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<北朝鮮>中国国境細る「抜け道」 制裁の影響じわり

9/14(木) 21:41配信

毎日新聞

 ◇海産物・金融取引を制限

 【丹東(中国遼寧省)河津啓介】核・ミサイル開発を進める北朝鮮に対して国連安全保障理事会が11日に9回目の制裁決議を採択し、その履行への本気度が注目されるのが中国だ。かつて「血の盟友」と呼ばれた中朝両国。国境の街の遼寧省丹東を訪ねると、人と物の往来は変わらず続いていたが、中国側の経済には影を落とし始めていた。

 丹東中心部の水産物市場。貝を扱う業者が「うちのは全部が北朝鮮産。新鮮だよ」と悪びれずに明かした。8月の安保理決議で北朝鮮との海産物取引は全面禁止だが、闇取引で入手するという。地元住民は「今までも当局はすべての取引を監視できなかった。抜け道は当然ある」と冷ややかだ。

 ただ、魚介類の産地を聞いて回ると、「地元産だ。北朝鮮産は入荷できなくなった」との声が多数を占めた。乾物屋で「朝鮮(北朝鮮)」産と書かれた干しナマコがあったが、女性店主は「制裁前に入荷した在庫。質が良いのに手に入らないのは困るけれど、今の情勢では仕方ない」と顔をしかめた。

 中国国家統計局によると、中朝の輸出入総額は2015年で55億ドル(約6090億円)。その約7割を丹東経由が占めるとされる。北朝鮮の貴重な外貨収入源がこの地に集まるが、新たな制裁決議では北朝鮮労働者の雇用に対する締め付けも厳しくなった。

 郊外に足を延ばすと、地元住民が「ここも300人の北朝鮮労働者を雇っているよ」とある縫製工場を指さした。中国東北部は旧態依然とした国営企業が足かせとなり、経済低迷の中にある。遼寧省の域内総生産は昨年、全国31の省、直轄市、自治区で唯一、マイナス成長を記録。北朝鮮労働者は安価で、熱心な働き手として欠かせない存在だ。

 中朝を隔てる鴨緑江の川沿いに車を走らせながら、タクシー運転手がつぶやいた。「北朝鮮への反感は高まっている。けれど、街は中朝貿易の恩恵を受けてきた。誰も緊張は望んでいない」

 一方、決議では禁止されていないが、中国の大手銀行が独自措置として北朝鮮籍の企業、個人の口座開設を禁じたことが最近、明らかになった。丹東の地元銀行で窓口担当者は「丹東では大手行以外の銀行も当局の指示で取引を制限している」と説明した。米国は6月、北朝鮮による不正な金融取引に関与したとして「丹東銀行」を制裁対象に指定。北京の外交研究者は「米国による制裁が拡大する懸念を強め、中国側が証拠を与えないように手を打ったのだろう」と分析する。

 ◇ことば【国連安保理の対北朝鮮制裁決議】

 北朝鮮の外貨獲得を防ぐため、11日に採択された決議で北朝鮮の出稼ぎ労働者に対し契約満了後の更新を禁止、北朝鮮の繊維製品が禁輸対象になった。これまでの海産物や石炭を含め、輸出総額の9割に相当する北朝鮮産品が禁輸対象となった。

最終更新:9/15(金) 8:42
毎日新聞