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北ミサイル 正恩氏、慣例破り核一色 「人民を飢えさせない」初心どこへ

9/17(日) 7:55配信

産経新聞

 北朝鮮の建国69年に当たる9日、平壌で金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長ら朝鮮労働党や国家幹部出席の下、祝賀行事が開かれた。だが、金正恩(ジョンウン)党委員長の姿は、そこには見られなかった。北朝鮮メディアの報道を総合すると、3日の「水爆実験の成功」を祝う別会場のパーティーに李雪主(リ・ソルジュ)夫人とともに足を運んでいたのだ。

 ◆追いやられた記念日

 これに合わせ、核・ミサイル実験に携わる科学者や技術者多数を特別に招いた祝賀公演まで開催。金委員長が満面の笑みで、李弘燮(ホンソプ)・核兵器研究所長と腕を組んで歩く場面も報じられた。党機関紙、労働新聞は翌朝、パーティーや公演のもようを伝えるのに1~4面を割き、建国記念行事は5面に追いやられた。

 建国記念日に合わせた恒例の中央報告大会も開催が見送られた。慣例を無視してまで米本土に到達する大陸間弾道ミサイル(ICBM)開発に傾注する姿勢を見せつけた形だ。

 パーティーで、金委員長はこう強調した。「水爆の爆音は艱苦(かんく)の歳月を、ベルトを引き締めながら、血の代償で成し遂げた朝鮮人民の偉大なる勝利だ」

 ベルトを締めるとは空腹に耐えるという意味だ。金委員長は2012年4月、党トップ就任後初の演説で「人民が二度とベルトを締めつけないようにする」と国民が飢えないよう経済を改善させる決意を語っていた。結局、核開発のため、国民に犠牲を強いてきたと自ら認めたことになる。

 ◆ICBM完成を優先

 15日の中距離弾道ミサイル「火星12」の発射視察では、「何十年間も続いた国連制裁の中、あらゆるものを成し遂げた」と強調。「核戦力完成の終着点にほぼ近づいたからには、国の全ての力を尽くして完成を見届けるべきだ」と主張した。

 金委員長は、核開発と経済建設を同時に進める「並進路線」を掲げてきた。その柱の一つを棚上げにし、制裁で経済が逼迫(ひっぱく)しようと、ICBM完成を優先させると宣言したに等しい。

 北朝鮮は今年だけで16回、計22発のミサイル発射を繰り返した。韓国紙、朝鮮日報は、費やした資金は約4億ドル(約440億円)に上るとの推計を示した。一方、繊維製品の輸出も禁じた国連制裁決議が履行されれば、北朝鮮は、年間約30億ドルの輸出総額の9割以上を失うことになる。

 今回、対北石油輸出も現状維持ながら初めて制限対象に盛り込まれた。だが、米研究機関は、中国からの石油供給が絞られても、北朝鮮は、民間用の石油消費を40%まで減らすなどし、核・ミサイル開発への当面の影響はほとんどないとの見通しを示している。

 金委員長は「無制限の制裁封鎖の中でも国家核戦力完成をいかに達成するかを(国際社会に)はっきり見せつけるべきだ」とも語った。ICBMをトランプ米政権ののど元に突きつけるため、国民生活の犠牲もいとわない“背水の陣”を敷いた金委員長。その暴走を阻止するため、日本を含む国際社会は、制裁だけではない別の選択肢を早急に検討する必要に迫られている。(ソウル 桜井紀雄)

最終更新:9/17(日) 7:55
産経新聞