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「iPhone X」「iPhone 8」のどちらを選ぶべきか 実機で感じた決定的な違い

9/14(木) 6:38配信

ITmedia PC USER

 米国時間の9月12日に新しい「iPhone」の発表が終わり、さまざまなニュースやコラムが飛び交っている。本稿が掲載されるころには情報も落ち着きを見せていることだろう。製品発表後、われわれ現地発表会に招待されている記者は、新製品のハンズオンコーナーでそのフィーリングを確認するのが定番だ。

写真:発表内容とiPhone X/8の実機

 なぜならスペックよりも使用感こそが大事……という要素が多いためだが、細かな仕様や制約などについては、その時点で製品を説明する担当者が把握できていない部分もある。筆者自身もAppleのWebサイトをくまなくチェックしたり、開発者向け情報を整理できていたりするわけではない。細かい端末のスペックなどは、記事を探すよりもメーカーのWebサイトをチェックする方が正確な情報を得られるだろう。

 ここでは発表イベントの基調講演で発せられたメッセージや、製品に触れた印象を振り返りながら、今回のモデルチェンジでAppleが進もうとしている方向性について、筆者なりの考えを書き進めていきたい。

●安心して乗り換えられる成熟の「iPhone 8」

 iPhoneの発表会に3回しか参加していない筆者だが、毎回感じるのは「ライバルを意識したメッセージ」をほとんど感じないことだ。過去、開発者向けイベントでAndroidに言及したこともあるが、端末製品として「Galaxy S」シリーズなどと比較するプレゼンテーションをしたことはない。

 グローバルでの市場の広がりやユーザー層拡大に応じて、1つのモデルでカバーしていたiPhoneもラインアップを拡大してきている。驚くべきことに、今回「iPhone X」「iPhone 8」「iPhone 8 Plus」が追加されたことで、SE、6s、6s Plus、7、7s Plusと合わせて合計8モデルにもなったが、2007年以降、常に「iPhoneとして進む道」を歩んできた。

 基本ソフトであるiOSに関しては、Androidを意識している面も多分に感じられるが、ハードウェアと基本ソフト、それに開発者コミュニティーやAppStoreなど周辺を取り巻く環境全体は外乱からの影響を受けず、しっかりと軸を保って安定している印象だ。

 だが一方でiPhoneのよさを失わないために、なかなか踏み出せない領域もある。例えば、iPhone 5sに初搭載された指紋認証機能「Touch ID」で完成されたiPhoneの基本形は、iPhone SEという形でアップデートされ、現在でも日本市場ではSIMロックフリー端末として最も人気の機種となっている。

 Touch ID内蔵のホームボタン、アスペクト比16:9のRetinaディスプレイなど、iPhoneとは何かを体現した要素が詰まっているのがこのモデルだ。その後、「3D Touch」なども追加されてはいるが、操作体系なども基本はこのころから変わっていないし、大きく変えることを望んでいないユーザーが多いことも想像できよう。

 従って、最新世代にアップデートされたiPhone 8およびiPhone 8 Plusが最新・最良のiPhoneであることは疑いようもなく、これまでiPhoneに投資をしてきたユーザーは、安心して新世代製品に飛び込んでいけるだろう。

 「この程度なら毎年買い替えたくなんかないよ」という方もいるだろうが、もはや毎年の買い替えなどメーカー側も期待はしていない。その時点で最良であることが重要であり、そうした意味でiPhone 8シリーズは、ところどころに将来に向けた仕込み(「A11 Bionic」に仕込んだイメージシグナルプロセッサやニューラルネットワークエンジン、機械学習への最適化など)なども含め、期待を裏切らない製品だと感じた。

 とりわけアプリなどの動作速度はもちろん、カメラの動作感は極めて軽快。暗所性能などは確認できていないが、iPhoneを新たに買おうというとき、わざわざ選択肢から外す理由はない。唯一のネガティブな要素は、(恐らく無線充電に対応するために)20~24グラムほど従来機より重くなっていることぐらいだろうか。

