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グローバル時代のロボットコンテスト、白熱の「WRO Japan2017」決勝大会に密着

9/21(木) 12:50配信

リセマム

 グローバリズムが加速する世の中で、次代を担う子どもたちに習得してほしいのが「英語」と「プログラミング」技術だといわれている。たくさんの異なる文化を互いに容認したうえで、解決しなければならない課題も複雑になっていく昨今。求められるのは、異なる言語・文化の人々と闊達に語り合えるコミュニケーション力と、課題を粘り強くフレキシブルに解決する力だろう。その意味でも、英語はもちろん、論理力を養うプログラミング、情報処理技術は必要な能力に違いない。

ミドル競技に真剣に挑戦!大会のようすや受賞者(写真34枚)

<WRO Japan2017 受賞者:写真25枚(順不同)>

◆グローバル時代のロボットコンテスト「WRO」

 9月17日、東京・有明のBumB東京スポーツ文化館で、自律型ロボットのコンテスト「WRO Japan2017」決勝大会が開催された。参加したのは、7月から8月にかけて行われた全国37地区予選を勝ち抜いてきた121チーム。決勝大会の優秀チームは、南米コスタリカで行われる国際大会への出場権を得る。また、レギュラーカテゴリーでの英語プレゼンテーションは不要だが、審査員からの質疑応答に簡単な受け応えができるよう、簡単な英語力が必要とされる、まさにグローバルな大会だ。」

 WROとは「World Robot Olympiad」の略で、世界の子どもたちと競い合うロボットコンテスト。ロボットを作り、それをプログラムで自動制御する技術を競う。日本国内だけでなく、海外の子どもたちとも競い合える、世界規模の大会だ。2004年のシンガポール大会から始まり、今回の開催で14回目となる。日本も、産学の有志によるWRO Japan実行委員会が組織され、世界的な技術者を育てようと、科学技術振興財団(科学技術館)の協力を得て、第1回大会から参加している。

 決勝大会開幕に際し、WRO Japan実行委員長の渡辺登氏は今後、世界で求められる人材について述べた。渡辺氏は、米デューク大学のキャシー・デビッドソン教授による「米国で2011年度に入学した小学生の65%は、大学卒業時、今は存在していない職に就く」という予測と、米オックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授による「今後10年~20年で47%の仕事が機械に取って代わられる」との予想を引用。まさに、ロボットやAI(人工知能)の登場により、世界は大きく変わろうとしているのが現状である。

 渡辺氏は、こうした変化のなかで「ロボットを作る」ということは、これからの人材の基本技術になり、ロボット製作はSTEM(Sience:科学、Technology:技術、Engineering:工学、Mathematics:数学)分野に通じ、21世紀に必要なスキルを養うことにつながると説いた。

◆初めてでも果敢に挑戦、初学者たちのレギュラーカテゴリーの「ミドル競技」

 競技内容には、レギュラーカテゴリーとオープンカテゴリーがあり、それぞれ小学生部門、中学生部門、高校生部門に分かれている。

 レギュラーカテゴリーは、設定されているコースの課題をクリアしていく、自律型ロボットによる競技。エキスパート競技と、そこへつなぐ位置づけのミドル競技がある。

 ミドル競技は、ロボットを作るために大事なライントレースや色の判断、つかむ機能といった基本技術を取り入れ、ロボット製作の初心者を対象とした競技。小学生、中学生、高校生が同じフィールドで、ロボット製作とプログラム制御に挑戦できる場だ。ロボット製作など考えたことがないという小中高校生も、ぜひ次大会に向けて、世界大会への第1歩を踏み出してみてはいかがだろうか。

【レギュラーカテゴリー:ミドル競技優勝チーム】
 小学生部門:アミークスR2.S(沖縄アミークスインターナショナル小学校)
 中学生部門:つばた(豊中市立第八中学校・箕面市立第六中学校)
 高校生部門:Blue Mountain Bridge(茨城県立土浦工業高等学校)

◆白熱のレギュラーカテゴリー・エキスパート競技

 エキスパート競技は、レギュラーカテゴリー競技のうち、決められた競技コースを使用して、与えられたミッションをいかに早く、正確にこなすかを競う。今回は台風18号の影響で競技時間が短縮され、ロボットは競技前にあらかじめ組み立てての挑戦となったが、通常は大会当日にロボットを組み立てる。さらに当日に発表されるルールの追加変更“サプライズルール”もクリアしなくてはならないという、「エキスパート」のための競技だ。また、あらかじめプレゼンシートを提出し、そのシートに基づいたプレゼンテーションも行う。活動や開発プロセスも評価対象になるのだ。

 「私たちの学校は文武両道で、全員部活に入っています。大会前は、先生に頼んで毎日部活をさせてもらいました」「大きすぎたので、なるべくプログラミングは変えずにマシンを小さくするように改良しました」など、プレゼンからは、生徒たちの頑張りが伝わってきた。

プレゼンでは、地元宮崎のキャラクターも笑顔で紹介していた「IZUMI・MIYAZAKI」
 エキスパート競技では各部門ごとに課題が設定される。小学生部門の課題は「大切な動物たちを守れ!」。中学生部門は「Carbon Neutrality」。高校生部門は「Renewable and Clean Energy」。ロボットが課題をクリアするたびにガッツポーズをする子もいれば、淡々とロボットを見つめる子、祈る子など、子どもたちの反応はさまざま。応援する保護者や指導者たちの思いもあふれ、会場は熱気に包まれていた。もちろん、うまくいく場合だけではない。最初の課題でつまづき、ロボットをリリースして帰る子もいる。その悔しさが国際大会につながることもあるだろう。

