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朝鮮学校無償化除外は適法 元生徒の請求棄却 東京地裁

9/14(木) 14:00配信

カナロコ by 神奈川新聞

 国が朝鮮学校を高校無償化制度の対象から除外したのは違法として、東京朝鮮中高級学校高級部の生徒(提訴当時)62人が国に計620万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は13日、「文部科学相の判断に裁量権の逸脱があったとは認められない」として適法と判断し請求を棄却した。原告側は控訴する方針。

希望の光 雲散霧消 朝鮮学校の子ども母親ら怒りと涙

 同種の訴訟は全国5地裁で提起され、7月の広島地裁判決では国側が勝訴、大阪地裁判決では学校側が勝訴していた。

 田中一彦裁判長は判決理由で、国が在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)との関係が疑われるとして適用対象外とした処分は不合理とは言えないと判断した。

 国は産経新聞の記事や公安調査庁の分析などから「朝鮮総連や北朝鮮との密接な関係が疑われ、学校側に支払われる就学支援金が授業料に充てられない懸念がある」と主張してきたが、判決はこれを追認した。

 原告側弁護団は「拉致問題という政治的、外交的理由で対象外にしたのは明らかで、すべての子どもの学ぶ権利を保障する無償化法の趣旨に反する」と主張したが、判決は「除外は政治的理由ではない」と退けた。弁護団は「事実誤認であるだけでなく、東京朝鮮中高級学校に就学支援金を支給した場合、なぜ授業料に充当されないのか具体的な理由も書かれていない。他校の過去の事例から朝鮮学校はどこも同じだと見なすなど、民族差別そのものだ」と批判した。

 全国5地裁で起こされた同種訴訟のうち、初めての判断となった7月19日の広島地裁判決は「国の判断に裁量権の逸脱、乱用があるとは認められない」として原告側の請求を全面的に退けた。同28日の大阪地裁判決は拉致問題という外交・政治的意見に基づく判断は教育の機会均等の確保とは無関係で「法の趣旨を逸脱しており違法、無効だ」として原告側全面勝訴の判断を下していた。このほかに名古屋地裁と福岡地裁小倉支部で争われている。


【解説】民主主義の崩壊映す差別追認
 国の勝訴を言い渡した広島地裁、一転、学校側の全面勝訴を告げた大阪地裁に続き、首都の裁判所が出した結論は、時計の針を逆戻しにするかのような「国の勝訴」だった。

 産経新聞の報道や公安調査庁の分析などを持ち出し、朝鮮学校に疑いのまなざしを向ける国の主張を追認した広島地裁判決同様、東京地裁判決も、国の言う「疑惑」を具体的に検討し、具体的な危惧を示すことなく、無償化の適用対象から外した判断は妥当との結論を導いてみせた。

 対する大阪地裁判決は産経報道、公安分析の一つ一つを否定した上で「民族教育の重要性」に踏み込み、在日朝鮮人の当事者をして「歴史的判決」と言わしめた。排除され、否定され、踏みつけにされてきた尊厳の回復という救済機関としての司法のありようを示した大阪地裁に対し、粗雑で結論ありきに映る。そこにこそ意図的な判断の回避をうかがわせる今回の判決は、司法の正義からほど遠い。

 根拠薄弱な「疑惑」をうのみにして判断を下したのなら、それは偏見の追認、偏見に基づく差別行政へのお墨付きを意味する。

 当時の下村博文文科相が拉致問題を理由に「国民の理解が得られない」と会見で語っているにもかかわらず、対象外としたのは政治的・外交的考慮からではないとした判断も理解に苦しむ。拉致問題解決の道筋は見えず、ミサイル発射が続く中、政治と行政の中枢にある司法の場においても政治的・外交的考慮がなされたとすれば、朝鮮学校に学ぶ子どもたちを等しく扱えないというこの国のありようこそが民主主義の崩壊を示しているということになる。