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今しかない“半人前”にドキドキ 宝塚前星組トップスター・北翔海莉、コメディー舞台で女優デビュー

9/14(木) 16:56配信

夕刊フジ

 歌、踊り、芝居と三拍子そろった実力でファンを魅了した宝塚歌劇団の前星組トップスター。昨年11月に退団後、女優デビューとなるミュージカル・コメディー「The Pajama Game(パジャマゲーム)」に初主演する。

 「約20年間、男役を極めてきましたからね。歩き方やしゃべり方から、歌ったことのないキー、男性相手のダンスやお芝居など、すべてにおいて、普通の女性をステージで演じるのが、これほど大変とは…。風ちゃん(宝塚時代の相手役で前星組娘役トップ、妃海風)に電話して、改めて感謝したんですよ」

 新しい環境に戸惑いながらも、楽しそうに語った。

 「パジャマゲーム」は初演が1954年の米ブロードウェーで、トニー賞の最優秀作品賞などを受賞した名作。高名な振付家のボブ・フォッシーが初めて振り付けを担当したミュージカルでもあり、楽しいダンスナンバーや「スチームヒート」などの名曲で知られている。58年には映画化され、2006年にはブロードウェーでリバイバル上演され、トニー賞リバイバル賞も受賞した。

 物語はアメリカのパジャマ工場を舞台に、時給7セント半の賃上げをめぐる労働者と雇用者の闘いを、組合側の中心で奮闘するベイブ(北翔)と、対立するハンサムな新工場長シド(新納慎也)との恋を絡めて、コミカルに描く。今回の日本版は、イギリスの気鋭の演出家、トム・サザーランドが新しい解釈で新演出するのも話題だ。

 「この作品は、有名なダンスナンバーや名曲がいっぱい入っている誰もが憧れるミュージカル。それに私の女優デビュー作はハッピーエンドのコメディーがいいと思っていたんです。何より、男勝りで恋には不器用な主人公のベイブが、仲間たちを引き連れて戦う姿が、宝塚を卒業したばかりの私にぴったり当てはまるかな、と決めました」

 外国人の演出家とのタッグは初めてになるが、「日本人にはない発想で誰もが想像していない演出と解釈がすごくおもしろいんです。1950年代のお話ですが、現代に通じることも多くて少しも古さを感じない。私にも自然体でいいとおっしゃってくださって。男役ではないけれど、まだ女優になり切れていない今しかない時期を、私自身もファンの方も一緒に、ドキドキしながら楽しみたいですね。この作品はいろんな国でいろんな舞台があるけれど、今回はトムさんにしか出せない世界観の新しい『パジャマゲーム』になると、ワクワクしています」という。

 父親も兄も自衛官で、「自衛隊に入りたかった」という15歳の少女が、背が高かったことから担任教師に勧められて宝塚音楽学校を受験。思わぬ一発合格で人生が大きく変わった。

 「宝塚自体を知らず、芸事も一切やっていなかった。何もない真っ白なパレットだったからこそ、宝塚の諸先生方に自分も気づかない、いろんなところを引き出していただいて、今の北翔をつくってもらったと思っています」と謙虚に振り返る。

 歌劇団入団後の努力は並大抵ではなかっただろうが、「ターニングポイントは毎回の作品と毎回の役のすべて」といい、着実にステップアップ。組替えや専科を経ての異例のキャリアを重ねて、ついに星組トップに昇りつめた。

 「私は目標がトップではなく、自分の中で納得する、『清く正しく美しく』の宝塚のモットーを極めた舞台人になりたかった。トップにたどり着いたのであれば次のステップに行こうという感覚があり、本公演を3作でやめるという条件で引き受けたんです」

 しっかりとゴールの先を見据えて、惜しまれながら退団した後のプランは?

 「今後の人生設計は分からないですね。退団してから今までの9カ月で、ご縁がつながって想像もしていなかったお仕事に次々に出合いました。自分で幅を決めずにその時その時にさまざまなチャレンジをして、新しい北翔をつくっていきたい。最終的には60、70歳になるまで細々でもパフォーマンスを通して、お客さまに幸せを届けられるエンターテイナーでありたいとは思っています」(ペン・平松澄子 カメラ・志儀駒貴)

 ■北翔海莉(ほくしょう・かいり) 女優、エンターテイナー。千葉県松戸市出身。1998年、宝塚歌劇団入団。月組、宙組、専科と異動し、2015年星組トップスターに就任。16年11月、「桜華に舞え」「ロマンス!!(Romance)」で退団する。その後はコンサートやCD発売ツアーなどを行う。

 ミュージカル・コメディー「The Pajama Game(パジャマゲーム)」はほかに、大塚千弘、上口耕平、阿知波悟美らが出演。公演は9月25日~10月15日=東京・渋谷の日本青年館ホール、10月19~29日=大阪・梅田のシアター・ドラマシティ。

最終更新:9/14(木) 16:56
夕刊フジ