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平均35km/hの特急!? 山峡を優雅に走るスイス「氷河特急」8時間の旅

9/17(日) 11:12配信

乗りものニュース

1930年に運行を開始した「氷河特急」

【本記事は、旅行読売出版社の協力を得て、『旅行読売』2016年10月号に掲載された記事「氷河期の遺産を駆けるスイス氷河特急」を再構成したものです】

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 1930年、「氷河特急」はツェルマット~サン・モリッツ間で運行を始め、87年の月日が流れるも、いまだ旅人を魅了し続けている。全長約290kmを約8時間かけ、291の橋、91のトンネルを通りながらスイスを横断する。

 平均速度は約35km/h。1等、2等車両ともにパノラマ車両が導入され、山峡の眺めを間近に体感できるのがポイントだ。世界文化遺産エリアも走り、見る者はその景観の美しさに心を奪われるという。

 そんな一人になりたい……。はやる気持ちを抑えながら、「氷河特急」の起点となる村、ツェルマットへ入った。4000m級の山々に囲まれ、名峰マッターホルンを望む観光地だ。

ガソリン車は入村禁止 山小屋並ぶ麓の村を歩く

「氷河特急」へ乗車する前日。早起きをして、4000m級の山々を見渡せるゴルナーグラート展望台行きの登山電車に乗った。

 駅に到着して展望台へ向かうと、そこは360度の大パノラマ。凛とした姿のマッターホルンがひと際目立つ早朝ながら既に観光客であふれていた。日に輝く氷河はまぶしく、登山電車に揺られ30分ほどでアクセスできるとは思えない別天地である。

 下山後、メーンストリート「バーンホフ通り」を歩いてみた。山小屋が立ち並び、土産やスポーツ用品を売る店、レストランなどもあってにぎやかだ。環境保護からガソリン車の乗り入れは禁止され、代わりに電気自動車や馬車が走っている。ネズミ返しのある古い穀物倉庫が並ぶ一角も、風情がある。この村でのんびり滞在するのもいいなぁと思った。

「氷河特急」の名物は傾いたワイングラス!?

 翌朝、ツェルマット駅に行くと、真っ赤な車両が印象的な「氷河特急」がホームで迎えてくれた。1等車両は3列シートで、座席にイヤホンが備えられ、ルート案内や沿線情報を日本語で聞けるのがありがたい。

 8時52分に出発した列車は、マッターフィスパ川に沿って進む。山岳地帯を走り、やがて牛や羊が草を食む牧草地へ。山小屋や何げなく咲いている草花はどれも絵になり、写真におさめたくなる。

 車内販売で、「氷河特急」名物のワイングラスを買った。傾斜のある鉄路ゆえ、傾いた作りになっている。ランチタイムには、予約していた料理が席まで運ばれてきた。列車は峡谷に沿って蛇行を繰り返し、少しずつ標高を上げる。ふと窓を見ると、湖がすぐ前に広がっていた。標高2033mのオーバーアルプ峠まで来たようだ。

 ディゼンティス駅で停車すると、何人かの乗客が降りていった。15分停車するというので、私も後を追う。列車前方に人が集まっていて、よく見ると先頭車両がない。車掌さんに聞くと、「これから別の機関車を連結するんだよ」とのこと。作業は数分で終了し、急いで自分の車両へ戻った。

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