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黒人だからって「ウィル・アイ・アム」に似ていると言わないで!

9/17(日) 10:00配信

The Telegraph

【記者:Jemal Polson】
 今年7月、英南西部バース(Bath)で知人の素敵な結婚式に参列した後、私は友人らと街の中心部を散策することにした。そこまでは良かった。あるバーレストランの喫煙エリアで酔っぱらっていた女性客らの前を通り過ぎた際、そのうちの一人が私の方に向かって「ウィル・アイ・アム(will.i.am)!」と叫ぶまでは──。

 ウィル・アイ・アム? 私はたちまち、一抹の悔しさと困惑を同時に覚えた。ウィル・アイ・アムになんて、ちっとも似ていないのに。

 米ヒップホップグループ「ブラック・アイド・ピーズ(The Black Eyed Peas)」のウィル・アイ・アムに似ていると言われたのは、わずか1か月余りでこれが3回目だった。恥ずかしいか? もちろん恥ずかしい。だがこれは珍しいことではない。悲しいことだが、黒人の私は白人から、ほとんどまたは全然似ていない他の黒人に似ていると言われることにすっかり慣れてしまった。

 ここ何年かずっと、英ラッパーのタイニー・テンパー(Tinie Tempah)や米ヒップホップ歌手ウィズ・カリファ(Wiz Khalifa)に似ていると言われ続けてきた。黒人で眼鏡姿の写真が出回った人物なら、それが誰だってうり二つというわけだ。

 しかも私だけに限った話ではない。知り合いの黒人、アジア人は皆、自分では全く似ていないと思う誰かと間違えられるか、その誰かに似ていると言われたことが一度や二度は必ずある。

 どうして人種的少数派には、同じことがここまで頻発するのだろう? その答えは、いわゆる「他人種効果」にあるのかもしれない。他人種効果とは、異人種よりも自人種の人の顔の方が認識しやすいといった認知的なバイアスの傾向だ。

 実験心理学者のリサ・ドブリュイン(Lisa DeBruine)博士によると、「人は自分が目にするあらゆる顔を基に、脳内に平均値をインプットする。その平均値との比較によって、他人の顔を記憶する」のが普通だが、「所変わってある人種集団との接触が増えれば、脳内の平均値が影響を受け、個々人の顔の識別力が上がる」のだという。

 確かに筋は通っているし、理論上は何ら問題ない。ただ私が懸念するのは、現実的にはこの概念が、人種差別を正当化する言い訳に利用されかねないという点だ。

 大事なのは、この効果を楽に解消する手だてがあると認識しておくことだ。ドブリュイン博士も言及しているように、手始めに異文化交流をすれば良い。だがもっと簡単な方法があると私は思う。それは路上で誰かに大声で呼び掛けようとする前に、目をしっかり見開いて相手の顔をちゃんと見つめること。私なら金髪の女性のそばを通り過ぎる際に、反射的に「(米人気歌手の)テイラー・スウィフト(Taylor Swift)」だと思うことも、ましてや大声でそう叫ぶこともない。

 私のことを知らない人なら、社会的に成功を収めたカリスマ性のある大富豪に似ているねと言っておけば私が喜ぶと思うのかもしれない。だが詰まるところ、そうした状況で恥ずかしい思いをするのは私よりもむしろ相手の方だ。私を「ウィル・アイ・アム」や「タイニー・テンパー」と呼ぶことで、結果的に「自分には黒人の見分けがつかない」と公言しているのだから。それは人種差別主義者の振る舞いのようだと、私には思えてしまう。【翻訳編集】AFPBB News

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最終更新:9/17(日) 10:00
The Telegraph