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上原ひろみ「まだまだ」一音の出し方にも様々な可能性を求める、ピアノへのこだわり

9/23(土) 11:30配信

MusicVoice

 ジャズピアニストの上原ひろみが20日に、新プロジェクトのライブアルバム『上原ひろみ×エドマール・カスタネーダ「ライヴ・イン・モントリオール」』をリリースした。

 南米コロンビア出身で現在米・ニューヨークを拠点に活躍中の気鋭のジャズ・ハープ奏者のエドマール・カスタネーダとのデュオ作品。昨年開催されたカナダの『モントリオール・ジャズ・フェスティヴァル』に両者がそれぞれ出演した際に交流がスタートし、今年の6月に早くもモントリオールで共演。今作はその時の模様を収録。

 ピアノとハープは構造が似ていることから相性は良くないとされているが、上原は初めてエドマールと合わせた時から、そんなことは感じなかったという。今作に収録されたハープとの共演を念頭に置き書き下ろした楽曲について、上原は「作曲は植物を育てていくような感じ」と話す。

 昨年リリースした、アルバム『SPARK』が全米ビルボードのTraditional Jazz Albums部門で1位、またジャズ総合でも1位になるほど、世界的に活躍している彼女。「素晴らしいピアニストというのは何色も音のパレットがあると思います」と自身の理想のピアニスト像を語る。

 彼女ならではのテクニックとエモーションの密接な関係性、他の楽器を演奏するという発想はないと語るピアノに対する情熱、音へのこだわりなど話を聞いた。

イメージを全て覆されるような感じ

――今回は、エドマール・カスタネーダさんとのデュオでおこなったライブが音源化されたということで。

 エドマールと出会ったときは、お互いに別のプロジェクトでモントリオールに行っていました。その1年後にこうやって、出会った場所で演奏したものが作品として残ることに興奮しましたし、気持ちが高まる中でのレコーディングでした。でも、とにかく平常心で、いつものライブという感じでステージに臨みました。

――リハーサルで最も気を付けていることはどのようなところでしょうか。

 毎回会場が違うということもあり、とにかく自分達が演奏しやすい音作りをすることが一番大事です。

――上原さんは演奏のタッチに対して、ピアノの調律を毎回指定されたりするのでしょうか?

 どれくらい、それに対応できる調律師さんかということにもよりますが、対応できる方であればあるほど、注文を細かくします。でも、重要視しているのはタッチというよりも音の響きですね。音が球体である、というか「ド」と弾いたときの音の膨らみです。調律によって音の膨らみが全然違ってきます。

――音の丸みというのがご自身の基準?

 そうですね。音がふくよかで膨らみがあるというのは重要です。

――エドマールさんのようなハープ演奏者と演奏するときも、音のイメージは変えないのでしょうか?

 そのイメージは変わらないですね。

――初めてエドマールさんのハープの音色を聴いたときは、どのような感覚でしたか?

 ハープってこんな楽器だったんだと。自分が今までぼんやり描いていたハープのイメージを全て覆されるような、初めての体験でした。

――上原さんはトリオで演奏されることもありますが、トリオとデュオでは、気持ち的にはどういった違いがあるのでしょうか?

 やっている音楽や曲も違いますし、何よりも人が違うので、相手が違うと引き出される自分も違います。それによって自分の表現方法も変わってきます。相手の人間性などではなく、ミュージシャンそのものですね。誰と演奏しているかということが重要なんです。

――ハープとピアノは相性が良くないとも聞きますが、そのことをわかっていた上での今回のコラボレーションだったのでしょうか?

 私はわかっていなかったですね。実は今でも相性があまり良くないということはわかっていなくて(笑)。エドマールがそういう風な定説があるということを話してくれて、ピアノとハープは構造が似ているので一緒に演奏するのは難しい楽器と捉えられているみたいですね。でも、一緒に演奏してみたら、結果そんなことは全然なかったね、と。

――私も演奏を聴いて「合わないって言われているんですよね?」という心境でした。今回の演奏でそういった定説を覆しましたね。

 彼のまわりのハープ業界の方々はみんな驚いていたようです。

――どの辺りにハープの音色の凄さを感じますか?

 エドマールという人の持つ強さや素晴らしさは、あの楽器からあれだけのグルーヴ、リズムを生み出して、一つの楽器がベースにもギターにもパーカッションにもなり、本当に多面体な楽器であるということを彼は証明しながら弾くので、そこが凄いなと思いました。

――エドマールさんが出す音に引き出されるように、新しいピアノの弾き方が出てきたりするのでしょうか?

 それは相手が変われば、自然に自分も変わりますし、変わらない部分だってもちろんあります。それが化学反応であって、お互いを感化して、お互いが変わっていく感じがします。

――今回の演奏で、ご自身で驚いたところはありますか?

 ここが、というよりも全体的に「エドマールと一緒に演奏している自分の演奏は自然体だな」と感じました。

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最終更新:9/23(土) 19:01
MusicVoice