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芸の道示す名演 金沢おどり、愛好者うならせる

9/17(日) 0:52配信

北國新聞社

 16日に金沢市の石川県立音楽堂で2日目を迎えた第14回金沢おどり(同実行委員会、一般財団法人石川県芸術文化協会、北國新聞社主催)では、名妓(めいぎ)による風格の一景が、目の肥えた愛好者をうならせている。舞台に立つだけで空気を一瞬にして変える存在感は、ひた向きに芸を磨いてきた道のりと、新たな挑戦にもひるまぬ心意気を示した。

 あでやかな舞踊絵巻が、小鼓(こつづみ)の乃莉(のり)さんと立方(たちかた)の八(や)重治(えはる)さんの登場でぴんと張り詰める。一調一舞(いっちょういちぶ)は、名妓2人による新たな試みとして、この金沢おどりで誕生し、3年目を迎えた。演目は「三番叟(さんばそう)」。6月に金沢を訪問された皇太子さまの前でも披露した。

 乃莉さんは厳かに、気迫を込めて鼓を打ち、八重治さんは鈴を振りながら荘重に舞う。研ぎ澄まされた6分弱の舞台に、観客は息をのんだ。

 三番叟は五穀豊穣(ごこくほうじょう)をことほぐ、格調の高い一番である。「全身に力を込めて、一瞬も気が抜けん。怖いわ」。全国の花街(かがい)きっての名手、八重治さんにとっても一番一番が真剣勝負なのだ。にし茶屋街の女将でもある乃莉さんと八重治さん、互いの芸を知り尽くした信頼関係が、一調一舞を無二の芸へと高めてきた。

 一調一舞と交互に上演される「加賀の千代」は、主計(かずえ)町(まち)のたか子さんが、江戸中期に名をはせた俳人・加賀の千代女をしっとりと舞い、観客を引き込んだ。

 金沢おどりでは、初めて一人で立つ舞台。大入りの観客の視線を一身に浴びての舞となる。東京で八世宗家の藤間勘十郎さんに振りを学び「素晴らしい曲と振りをいただいた」と懸命に稽古を重ねてきた。

 指をさし、かなたを見つめる。仏門に入るまでの俳人としての姿を描いた舞台は、まるで千代女が乗り移ったよう。「強烈な気持ちを持った方なのでしょう」と千代女に思いをはせるたか子さんの、魂が共鳴した舞が観客の心に迫った。

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最終更新:9/17(日) 0:52
北國新聞社