 受賞したのは9チーム。いずれも11月にコスタリカで行われるWROコスタリカ国際大会へ派遣される。また、審査員特別賞を受賞した高校生部門の「しおこしょう」(横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校)も、コスタリカ行きの切符を手にしている。

 なお、決勝大会に先立ち、8月25日に行われた大学生・高専・専門学校・職業能力開発短期大学校生対象の「アドバンスド・ロボティクス・チャレンジ」では、帝京大学の「帝京ロボラボ」が1位となり、コスタリカ行きを決めている。

【レギュラーカテゴリー:エキスパート競技受賞チーム】
 小学生部門:
 優勝 ウルトラS(静岡大学附属浜松小学校)
 準優勝 Space hero(立命館小学校)
 3位 サンダーバード1号(氷見市立十二町小学校・富山市立鵜坂小学校 砺波市砺波南部小学校)
 中学生部門:
 優勝 ロボターズ3(新発田市立猿橋中学校)
 準優勝 Color Creators(洛星中学、立命館中学)
 3位 IZUMI・MIYAZAKI(都城泉ヶ丘高等学校附属中学校)
 高校生部門:
 優勝 KKT+α(山梨県立甲府工業高等学校)
 準優勝 YTHS E.boys(愛媛県立八幡浜工業高等学校)
 3位 Team Axis(富山高等専門学校)

◆アイデアがほとばしるオープンカテゴリー競技

 オープンカテゴリーは、与えられたミッションを反映したロボットを作成・展示して、プレゼンテーションを行う競技。昨年(2016年)を上回る参加者があったという。2017年の今大会ミッションは、「サスティナビリティ(持続可能性)のためのロボットを作成せよ」。ビデオによる事前審査で選抜された14チームが会場内にブースを設置し、プレゼンを行った。

 緯度と経度によって太陽光を集め、炊飯などの利用を目指すロボット、缶やペットボトルを仕分けるロボット、使用済みの紙を仕分けてほうきにするロボット、森林活用促進のため間引き作業など自動で行うロボットなど、さまざまなアイデアにあふれたロボットたちが集まった。

 プレゼンは、チームの仲間とうまくコミュニケーションをとりながら、段取りよく進めなくてはいけないだけに、参加者はみな緊張気味。とはいえ、過去に参加した先輩たちのプレゼンを参考に小型マイクを持ち込んだチーム、3人そろって掛け合いをするチームなど、いかに多くの人に見てもらい、知ってもらうかを工夫するチームが多かった。

 最優秀賞に選ばれた追手門学院大学前中学校チームによる「Otemon Quest」は、聴覚障害者に向け、音声を手話で伝えるロボットを作成。プレゼンも元気よく行い、多くの聴衆を集めていた。受賞3チームは、レギュラーカテゴリーの受賞チーム同様に、WROコスタリカ国際大会への派遣が決定されている。なお、2014年のロシア・ソチで行われた国際大会のオープンカテゴリー中学生部門では、奈良教育大学附属中学校が優勝し、オープンカテゴリー初の金メダルを受賞している。世界を恐れず、頑張ってほしい。

【オープンカテゴリー受賞チーム】
 最優秀:Otemon Quest(追手門学院大学前中学校)
 優秀賞:
 福岡県立香椎工業高等学校作品製作部(福岡県立香椎工業高等学校)
 FrozenBlizzard(世田谷区立中丸小学校 横浜国立大学教育学部附属横浜小学校)

◆みんなの熱い思いが作る大会

 愛媛県の河原電子ビジネス専門学校教員で、WROの実行委員会事務局を担当する佐伯淳氏は、WROの特徴を「参加選手に負担が少なく、多くの学習的メリットがある教育的なロボット大会」と表現。参加ロボット条件は原則、教育用レゴ マインドストームEV3またはNXT、RCXの使用が求められており、シンプルだが、プロでは考えられないほど厳しい制限のあるロボットで競技することになる。同氏は、改造費用に何百万円などといった大金をかけることなく、選手の知力、体力、発想力、論理的な思考こそが勝敗を分けると説明してくれた。また、当日発表されるサプライズルールへの対応は子どもたちだけで考えることになるため、指導者の代理戦争にはなり得ない点も大会の魅力のひとつだ。

話し合いながら、真剣にジャッジ
 参加者だけでなく、今回の大会では学生スタッフの姿も目立った。マイクとカメラを持ち、熱戦を撮影している姿は印象的。彼らがいるからこそ、スムーズに運営できるのだろう。さらに、学生スタッフだけでなく、佐伯氏のような指導者や教員も大会スタッフとして活躍している。WRO大会は、教育者・指導者の交流の場でもあるようだ。なお、WROは定期的に指導者向けワークショップを行っているという。

 さまざまな参加者が一堂に会した熱い決勝大会。挑戦した子どものなかには、ものの数秒でロボットが予想外の動きをしてしまい、世界大会がはるか遠くに思えた者もいたかもしれない。しかし、「来年こそ優勝するぞ」との思いでまた挑戦してみてほしい。こうした挑戦をとおして、課題をひとつひとつ粘り強く解決していく…。そうした気持ちや知識、技術を習得し、子どもたちは未来を拓く力を身に付けていくのだと実感した大会だった。応援しています!

《リセマム 渡邊淳子》

最終更新:9/26(火) 15:17
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