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<熊谷6人殺害>妻と娘2人失った男性が会見 事件から2年、裁判始まらず「真実が聴きたい」

9/16(土) 23:11配信

埼玉新聞

 埼玉県熊谷市で2015年9月、小学生姉妹を含む6人が殺害された事件から2年。妻の加藤美和子さん(41)、長女美咲さん(10)、次女春花さん(7)=年齢はいずれも当時=の家族3人を奪われた男性(44)が16日、同市内で記者会見し、「家族を失った悲しみから、なかなか立ち直れない」と打ち明けつつ、「少しずつ自分のことをしっかりやっていかなくてはいけないと思うようになった。ここ数カ月、気持ちが前に進んできているのを感じている」と心境の変化を語った。

 この日は3人の命日。午前中に市内の寺で親族ら約10人と三回忌の法要を済ませた。「3人仲良く私のことを見守ってくれているのかな」。改めて冥福を祈り、天国にいる家族に思いをはせた。それでも「この2年間、時間の感覚がない。私の中で時間が動いているように感じない」と悲しみだけは変わらない。

 事件が起きなければ、長女美咲さんは今春、市内の小学校を卒業して中学生になり、成長した姿を見られるはずだった。3月には娘が当時通っていた小学校の卒業式に出席。学校に要望して卒業証書をもらった。「形として残したかった。中学生になった長女を想像することがある。親として見たかったのが本音」。同級生の姿を見て「うちの娘がいない」とつらい気持ちにもなった。

 ただ、男性は「前に進まないといけない」と懸命に気持ちを立て直そうとしている。事件以来、ショックで時々しか帰れなかった自宅に、8月末から戻って住むようになった。家族4人で寝ていた部屋で横になり、今も寝付けないことはあるが、「家族のために生きていかないと」と自分の生活と向き合っている。特別休暇扱いになっている仕事場にも月に数回、顔を出し始めた。「まだ行っている感覚がないが、近々ちゃんと復帰したい」と見据えている。

 事件の後から趣味の自転車で知り合った人たちと接する中で、気持ちの変化が生まれた。「支えてくれる人が何人かいて、話を聞いてくれて、だんだんと自分の考え方が動いてきた。この1年半で徐々に仲間が増えた。自転車に乗ることが今一番楽しさを感じる」。以前は一人で走っていたが、今では一緒に走る仲間がいる。7月には市内のレースに出場。月に3、4回ペダルをこいでいる。

 一方、事件から2年が経過しても、強盗殺人罪などで起訴されたペルー人のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告(32)の裁判は始まらない。「なぜここまで延びたのか」。不満を抱えながらも「じっくり待つしかない」と自分に言い聞かせる。検察からは来年初頭に初公判が開かれる見込みと聞いているという。

 今月、ナカダ被告の精神鑑定で精神疾患があると診断されたという報道があった。刑事責任能力が問われることになるが、男性は「私がそれを言っても仕方ない。裁判官にお任せして結果を待つしかない」と冷静に受け止める。

 事件を捜査した県警に対しても、いまだにやりきれない思いを抱える。犯行前に住居侵入を繰り返したナカダ被告の情報が周知されず、被害が拡大したと考えるからだ。今月には群馬県内で逮捕直前に逃走したベトナム人男の身柄が、熊谷市内で確保された。今回は県内でも無線情報などが流れたが、「なぜ私の時から周知しなかったのか疑問、怒りがある」とぶつける。

 公判が開かれれば傍聴すると決めている。「なぜ家族3人の命が奪われないといけなかったのか、真実が聞きたい」。生活を再建しながら、事件の真相解明へ、止まった時が動きだすことを願っている。

■熊谷6人殺害事件

 2015年9月14~16日、熊谷市の住宅3軒で田崎稔さん(55)と妻美佐枝さん(53)、白石和代さん(84)、加藤美和子さん(41)と長女の小学5年美咲さん(10)、次女の同2年春花さん(7)の計6人(年齢はいずれも当時)が相次いで殺害された。

 ペルー国籍のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告(32)=強盗殺人などの罪で起訴=は逮捕後、一連の事件を否認。

 公判では刑事責任能力の有無や程度が主な争点になるとみられる。事件を巡っては近隣住民への注意喚起が十分に行われず、市民から批判が相次いだ。事件を契機に警察、行政、住民の3者連携による情報発信の枠組み「熊谷モデル」が構築された。

最終更新:9/17(日) 0:55
埼玉新聞