造に伴い、推進本部の事務局長だった上川陽子氏が法相に、事務局長補佐だった西村康稔氏が官房副長官にそれぞれ転じた。実務面をリードしてきた2人が抜けたことで、党内には「議論が仕切り直しになる」と懸念する声がある。保岡興治本部長は12日の推進本部会合で、高村正彦副総裁を推進本部顧問から特別顧問に格上げすると発表。党内論議は今後、高村氏主導で進む見通しだ。

 新設した事務総長には根本匠元復興相、上川氏に代わる事務局長には岡田直樹元副財務相が就任した。自民党岸田派に所属する根本氏は安倍晋三首相とも近く、9条改正に慎重な岸田文雄政調会長と首相の橋渡し役を務めるとみられる。参院議員の岡田氏は新聞記者出身で、自民党が05年に発表した新憲法草案の起草に携わった。首相は周辺に高村、保岡、根本、岡田4氏の名前を挙げ「彼らに任せておけばいい」と語っている。

 ただ、根本、岡田両氏の調整力は未知数だ。一方、高村氏には安全保障法制や天皇陛下の退位に関する特例法の与党協議をまとめた実績があり、公明党の北側一雄憲法調査会長とのパイプが太い。

 高村氏は12日の自民党役員連絡会で「政府は経済最優先でやっていただき、党の方で憲法の議論をしっかりと慎重にやっていきたい」と述べ、党内の意見集約に意欲を示した。【小田中大】

最終更新:9/13(水) 11:05
毎日新聞