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芥川賞選考に広がる波紋「日本人には関係がない」…? 台湾生まれ、東京育ちの作家が小説に込めた思い

9/16(土) 11:27配信

BuzzFeed Japan

芥川賞選考で、宮本輝さんが「日本人の読み手にとっては対岸の火事」「他人事を延々と読まされて退屈」と評した温又柔さんの『真ん中の子どもたち』。この小説は「日本人」にはわからないものなのか?作家が込めたメッセージを聞いた。【石戸諭 / BuzzFeed Japan】

温さんの両親は「台湾人」、温さん自身も台湾籍で、3歳の時、父の仕事の関係で日本に移り住んだ。だから台湾生まれの東京育ち、作品を綴る言語は日本語--。

宮本輝さんの選評に温さんは怒っていた。

ツイッターでは「さすがに怒りが湧いた。こんなの日本も日本語も、自分=日本人たちだけのものと信じて疑わないからこその反応だよね」と書いた。

しかし、このツイートは芥川賞選考委員の選評に噛み付いた若手作家、という構図で消費され、作品や選評そのものよりも、彼女の言動に賛否が寄せられることになってしまった。

「私は芥川賞ノミネートの時点で満足していました」

《ちゃんと言っておきたいのは、私は芥川賞を受賞できなかったから怒ったのではないということです。

落選という結果自体には納得しています。白状すると、私はノミネートの時点で十分満足していました。候補作に選ばれたら、選考委員をつとめている作家の方々に、自分の作品が確実に読まれるのですから。

しかも彼らは選評をとおして私たちの作品に応答してくれる。これはすごいことでしょう。

私は受賞しなかったものの、最前線で活躍なさる作家たちが自分の作品に寄せてくださる言葉をとても楽しみにしていました。

たとえ、どんなに厳しいことが書いてあったとしても、もっとよい小説を書くためにもしっかり受けとめるぞと思っていたのです。

なので「日本人の読み手にとっては対岸の火事」という言い方は本当にショックでした。

退屈なら退屈でいいんです。文学の読み方は自由だし、感じ方は人それぞれですから。

ですが、この選評からは、私の作品がどう退屈だったのかがまったく伝わってこない。ただ、“日本人の読み手”には“他人事”とだけあるだけなんです。

もしも私が日本に生まれて日本国籍を持った日本人であったのなら、こんな言い方はされなかったはずです。

作品を批評する以前に、日本人ではないという理由で、私という書き手やその作品を日本文学として受け入れていない。そんな選評だったので、すごく寂しく悲しくなりました。

悲しみはやがて怒りになって……。あのツイートになりました。

でも、私がやりたいのは、もっといい小説を書くこと。あとは小説を読んでもらって、考えてもらえればいいと思っています。》

もう、この騒動は終わりなのだ、と晴れ晴れとした表情で語る温さんがいた。大事なのは、やはり小説そのものである、と。

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最終更新:9/16(土) 11:57
BuzzFeed Japan