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2020年までに国内クラウド市場シェアでAWSを抜く――日本マイクロソフトの勝算は

9/16(土) 10:34配信

ITmedia エンタープライズ

 「2020年までに、国内パブリッククラウド市場におけるリーディングシェアを獲得する」――。日本マイクロソフトの平野拓也社長が、こんなチャレンジングな目標を掲げた。2017年6月までにクラウドビジネスの売上高構成比を50%に高めるという目標をほぼ達成した同社が、次に掲げた新たなクラウドビジネスの目標だ。

 クラウドビジネスの売上高構成比50%という目標値に対しては、47%と、わずか3%及ばず、平野社長も「インチキという声もあるが、これで良しとしたい」と、“ほぼ達成”を自ら容認してみせた。本来の目的である「クラウドビジネスをメインストリームにする」という成果を達成したという点では“ほぼ達成”でも意味がある。

 だが今回、新たな目標に掲げた「リーディングシェア」は、“ほぼ達成”では意味がない。トップシェアではなく、リーディングシェアという表現が気になるが、やはり1位となることが、この目標のゴールとなる。

 つまり、先行するAWS(Amazon Web Services)を捉えることができるかが鍵になる。

●日本市場のクラウド成長率伸長の波に乗り、シェア倍増を狙う

 2017年8月1日に行われた記者会見で、平野社長は初めて、国内パブリッククラウド市場におけるリーディングシェア獲得を公約してみせたが、具体的なシェア目標については明言していなかった。

 そのあたりを改めて平野社長に聞いてみると、答えは、「最低でもシェア25%。できれば30%を目指したい」というものだった。

 現在、日本マイクロソフトのパブリッククラウド市場におけるシェアは、調査会社によって差があるものの、12~13%とみられている。

 つまり、シェアを2倍以上に引き上げるという意欲的な計画だ。「クラウド市場全体が成長していることを考えると、売上高は2倍以上のペースで引き上げる必要がある」(平野社長)というわけだ。日本マイクロソフトにとっては、極めて高いハードルであることに間違いはない。

 では、日本マイクロソフトにとって、新たな目標に向けた勝算はあるのか。

 平野社長は、「日本において、『Azure』の3桁成長を2020年まで継続していきたい。また、『Office 365』は、多くの企業に導入されているが、現在の倍以上は導入いただけると見込んでいる」と意気込む。

 日本マイクロソフトがクラウドビジネスで高い成長を見込むのには、いくつかの理由がある。

 1つは、日本のクラウドビジネスの成長率が、海外の成長率を上回り始めたという点だ。

 日本での具体的な成長率は明確にはしていないが、米本社が発表した2017年度第4四半期(2017年4~6月)の業績では、Azureが前年同期比97%、Office 365が43%増、「Dynamics 365」が74%増という実績を公表しており、日本マイクロソフトは、これを上回る実績を達成しているようだ。

 平野社長は、「数年前には、日本のクラウドビジネスの成長率は低かったが、2017年に入ってから、海外の成長率を日本が上回るようになった。日本のマーケットが、米国に比べて2、3年遅れで広がりをみせるというIT業界の典型的なパターンの中に、日本のクラウドビジネスが入ってきた。これが日本マイクロソフトのクラウドビジネスに対してポジティブな要素につながる」と説明。さらに、「日本は人口減という課題を抱えており、働き方改革やクラウドの活用が待ったなしの状況にある。これも、日本でのクラウドビジネスの成長に追い風になる」と続けた。

●Azureを軸にクラウドビジネスを加速

 平野社長は、Microsoftのクラウドに対する信頼感が高まっていることも強調する。

 「かつてはAzureが商談のテーブルに乗らないこともあったが、2016年以降、AzureとAWSの名前が横並びで挙がることが普通になってきている。技術的に見ても、機能や品質面でAWSに劣るどころか、勝るところが多い。パートナーやユーザー企業もAzureに強い関心を持っており、市場におけるAzureの存在感が明確に変わってきている」(平野社長)

 その自信の1つになっているのが、2016年からスタートしたAzureをクラウド基盤としたSAPソリューションのマイグレーションサービスの成功だ。

 「SAPのリプラットフォームは、かなりの手応えがあった。この背景には、Azureが実現しているエンタープライズレベルの信頼性が認められ、ミッションクリティカルでも活用できるという安心感が定着してきた結果」としている。

 また、エンタープライズレベルでの導入事例が広く公開され始めたことも、日本マイクロソフトのクラウドビジネスを加速させている。

 「AzureやOffice 365のほか、EMS(Enterprise Mobility + Security)といった運用管理やセキュリティを主眼とした製品や、Dynamics 365など、多くの製品が出そろってきた。チームが自信を持ってクラウドを提案できる体制が整っている。さらに、今後は、『Microsoft 365』により、統合的な提案ができるようになる」(平野社長)

 特にMicrosoft 365については、「お客さまの視点で見れば自然な流れであり、個人的には、なぜこれまでになかったのかと感じる製品」と説明。「Office 365を使っていれば、当然、セキュリティも必要になり、Windowsの管理もしっかりとしたいという要望が出てくる。そして、Dynamics 365との連携提案も可能になる。これを1つのソリューションセットとして提供できることは、お客さまにとっても大きなメリットがある」と強調する。

 日本では、海外のように、「LinkedIn」の存在がDynamics 365の普及の追い風になるということがなく、その点ではマイナス要素といえるが、今はそれを感じさせない勢いが同社のクラウドビジネスにはある。

 そして、もう1つ、日本マイクロソフトの組織体制の変更とパートナー向けプログラムの強化も、クラウドビジネスにはプラス要素となりそうだ。

 従来の「CSP(クラウド ソリューション プロバイダー)プログラム」に加えて、パートナー向けの教育制度を強化。金融、流通、製造、政府・自治体、教育、ヘルスケアの6つのインダストリーにリソースを集中させ、クラウドを活用したビジネスイノベシーョンを支援することになる。

 さらに、Azureを軸にした業種別のコミュニティー活動として「Industry"x-Biz"Community」を新たに展開することを発表しており、「IoTビジネス共創ラボ」の活動に加えて、野村総合研究所やFIXERを中心にした「金融デジタルイノベーション・コンソーシアム」を2017年9月末に設立。三井情報やリクルートキャリアを中心にした「HR Tech コミュニティ」を2017年11月に発足する計画だ。これもAzureの活用に弾みをつけることになるだろう。

 また、新設したインサイドセールス事業本部も、パートナーのクラウドビジネスの拡大に向けて、質の高い案件創出でサポートすることになる。

 「まだまだMicrosoftはチャレンジャーであり、その立場からクラウドビジネスを加速していく」と平野社長は語る。新たな目標は意欲的だ。その高い目標に向けて、日本マイクロソフトは新たな一歩を踏み出した。