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首都大水害への備えはできているか/土屋信行氏(公益財団法人リバーフロント研究所技術参与)

9/16(土) 20:03配信

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 東京が世界一災害に弱い都市であることをご存じだろうか。ミュンヘン再保険会社による世界各都市の自然災害危険度指数のランキングで、東京・横浜は他の都市を大きく引き離してダントツの1位にランクされている。

 この自然災害危険度指数というのは、災害に見舞われるリスク(hazard)と脆弱性(vulnerability)と経済価値(exposed value)の3項目を掛け合わせた数値だが、実は東京はリスク、経済価値と並び、脆弱性でも最も高い都市のひとつにあげられている。自然災害に見舞われ大きな損害を出す可能性が高いばかりか、災害に対する備えができていないというのだ。

 人口が密集する東京の地震リスクが高いことはわかるが、実は東京は水害への備えでも大きく後れを取っている。内閣総理大臣を長とする中央防災会議が2010年に作成した「大規模水害対策に関する専門調査会報告」(副題 首都圏水没)によると、利根川が氾濫した場合、2600人の死者と110万人の孤立者が、荒川が氾濫した場合も2000人の死者と86万人の孤立者を出すことが予想されている。

 元々、東京は徳川家康が江戸に幕府を開いて以来、水害と戦ってきた。氾濫を繰り返す利根川に悩まされた幕府は、元々東京湾に流れ込んでいた利根川の流れを変え、千葉県の銚子から太平洋に流れ出るようにする「利根川東遷」を敢行するなど、治水事業に力を注いだ。その後、明治43年の東京大水害で大きな被害を出した東京は、荒川放水路の整備など、数々の治水事業を行ってきた。

 しかし、東京都庁で災害対策に取り組んできた土屋信行氏は東京の防災対策、とりわけ水害対策はまったく不十分だと語る。

 東京の下町は過度な地下水の汲み上げによる地盤沈下がひどく、標高が海面以下の「ゼロメートル地帯」が広範に広がっている。しかも、東京の都心部には地下鉄や地下街、共同溝など地下に多くの水の通り道を作ってしまったため、東京湾や荒川の堤防が一か所でも決壊すれば、水は瞬く間に東京中に広がっていく。しかも、その地域は人口が密集しているため、すべての住民を避難させることは不可能だ。

 地下鉄も水の侵入を防ぐ止水板がすべての駅に設置されていないため、どこか一か所でも堤防が決壊すれば、地下鉄の構内に水が流れ込み、より低い路線から満水となる。荒川の堤防が一か所決壊した場合、17路線、97駅が浸水することを中央防災会議は想定している。赤羽あたりで荒川が一か所でも決壊すれば、最も低い場所にある日比谷駅や銀座駅あたりから、大量の水が吹き出すことになるだろうと土屋氏は言う。

 これまでも日本は多くの水害に見舞われてきた。毎年といってもいいほど、洪水による死者が出ている。にもかかわらず、われわれの水害に対する意識は低く、行政の対応も遅れがちだ。土屋氏は、地震は誰に起きてもおかしくない災害だが、水害は海沿いや川沿いの地域だけの問題だと思われていることが、水害対策を後手に回る結果を生んでいる一因だと指摘する。確かに、高台に住む人の多くは、水害とは直接は無縁かもしれない。しかし、水害によって発生する経済的損失が決して地震にも劣らないことは、ミュンヘン再保険会社のリスク計算を見ても明らかだ。

 マル激トーク・オン・ディマンド 第855回(2017年8月26日) 「異常気象を日常としないために」でお伝えしたように、東京や他の大都市では人為的な原因によるゲリラ豪雨が多発するようになっている。また、地球温暖化による台風の強大化も顕著になってきている。長期的には海面の上昇も避けられない。このまま水害対策を怠れば、時間の問題で東京が水没する大水害に見舞われることが避けられない。そしてそれは東京に限らず、大阪や名古屋など他の大都市にも共通した問題だと土屋氏は言う。

 東京は大水害への備えができているのか。東京が抱える水害リスクとは何なのか。このまま水害対策を怠れば、どんな帰結が待ち受けているのか。日本の大都市が抱える水害リスクについて、土屋氏とジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

 他、「北朝鮮ミサイル発射報道の足りないところ」、など。

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土屋 信行(つちや のぶゆき)
公益財団法人リバーフロント研究所技術参与
1950年埼玉県生まれ。75年日本大学卒業。同年、東京都庁入庁。区画整理部移転工事課長、道路建設部街路課長、江戸川区土木部長などを経て2011年退職。11年公益法人えどがわ環境財団理事長に就任。15年より現職。土木学会首都圏低平地災害防災検討会座長を兼務。著書に『首都水没』。
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(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)