 だから「iPhoneを買い替えるんだよね」という人は、迷わずiPhone 8シリーズを選んでおけば、大きな間違いはない。

●制約を取り払い、次の10年を見据える「iPhone X」

 一方、発表会で米Appleのティム・クックCEOが言及したように「iPhoneは過去10年で世の中を大きく変えた」存在だが、しかしその出発点は10年前であり、そこから積み重ねてきたさまざまなルールに縛られている。iPhone Xで廃止されたホームボタンもその1つだが、他にもたくさんの要素が考えられる。

 例えば、iPhoneのエコシステムを基礎部分で支える「アプリ」をシンプルに保つよう工夫をしていた。一例としては、ディスプレイのRetina化においては一気に画素密度を2倍にすることで、互換性と先進性の両方を担保するなどの工夫がある。

 もっとも、iPhone 6で5.5型の「Plus」が加わったことにより、このルール……開発側のインパクトを最小限に抑えながら進化していくやり方……にも破綻が生じ始めていた。ティム・クックCEOが「次の10年」について言及したのは、iPhoneシリーズを育てるために自ら課してきた制約を取り払い、新しいスタート地点を定義することで、新たなる推進力を得ようという意図があったからではないだろうか。

 彼は故スティーブ・ジョブズ氏の言葉を引用しながら「ボールを追いかけるとき、他の誰かを追いかけるのではなく、みんなが向かうところを目指して走る」といったニュアンスの言葉を話した。成熟したiPhoneのコンセプトを見直し、新しい目的地を目指すための新しい枠組み、それこそがiPhone Xだ(もちろん、Appleがそう言ったのではなく、筆者がそう感じたということにすぎないが)。

 iPhone 8は、iPhoneが10年で到達した成熟を味わえる製品だが、iPhone Xは大きく異なる。iPhone向けに開発されたハードウェア、ソフトウェアのプラットフォームや開発者コミュニティーを大部分で共有しながらも、互換性や操作の共通性などを意識して課してきた制約を外し、再設計した「iPhone Xという新しい製品シリーズ」と考えた方がいいだろう。

 制約を外せば、10年前よりはるかに進んだ「現時点の技術とビジョン」を元にプラットフォームを整理できる。今回のiPhone Xが、どこまでApple自身の考える将来ビジョンを反映できているのかは判断しかねるが、しかし新しい10年を進むためのスタート地点として用意した別モデルという印象は、決して外してはいないと思う。

 ただし、Appleのこの提案が開発者たちの心を捉えるかどうかは、まだ分からない。iPhone用アプリをiPhone Xに対応させるには、オリジナルiPhoneに対して3倍の画素密度や縦に伸びた新しいアスペクト比などをサポートせねばならず、ものによってはユーザーインタフェースの再設計なども必要になるだろう。

 iPhoneのAndroid端末に対する利点として、多くの端末で最新OSが動作し、最新機能を生かしたアプリを作りやすいという点があったが、あるいはiPhone Xがそうした部分を分断する存在になるかもしれない。

 一方でiPhoneとは別の製品シリーズとしてiPhone Xが定着し、開発者コミュニティーに定着してくるならば、「これからの10年の始まり」ともなり得る。iPhone Xは、顔の形状を認識する新しいセンシング技術を導入し、新たなジェスチャールールを盛り込んだ、マニアックな視点から言えば興味深い製品だ。

 プラットフォームとして見たiPhone Xという視点をいったん外すならば、サイズ感は程よく、しかし大画面で画質に優れ、iPhone 8と8 Plusの両方の長所を持ちつつ、さらに進んだ機能性を備える。もちろん、そのぶんだけ高価ではあるが、工芸品のように部品の合わせに隙間が感じられない仕上がりや質感は、その価格を払おうという層を満足させるものがある。

 定番製品としてのiPhoneの買い替えならば、iPhone 8シリーズをすすめるが、スマートフォンの未来を垣間見ようというならば、その原点となる「初代iPhone X」に触れるのも悪くはないだろう。

最終更新:9/14(木) 6:44
ITmedia PC USER