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<日朝平壌宣言15年>飯島勲氏「融和の精神必要」拉致解決

9/17(日) 8:30配信

毎日新聞

 ◇当時の小泉首相の首相秘書官 展望を聞く

 小泉純一郎首相(当時)が北朝鮮を訪問し、金正日(キム・ジョンイル)総書記(故人)と会談し、日朝平壌宣言に署名してから17日で15年となる。2002年9月17日の日朝平壌宣言に署名した小泉首相の首相秘書官(政務担当)だった飯島勲内閣官房参与に、合意に至った背景や日本人拉致問題解決に向けた展望を聞いた。



 --小泉元首相が初訪朝する前はどんな雰囲気だったのでしょうか。

 ◆拉致問題の解決は小泉内閣の重要な課題だった。北朝鮮への経済支援は一切絡めずに拉致問題を解決し、平和交渉をスタートするというのが前提だった。訪朝が実現するまでの交渉は容易ではなかった。北朝鮮の本気度を測るため、同行する報道機関を無条件で受け入れるよう求めたり、現地での記者の電話使用を認めることなどを要求したりして真意を探った。訪朝の数日前、ある民間人を通じ、極秘に「全面的に受け入れる」と回答があった。北朝鮮側が拉致問題について謝罪することや安否情報を提供することも伝えてきた。実際の日朝首脳会談で想定外だったのは、こちらの安否情報にはなかった曽我ひとみさんを拉致していたことを金総書記が明かしたことだった。

 --15年経過しても拉致問題は解決していません。

 ◆問題解決がこんなに長引くとは思っていなかった。残念だ。金総書記まで内容が上がる外交交渉の態勢が整っていなかった。日本の外務省が北朝鮮と協議していると報道機関にリークすることもあった。韓国にいる脱北者が拉致被害者の安否情報を流すこともあった。交渉が動いているかのようにみえるパフォーマンスが続いてしまった。

 --13年には自身も訪朝していますが、どういう目的だったのでしょうか。

 ◆個人として平壌を訪問し、北朝鮮ナンバー2だった金永南最高人民会議常任委員長らと会った。「安倍内閣の拉致問題に対するスタンスは小泉内閣と全く同じだ」と伝え、拉致被害者の一日も早い帰国や拉致実行犯の引き渡しなどを求めた。北朝鮮との交渉では、トップレベルの政治家と直接交渉しないと駄目だと考えた。真剣に日本との協議をやりたいという北朝鮮側の雰囲気は感じた。曽我ひとみさんのように知られていない拉致被害者がまだ北朝鮮にいる可能性もあると思っている。

 --北朝鮮の核・ミサイル開発を巡り緊張状態が続いています。こうした中で、拉致問題の解決はあり得るのでしょうか。

 ◆実は、北朝鮮と国交を結ぶ国は増えている。希少金属など資源が豊富だからだ。その一方で、米朝はお互いに疑心暗鬼になり、チキンレースになっている。だが、裏では、それなりの接触を持とうとしていると聞いている。今月のニューヨークでの国連総会後には、何か動きが出てくるのではないか。年内には北朝鮮の核を巡る米朝の対話のシナリオも表面化してくるかもしれない。

 --日本はどう行動すればよいと考えますか。

 ◆仮に米朝交渉が始まって着地する際に、「拉致問題の解決」を必ず条件とするよう、米政府に働きかけることが必要だ。拉致問題が進展しないで、安倍晋三首相が北朝鮮との平和条約交渉を進めることは100%あり得ない。だが、首相も徹底的な圧力の必要性を発信する一方で、水面下では対話も模索するだろう。首相が訪朝して交渉するよう求める声が出ているが、それが実現するとしたらずっと先の話だ。まずは、状態をきちんと精査しないといけない。

 --日朝間の問題を解決するカギは何ですか。

 ◆朝鮮総連や在日朝鮮人をたたけば拉致問題が解決すると考えるのはおかしい。融和の精神が必要だ。在日朝鮮人も含めて「拉致問題が一日も早く解決してほしい」というムードを作ることが必要だ。私は、米朝と合わせるように、拉致問題も年内に何らかの道筋が見えてくるのではないかと考えている。15年経過し、拉致被害者家族も長い苦しみの中にある。状況に応じ、私も他の国を通じて解決に向けて極秘に動いている。【聞き手・松倉佑輔、竹内望】

最終更新:9/17(日) 8:30
毎日新聞