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我が家の猫が里親募集サイトで譲渡されてしまった! 返してもらうことはできる?

9/16(土) 9:16配信

弁護士ドットコム

「家の猫が里親募集サイトで譲渡されてしまいました」。飼い猫が行方不明になってしまった男性が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに相談しています。

行方不明になった後、男性は「もう帰ってこないだろう」と諦めて子猫の里親募集サイトを見たところ、家の猫とそっくりな猫を見つけました。そこで募集をかけている人に問い合わせをしたものの、連絡はなく、3日後になって「昨日他のところへ譲渡しました」と回答があったそうです。

男性は「なんとか取り戻す手立てはないでしょうか」と訴えています。飼い猫が譲渡された場合、元の飼い主は猫を取り戻すことはできるのでしょうか。ペット問題に詳しい渡邉正昭弁護士に聞きました。

●ペットの所有権をめぐるトラブル解決の難しさ

「当事務所は多くのペット事件を扱ってきましたが、このようなペットの所有権の帰属を巡るトラブルの解決は『言うは易く行うは難し』の典型です。それは、ペットを『物』として扱う法律の建前と、ペットを家族の一員として扱う飼い主の感情が真向から交錯する分野だからです」

法律は、どのように定めているのだろうか。

「法律の建前は、行方不明になった猫は遺失物であり、飼主は遺失の時から2年間は現在の飼主に対して引渡しを請求することができると規定されています(民法193条)。

確かに、所在と氏名が明らかな里親に対して、訴訟を起こし、判決を得ることができれば、本条項が適用されて勝訴判決を得ることができるかもしれません。しかし、ペット問題について多くの実践を積み重ねてきた中で、この解決方法は、生身の人間同士の感情や利害の調整という『交渉』の視点を欠落していると思います」

具体的にどのような点が欠落しているのだろうか。

「現在の飼主である里親の新しい家族の一員となったペットに寄せる愛情や強い絆、それに現在の飼主の今までの飼主に対する批判的な感情を考慮していません。

この欠落は、実際に訴訟を起こしてみると実感できます。仮に勝訴判決を得たとしても、(勝訴判決を現実化する)ペットの取戻しの強制執行には困難が伴い、それゆえ、裁判所は判決よりも和解の道を模索することになります」

●ペット問題解決に必要な「オーダーメイドの交渉戦略」

和解するためには、どのような対応が必要になるのか。

「実際の紛争解決の現場では、短気や稚拙な対応は禁物です。

生身の人間同士の感情調整や信頼関係の維持を基盤とした上で、相手方のペットに寄せる愛情や強い絆を尊重しながら、相手方や事案の特性に応じて、双方の利害の調整を図る『信頼戦略』や『緊張戦略』といった交渉戦略を個別具体的に策定することが必要となります(オーダーメイドの交渉戦略)。

それほどペットの取戻しにはデリケートな配慮が必要となるのです。そして、仮に訴訟になった場合でも、戦略の変更は随時検討することが必要ですが、有意義な和解に備え、前述した基本的な戦略のスタンスを維持する忍耐強さが要求されます。

なお、実際の交渉場面で注意すべきなのは、本件の場合には交渉の相手方は里親だけではなく、里親の住所開示に消極的な里親募集サイトを開設してボランティア活動をしている者も含まれるということです。里親と同様にオーダーメイドの交渉戦略を個別具体的に策定することが必要となります」

【取材協力弁護士】
渡邉 正昭(わたなべ・まさあき)弁護士
交渉戦略家・税理士・弁理士 元家事調停官
心理学を活用した法的交渉が特徴。ペット問題に30年関わり、相談や事件依頼は全国各地から、近時は世界各国からも。セカンドオピニオンや引き継ぎ依頼も多い。
事務所名:渡邉アーク総合法律事務所
事務所URL:http://www.watanabe-ark.gr.jp

弁護士ドットコムニュース編集部