ここから本文です

超高層オフィスビル開発「森ビル」 六本木・虎ノ門からインドネシアに飛び出すワケ

9/14(木) 10:00配信

産経新聞

 不動産大手の森ビルは、インドネシアの首都ジャカルタ中心部で高さ266メートルとなる超高層ビルの開発に着手したと発表した。2021年の完成が目標だ。同社は六本木や虎ノ門など東京都港区を中心にビル開発を進めており、東南アジアでのオフィスビル開発は初めて。積極的な事業展開には、新たな需要を取り込みながら国内事業にも新たな息吹を吹き込もうとの遠望がみてとれる。

 ジャカルタ中心部の目抜き通りとして知られる「スティルマン通り」。道路渋滞解消策として都市高速鉄道の整備も進む一等地が、森ビルが開発を手がける新ビルの建設地だ。地上59階(地下4階)建てで延べ床面積は約19万平方メートル。オフィスや飲食テナントが入居する複合ビルで、高いセキュリティーと環境性能を兼ね備えるのが特徴だ。

 森ビルは昨年5月、シンガポールに海外展開のための法人を設立、東南アジアを中心に新たな投資機会をうかがってきた。すでに清水建設と現地企業の施工で工事に着手。ジャカルタは高品質オフィスビルの総床面積が東京都心部のわずか10分の1とされ、担当者は「森ビルの高品質なオフィスビルが受け入れられる素地がある」と新たな需要獲得に意気込む。

 辻慎吾社長(57)が就任時に「東京のグローバル化」と同時に掲げたのが、アジアを中心とした「海外事業の加速」で10年間で10プロジェクト、総額1兆円規模の投資を目標に掲げる。

 森ビルといえば、六本木などの「ヒルズ」ブランドに代表されるビル開発やエリアマネジメント事業の軸足を東京都心部に据え、今後も虎ノ門・新橋地区の再開発などが視野に入るが、実は海外にも第2の“おひざ元”と呼べる場所が存在する。1995年に故森稔前社長がビル開発案件を手がけた中国・上海だ。

 上海は1990年代にこれまでの市街地だった浦西地区に加えて、浦東地区での都市作りが進み、日本の金融機関や商社の事業進出の動きがあった一方、各企業が満足できるオフィス確保に悩んでいた。こうした中で森ビルが竣工(しゅんこう)した46階建ての「上海森茂国際大厦」は、1フロア1500平方メートルの無柱空間を実現。現地の日本企業や外資系企業の人気を集めた。

 さらに森ビルは東京で「六本木ヒルズ」竣工後の2008年、オフィスだけでなくホテルや商業施設、メディアセンターまでも擁する地上101階の「上海環球金融中心」を完成させた。担当者は「上海では森ビル品質は信頼が確立された」と胸を張る。

 上海での成功体験を背景に、インドネシアでの事業展開に舵を切った森ビルだが、「東南アジアでビル事業」という形式は、競合他社の海外戦略とは一線を画す。アジアでは高いビル賃料が見込めない一方、中間所得層の成長でマンション需要が伸びており、主流は「欧米でビル事業、アジアでマンション事業」の組み合わせという。

 独自路線の森ビルが見据えるのは、自社の使命とも位置づける「東京再開発」との相乗効果だ。

 上海環球金融中心では、六本木ヒルズで採用した歩車分離の街づくりを応用したペデストリアンデッキを整備した。中心街を見渡せるデッキは、いまや上海観光の一大観光スポットだ。加えて、比較的柔軟な規制緩和が行われる上海で、超高層の複合ビル開発を経験したことで、高層ビルにおける動線確保や施設配置のノウハウを獲得。“果実”は虎ノ門ヒルズ開発へ受け継がれていく。

 ジャカルタの新たな複合ビル開発では、上海環球金融中心を手掛けた米ニューヨークの設計事務所コーン・ペダーセン・フォックス・アソシエイツ(KPF)とゴールデンタッグを復活させ、“好循環”に磨きをかける構え。世界を股にかけた技術と経験の蓄積を、自身と東京の発展へと還元させていく。(経済本部 佐久間修志)

最終更新:9/14(木) 10:00
産経新聞