ここから本文です

アユ釣り聖地で釣果不振、臆測飛び交う

9/16(土) 8:34配信

福井新聞ONLINE

 「アユ釣りのメッカ」として名高い九頭竜川中部漁協の管轄区域(福井県坂井市~永平寺町の市荒川大橋)で“異変”が起きている。1日30~50匹釣り上げるベテランでも1桁や釣果ゼロの日が珍しくない絶不調ぶりで、地元の太公望たちは「これまでで最悪の状況」と口をそろえる。天然アユの遡上(そじょう)数の大幅な減少が影響している可能性が高く、同漁協は近く、おとりアユ店の関係者を集めた意見交換会を開き、対策を協議する。

【画像】アユ釣りを楽しむ釣り人

 ■釣り客まばら

 五松橋、福松大橋、鳴鹿堰堤(えんてい)周辺などの好スポットで竿(さお)を傾ける太公望たちの姿は福井の夏の風物詩だが、今年は休日でも、その姿はまばらだ。6月10日の解禁から不振が続き、1万2千円の年間入漁券を購入した福井市の男性(69)は「いつもなら2桁は釣れるのに1匹も釣れない日があった。詐欺にあったようだ」と憤る。

 「特に県外の人は車の燃料代や高速代、宿泊費など全て無駄になってしまう」と話すのはアユ釣り歴40年の福井市の60代男性。「釣れない川にわざわざ人は来ない。客離れが進めば、釣具店や飲食店、宿泊施設の経営にも影響し、釣り場自体が衰退してしまう」と警鐘を鳴らす。

 今年の入漁券販売数は2年前の半分以下に落ち込む見込みで、中部漁協は「入漁券が売れなければ組合が成り立たない」と危機感を募らせる。

 ■放流数は3割増

 同漁協では不振の原因について、天然アユの遡上数が少なかったことを挙げる。シーズン開幕前は、昨年より3割以上多い約130万匹の稚魚を36カ所に分けて放流しているが、支流と交わりながら日本海に注ぎ、特に流域面積の広い九頭竜川中部区域は、放流数の何倍もの天然アユの遡上がなければ良い釣果は見込めないという。

 九頭竜川河口で遡上数を調べている県内水面総合センターによると、4月の最も多かった日の比較で2013年は290匹、15年は230匹だったのに対し、今年は39匹と激減。速報値の公表を始めた08年以降、最少を記録した。同区域の3カ所で実施した同漁協の由来判別調査でも、例年は天然アユの割合は約70%を占めるが、今年は15%(6~7月)にとどまった。

 一方、福井市の天池橋付近で県が調べた昨秋の稚魚の降下数は、例年よりも多く、海へ降下する段階では減っていないとみられる。県立大海洋生物資源学部の田原大輔准教授は「アユは1年のうち約半年を海で生活するため、この期間の影響は非常に大きい」と話す。何らかの要因で稚アユの餌となるプランクトンの量が少なかったり、イワシなど他の魚と餌を奪い合う状況が起きたりすると、遡上数は減る可能性がある。

 ■産卵場整備も

 不振が続く中、釣り客の間では、産卵のため下流に向かう落ちアユを狙う組合員の「威縄漁」を問題視する声もある。「川に重機を入れてまで仕掛けを設け、抱卵したアユを捕ることはどうなのか」と疑問を呈する。こうした意見は以前から寄せられており、同漁協は県から12カ所で威縄漁の許可を取っているが、今季は8カ所にとどめる。また遡上数を増やすため、威縄漁の設置場所のうち毎年数カ所で、卵の人工ふ化の取り組みを並行して進めている。

 釣り客や河川関係者の間では他にも不振の原因について▽降雪、降雨量の減少による春の水量不足▽森田地区の護岸工事、北陸新幹線の架橋工事の影響、工事の振動や作業音を避け他の川に上った▽同漁協の放流アユは海産系中心で、縄張り意識が強く友釣りに適した湖産系が少ない-など、さまざまな臆測が飛び交っている。

 毎年8月に開催しているアユ釣り大会の会場を九頭竜川から足羽川に変更した県釣り連盟の理事は「アユが釣れる川に戻すことは自然環境保護、観光活性化の両面においてプラスになる」と聖地復活に期待する。同漁協は「九頭竜川ブランドを信じて入漁券を購入してくれた方々の期待を裏切らないようにしたい」と、産卵場の整備にも取り組む方針。

福井新聞社