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1日5千丁以上売れる 陶器市の名物「ごどうふ」 雑誌やテレビの取材相次ぎ全国区に 佐賀

9/14(木) 15:15配信

西日本新聞

 佐賀県有田町に伝わる精進料理から全国区になった豆腐がある。有田陶器市では1日5千丁以上も売れる名物「ごどうふ」。粘りのある食感は餅のようで、ごま醤油(じょうゆ)をかけておかずとしても、黒蜜をかけてデザートとしても食べることができる。

 ごどうふは、豆乳ににがりではなく、くず粉とでんぷんを混ぜて水分も一緒に固める。独特の食感はその製法から生まれる。高島豆腐店3代目の高島明博さん(60)は「素材と味がシンプルだから飽きがこない。いろんな食べ方にも合う」と話す。

 高島さんが子どもの頃から、有田ではごどうふを知らない人はいなかったが、法事用に注文した分だけが作られてきた。高島さんは名古屋市の大学に進学するまで、ごどうふはどこにでもあると思っていた。

あっという間に全国に

 大学卒業後、同市での自動車販売の仕事を経て1985年に帰郷。家業の手伝いを始め「ごどうふを郷土料理として広められたら面白い」と思うようになっていた。ただ、どうすれば販路を広げることができるのか分からなかった。

 「豆腐作りを勉強しておいで」。タイミング良く、なじみの大豆卸売店の担当者が、数軒の豆腐店を紹介してくれた。そのうち1軒の主人が「ごどうふは珍しい。売り出したらいい」と背中を押してくれた。

 帰郷して間もなく、町内に初めてスーパーが進出した。「地元の商品も並べたい」と声が掛かった。「チャンスだ」。周囲からは「法事でしか食べんから売れんよ」と言われたが、豆腐や厚揚げと一緒にごどうふの出荷も始めた。

 結果は売れ残りの山だった。百貨店の催事に出店しても半分以上が売れ残った。ごま醤油とのセット販売など試行錯誤を続けたが軌道には乗らなかった。

 7年間の試練からの転機は突然訪れた。93年、雑誌記者が豆腐特集の取材にふらりとやってきた。誌面で「独特の食感で、焼き物の里の一風変わった豆腐」と紹介されると、テレビ取材が相次いだ。有田の精進料理は、あっという間に全国に広まった。

 ごどうふ目当ての観光客も増え、町内の飲食店が次々とメニューに取り入れた。100万人以上が集まる有田陶器市の期間中は一晩中、作り続けるようになった。今では県内だけではなく長崎県のスーパーなど約60店で販売している。

 仕事に追われる中、ここ10年は、毎週月曜に1人暮らしの高齢者の安否確認を兼ねて訪問販売もしている。「有田が陶器で栄えていたから、ごどうふを食べる文化も残っていた。この地域に少しでも恩返しをしたい」。高島さんはそう思っている。

「豆腐県佐賀」

 佐賀県は2016年産大豆の収穫量が九州1位、おいしい水にも恵まれ、豆腐作りにぴったりだ。各地にユニークな豆腐が伝わり、全国に知られる豆腐料理もある。現場を訪ね「豆腐県佐賀」にまつわる人模様を紹介する。

西日本新聞社

最終更新:9/14(木) 16:42
西日本新聞